企業が「内定」を出した就活生に対して、自社以外への就職活動を止めるように求める「終われハラスメント(おわハラ)」が話題になっている。
週刊誌「AERA」3月16日号によると、経団連の指針で、今年の就活のスケジュールが大幅に後ろ倒しになったことが影響しているという。経団連に加盟していない中小企業などが、早期に学生に内定を出し、指針を守ってスケジュールを遅らせている大手企業への就活をさせないように、就活生を拘束する動きがあるのだそうだ。
●「おわハラ」の3つのパターン
ネットメディア「NEWSポストセブン」に掲載された人材コンサルタント・常見陽平氏の話によると、「おわハラ」には大きく3つの類型があるという。
(1)「今、受けている企業を全部辞退すれば、この場で内定を出す」「この場で、受けている企業全部に辞退の連絡を入れなさい」などと、他社の内定の辞退を強要するパターン
(2)他社の選考に行かせないように、毎日のように面接の日程を入れるなどして妨害するパターン
(3)内定辞退をしようと連絡した人に対して、絶対に入社するように脅すパターン
今年の就活は「売り手市場」ということもあって、企業側も優秀な人材を確保しようと必死だ。しかし「おわハラ」は、法的に問題がないのだろうか。労働問題にくわしい笹山尚人弁護士に聞いた。
●採用内定の「辞退」は自由にできる
「就職活動は、憲法22条が保障する『職業選択の自由』から、自由に行うことができます。
採用内定は、法律的には労働契約が成立することを意味します。そして、採用内定を受けた場合でも、いつでも自由に内定を辞退することができます(民法627条)。
ですから、採用内定を受けた後でも、他社への就職活動も自由にできるのです」
笹山弁護士はこのように述べる。では、「おわハラ」は、やはり問題があるということだろうか。
「『他社の採用内定を辞退したらウチの採用内定を出す』と言われても、他社を辞退した後に採用内定が本当に出るのかどうか、何の保障もありません。
また実際に採用内定が出ても、内定取り消しのリスクがあることに変わりはありません。内定取り消しの違法性を争う際のハードルは高いのです。
こうしたことから考えると、企業が就職活動を制限することは許されません。
採用内定を出したからと言って、他社への就職活動を行うことを禁止することはできません。他社の採用内定を辞退するよう命じることもできません」
●これまで通り、就職活動を続けて構わない
実際に「おわハラ」を受けた就活生は、どう対処すればよいだろう。笹山弁護士は次のようにコメントした。
「『それはできません』と断って、なんの問題もありません。
ハッキリと断れない場合でも、『他社からの内定取得や就職活動を辞退せよ』という言葉に従う必要はありませんから、これまでどおりに就職活動を続けてもらってかまいません。
そもそも、『この場で他社に辞退の連絡をしたら採用内定を出す』と言うような会社は、まともな会社かどうか疑問があります。こちらからお断りしたほうがいいかもしれません」
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