ロンドン=渡辺志帆
2015年5月6日02時27分
7日に投開票される英国総選挙(下院定数650)に向けた世論調査で、保守と労働の2大政党の支持率が拮抗(きっこう)している。まだ投票先を決めていない有権者も1割おり、政権の行方は不透明な情勢だ。
主な争点は財政と経済対策で、保守党は過去5年間の財政黒字化の取り組み継続を、労働党は最低賃金の引き上げや税制改革による格差縮小を訴えている。
英世論調査YouGov社によると4日現在、保守、労働両党ともに支持率は33%で差がない。脱欧州連合を掲げる英国独立党(UKIP)が12%、自民党が10%、緑の党が5%などで、5年前の前回総選挙に続いて2大政党がどちらも単独では過半数議席に届かない「ハングパーラメント」(宙づり議会)になるとの観測が高まっている。選挙後の政権づくりでは、自民党を抜いて第3党に躍進することが確実視されるスコットランド民族党(SNP)など少数政党との駆け引きや協力が鍵を握ることになる。
■独立住民運動が契機
7日の英国総選挙で、複数の政党が、投票年齢を現行の18歳以上から16歳以上に引き下げることを公約に掲げている。スコットランドでは、昨秋の独立をめぐる住民投票で一足早く16歳以上に選挙権が与えられたことで、若者の政治意識が急速に高まった。投票に向けて若者に政治課題や政策の理解を促す動きもある。
4月中旬、スコットランド東部インバルーリーで、スコットランド民族党(SNP)から5年ぶりに国政復帰を目指す前党首、サモンド前首席大臣の選挙運動に、各地から集まった学生党員10人が加わった。
「スコットランドへの分権を進めましょう」。通行人にチラシを配り、パネルを掲げて投票を呼びかけた。
16歳以上が入党できるSNPの学生党員は住民投票の時点で約500人だったが、投票後に急増し、今では6千人近い。その一人、大学1年生のステファニー・メルニックさん(18)は、独立賛成派の運動に加わったことで政治に興味を持った。45%対55%で独立は否決されたが、「変化を望むなら他人任せではなく、自分で行動しなければいけないと分かった」と話す。サモンド氏も「住民投票で我々が前向きな未来像を示したせいだろう。素晴らしいことだ」と歓迎した。
住民投票は2年間の議論を経て行われた。同党の学生組織幹部アンガス・ミラーさん(21)は、「独立論議で高まった若者の政治への熱意やエネルギーが、賛否の違いを超えて、よりよいスコットランドにしたいという気持ちにつながったのだと思う」と語る。若者の支持拡大は、英政府からさらなる権限移譲を訴えるSNPへの追い風になっている。
変化は、総選挙の投票意欲にも表れている。
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