日本人にとって、もっとも馴染みの深い魚の一つ「鯖(サバ)」。誰しも一度はサバを食べたことがあるといっても過言ではないかもしれない。また、近年では大分県大分市佐賀関沖の「関サバ」をはじめ、日本各地の「ブランド鯖」も大きな人気となっています。
そんなサバをこよなく愛する者が集った全日本さば連合会(通称全さば連)なる団体があるとのこと。「全さば連」の広報でもあるサバジェンヌこと池田陽子さんに、サバの魅力についてうかがってみました。
話す人:池田陽子
「全さば連」の広報担当、サバジェンヌこと池田陽子さん。
薬膳アテンダントとしても活動中。
――そもそも「全さば連」ってどんな団体なんですか?
仲間内の飲み会から始まった、完全な有志団体です。あるとき、ウチの会長が飲み会の席で「俺はさばが好きだ」と宣言したら、実はみんなサバが好きだったという。そのうち「じゃあ、みんなでいろんなサバの料理を持ち寄って飲もう」っていう話になって。もともとは7名でスタートしたんですけど、飲み会やイベントを重ねるうちに会員が増えて100人を越えるようになったので、2013年に全さば連を正式に立ち上げました(池田さん)
――「全さば連」ではいったいどんな活動を?
主に、公式サイトやFacebookで告知して、「鯖ナイト」というイベントを開催しています。全国のサバの産地や消費量が多い地域からサバを提供してもらって、全さば連オリジナルのレシピや、レストランに作ってもらったサバ料理を肴に飲んで語って、という感じでしょうか。
あと会食するだけではなくて、全さば連の会員が、サバの産地で取材した現地レポート映像を鑑賞したりとか、あとサバを歌ったオリジナルソングを披露したりとか、サバにまつわるいろんな企画を毎回やっています(池田さん)
――サバの魅力ってズバリどういうところなんでしょう?
ローカル色がモロに表れるところでしょうか。たとえば、鳥取のほうだと、たまねぎとサバを煮付けて食べる習慣があります。一方、北陸地方にはサバをぬか漬けにした「へしこ」という保存食があるんですが、独特のクセが慣れるとすごく美味しくて、全さば連のみんながハマっちゃって。それがきっかけで、全国各地のサバ料理をいただくようになって、郷土料理以前に、各地のサバそのものの味がこんなにも違うんだってことがわかってきました。
福井県、美浜町の郷土料理「へしこ」
――各地によって、そこまでサバ自体の味が違うとは驚きです。
たとえば、北のサバは脂のノリがものすごい。青森県の八戸で水揚げされる「八戸前沖さば」は、刺身で食べると脂がこれでもかというほど口の中に広がるんですが、焼いて食べるとぱりっとして脂がほどよく感じられる。サバのいろんな部位が一串で食べられる「八戸前沖さばの串焼き」も大人気ですね(池田さん)
八戸前沖さばの串焼き。ジューシー過ぎる1本!
――一口にサバといっても、いろんな味があると。
そのとおりですね。最近、イベントで高知県・土佐清水市の「清水さば」をいただいたんですが、脂のノリ具合もよく、弾力があってもちもちした食感なんですよ。あと、お刺身ということであれば、千葉県の銚子の「極上さば」もオススメ。銚子港で揚がった800グラム以上のサバを独自のタレに漬け込んで冷凍しているんですけど、解凍してお刺身で食べても十分イケるんです。むしろ生より美味しいくらい。あれは衝撃でした(池田さん)
脂のノリが抜群な上に、独特の弾力がある食感の清水さばの刺身
――なんだか猛烈にサバを食べたくなってきたような……。ここで、ぜひ「全さば連」イチオシのお店やメニューを教えてください。
東京都内のお店ですと、まずは中野の「さば銀」。ここは、たくあんと〆サバを和えた「〆サバといぶりがっこ」が最高です。
あとは島根県のアンテナショップ「にほんばし島根館」。ここで提供している「鯖の味噌たたきが絶品です。ランチタイムに来店したら、男性の方は「焼きさばがいな丼」をぜひ召し上がってみてください。桶の中に、焼きサバとか、いくらや海の幸が入っているんですけど、見た目が豪快だし、ひつまぶしみたいに混ぜていただいても美味しいかと。
ええと……まだいいですか?(笑)。今年のイチオシは神奈川県の「平塚漁港の食堂」ですね。内装もカフェみたいですし、サバのフィッシュ&チップスとか、サバサンドとか、いろいろなサバ料理が楽しめます。平塚はゴマサバで地域興ししようとしていて、地元で水揚げされたゴマサバを使ったサバグルメが盛り上がっています。また、湘南ひらつかビーチパークにある「ビーチバルSUCCA」の「サバ竜田サンド」もとっても美味しいんです(池田さん)
「平塚漁港の食堂」のサバのフィッシュ&チップス(780円)
「SUCCA」のサバ竜田サンド(490円)
あと全さば連のメンバーの間では、三宅島で「スナッパー」という民宿をやってる方が作る「三宅島サバサンド」が評判です。現地へ行く機会あればぜひ食べてみてください。ホント、最高ですから!(池田さん)
ご当地の新名物との評判も高い「三宅島サバサンド」(430円)
――お話を聞くだけでもすっかりサバ好きになってしまいました……!
サバトークすると、皆さんそうおっしゃいます(笑)。昔の貴族は青魚を食べなかったそうですが、なぜかサバだけは食べていたそうですから。ひょっとすると日本人のサバ好きは、遺伝子に刻まれているのかもしれませんね(池田さん)
「全さば連」オススメのお店情報
さば銀 中野店
住所:東京都中野区中野5-32-9
電話番号:03-5942-9960
営業時間:15:30~24:00
定休日:日曜日、年末年始
島根の味 主水 日本橋店
住所:東京都中央区日本橋室町1-5-3 福島ビル1F にほんばし島根館
電話番号:050-5861-7032
営業時間:【ランチ:月~金】11:00~15:00(L.O.14:30)、【ランチ:土、日】11:00~16:00(L.O.15:30)、【夜】11:00~23:00(L.O.22:30)
定休日:日曜日、年末年始
平塚漁港の食堂
住所:神奈川県平塚市 高浜台33-1
電話:0463-72-7365
営業時間:10:00〜17:30(4月〜9月)
定休日:月曜日
ビーチバルSUCCA
住所:神奈川県平塚市 千石河岸51−14
電話:0463-86-6892
営業時間:11:00〜15:00
定休日:月曜日
スナッパー
住所:東京都三宅島三宅村神着1172
電話:04994-2-1433
書いた人:松沢直樹
1968年福岡県北九州市生まれ。SE、航空会社職員などを経て、1994年よりフリーランスの編集者・ライターとして活動。主に扱うジャンルは、食全般、医療、農業、安全保障、社会保障など。マグロ解体ショーの実演、割烹の臨時板前などとして、メシを作ることも。近著に「うちの職場は隠れブラックかも(三五館)」。Twitter:@naoki_ma