ウクライナ:米軍到着に露反発 露大統領「東部独立」含み

毎日新聞 2015年04月19日 21時32分(最終更新 04月19日 21時46分)

 【モスクワ杉尾直哉】ウクライナの内務省部隊に対する訓練を目的に、米軍第173空挺(くうてい)旅団の約300人が17日、駐留先のイタリアからウクライナに到着した。AP通信が伝えた。ロシア外務省のルカシェビッチ情報局長は同日、「ウクライナ領内からの外国部隊、兵器、雇い兵の撤退を規定した2月のミンスク合意(停戦合意)に完全に違反する。米国の先進兵器をウクライナに導入する第一歩と見なすことができる」と述べ、強く反発した。

 一方、ロシアのプーチン大統領は18日に放送された国営テレビのインタビューで、ウクライナ東部ドネツク、ルガンスク両州の親ロシア派支配地域の「独立」を承認するかについて「今は何も話したくない。現実的な状況を今後見ていく」と述べ、含みを持たせた。

 停戦合意には東部の親露派支配地域を「暫定自治区」とすることが盛り込まれているが、欧米諸国によるウクライナへの軍事支援が拡大した場合、ロシアが反発して東部独立支持に傾く可能性も出てきた。プーチン氏は、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)の勢力下に入ることへの懸念を繰り返し表明してきた。

 AP通信によると、米軍空挺旅団は、数週間にわたってウクライナの部隊約900人の訓練に当たる。ウクライナのアバコフ内相は、ウクライナ民族主義の義勇兵組織「アゾフ部隊」も対象になると述べた。

 ルカシェビッチ氏は「米軍は英国とカナダの部隊とともに、東部の女性や子供、高齢者の血にまみれた超民族主義の部隊を訓練しようとしている」と厳しく批判した。在ウクライナ米大使館は、訓練対象にアゾフ部隊は含まれないと説明している。

 東部では2月の停戦合意発効後も散発的に続いてきた戦闘が、今月に入ってエスカレートしている模様だ。ロイター通信によると、今月13日から14日にかけてウクライナ軍兵士6人が死亡、12人が負傷した。ウクライナ政府、親露派武装勢力双方が相手側の攻撃を批判している。

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の17日の発表によると、昨年4月以降、ウクライナでの紛争の死者は少なくとも6116人、負傷者は1万5474人に上った。今年だけで民間人約400人が死亡したという。

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