揺れるネット削除基準:忘れられる権利か、表現の自由か

毎日新聞 2015年04月19日 11時15分(最終更新 04月19日 11時21分)

インターネット上の情報の削除等に関する最近の動き
インターネット上の情報の削除等に関する最近の動き

 ◇YAHOO!JAPAN 個別対応/Google 要請87万ページ

 インターネット上で影響力を増す検索サイトやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の運営会社が、検索結果や投稿内容について削除基準を明確化する動きが相次いでいる。プライバシーや人権を侵害しているとして、表示された側が削除を求める事例が増えているためで、欧州発の「忘れられる権利」という概念も注目されだした。基準の明確化は、ネット時代の新たな被害への対応策として評価できるが、「表現の自由」「知る権利」とのバランスや、削除基準が実効性をもつのか、事業者の対応を注視していく必要がある。【尾村洋介、石戸諭】

 「昨今、検索結果のあり方が注目されるなか、プライバシーへの配慮が必要と考えた。一方、判断が難しいケースもあり、単純に削除すれば情報操作になる。そういう問題があることも知ってほしい」

 国内ポータル(入り口)サイト最大手のヤフー。担当者は、同社の検索で表示される情報を削除する際の新基準をこう説明する。

 新基準は3月31日から適用されている。性的な画像や病歴、過去の犯罪被害やいじめ被害などの情報を「プライバシー保護の要請が高い」として、削除の対象になり得ることを明示した。一般の人が住所・氏名や電話番号を勝手に載せられた場合や、長期間経過した過去の軽微な犯罪情報なども、本人が公開を望まなければ表示させない可能性がある。本人側の申請に基づく、個別対応が原則だ。

 検索最大手・米グーグルは、銀行口座やクレジットカード番号をはじめ、児童ポルノ、著作権法違反の情報なども削除対象とした。昨年5月の欧州連合(EU)司法裁判所の「忘れられる権利」判決後には、判決を踏まえた欧州用の基準も策定。これまで87万4564ページ分の削除要請を受け、うち41.5%を削除した。

 SNS大手の米フェイスブックも今年3月、リベンジポルノやいじめ、ヘイトスピーチなどの投稿禁止を規定でより明確化。米ツイッターも同月、撮影された人の同意がない画像や動画投稿を禁じた。違反すれば投稿は削除され、アカウント凍結の対象となる。

 検索サイトやSNSの情報の扱いが、注目を集め始めたのには理由がある。

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