夏の電力:安定供給確保…9社見通し 

毎日新聞 2015年04月16日 22時52分

 ◇関電・九電は他社融通頼み

 経済産業省が16日公表した今夏の電力需給見通しは、需要ピーク時の供給余力を示す「供給予備率」が電力9社すべてで安定供給に最低限必要とされる3%以上を確保した。ただし、関西電力と九州電力の2社は、他電力からの電力供給を除けば供給予備率が0.8%、マイナス2.3%となり、原発再稼働頼みの供給態勢が続いていることが浮き彫りになった。

 電力需給を検証する有識者委に示した。8月の電力需要ピーク時の供給予備率は、原発稼働ゼロを前提にした場合でも、東日本3社で9.7%と昨夏の見通しから2.8ポイント上昇。中西日本6社は4.9%と1.5ポイント改善した。昨夏以降、新たな火力発電が稼働したほか、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の導入で急増した太陽光の供給力が510万キロワットに達し、昨夏から倍増したためだ。政府は3年連続で数値付き節電目標を見送り、自主的な節電を要請する方向だ。

 一方、東京電力福島第1原発事故前に原発比率が高かった関電と九電は、原発停止により供給力が落ち込んだままだ。関電は需要ピーク時の供給余力が22万キロワットしかなく、九電は55万キロワット不足する。両社は中部電力と中国電力からの電力供給を織り込んで、ようやく供給予備率3%を確保する。

 関電と九電は、原発再稼働による供給力の回復を期待していた。関電高浜3、4号機(福井県、計174万キロワット)と九電川内1、2号機(鹿児島県、計178万キロワット)が原子力規制委員会の再稼働審査で先行しているためだ。川内1、2号機は今夏にも再稼働できる可能性があり、経産省の試算では、九電の供給予備率は川内原発が1基稼働した場合は5.1%、2基稼働で10.9%に上昇する見通しだ。

 しかし、関電が今年11月の再稼働を見込んでいた高浜3、4号機は、福井地裁の運転差し止め仮処分決定を受け、再稼働の見通しがたたなくなった。川内1、2号機でも22日に鹿児島地裁が運転差し止め仮処分を判断する予定で、結果次第では今夏の再稼働は絶望的となる。司法判断で原発が稼働できなくなるリスクが明らかになるなか、関電、九電両社は原発以外の供給力を確保する判断が求められそうだ。【中井正裕】

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