社説:東京五輪と環境 「もったいない」を世界に

毎日新聞 2015年05月04日 02時31分(最終更新 05月04日 02時31分)

 2020年東京オリンピック・パラリンピック開幕まで5年余りとなった。世界最大規模のスポーツの祭典を、施設中心のイベントに終わらせてはならない。開催を契機とした新たな取り組みやその精神をレガシー(遺産)として次世代に伝えていくことが大切になる。

 20年は地球温暖化対策の新枠組みが世界で始まる節目の年となるはずだ。2度目の東京五輪は環境を重視し、持続可能な社会の将来像を世界に示すお手本となってほしい。

 かつて五輪は、開催国の経済発展の機会とされる一方、大規模な施設の建設が自然環境を損ねてきた。1964年の東京大会も、そうした両面があったことは否めないだろう。

 だが、70年代から高まった環境破壊への批判を背景に、96年にオリンピック憲章が改正された。環境に関心を寄せ、持続可能な開発を促進することが盛り込まれ、環境はオリンピック運動の大きな柱となった。

 これまでの五輪で、最も環境に配慮した大会と言われているのが12年ロンドン大会だ。

 同大会の組織委員会は07年、開催に伴って生じる廃棄物の埋め立てをゼロとし、二酸化炭素(CO2)の排出を削減するなど具体的な目標を盛り込んだ持続可能性計画を策定。これに従い、資材の再利用や生ごみの堆肥(たいひ)化などで埋め立てゼロを実現した。主会場のロンドン東部地区は事前に土地の浄化や緑地の整備がなされ、環境都市となりつつある。

 20年の東京大会はロンドンをしのぐ環境配慮型の大会としたい。CO2や廃棄物の排出削減は当然であり、資源の無駄をなくすことは経費削減にもつながるはずだ。

 真夏の開催となることから、熱中症対策も大きな課題となる。路面の温度上昇を抑える舗装や緑地整備を進めたい。都心部で相次ぐ再開発計画と連動すればより効果的だ。

 大会では水素エネルギーの積極的な活用なども検討されているが、五輪開催は日本の環境技術を世界にアピールする絶好の機会ともなる。

 東京大会の招致委員会は立候補ファイルで、「もったいない」の精神に基づき徹底的に廃棄物をなくす大会とすることや、五輪の発信力を生かして環境意識の向上を図ることなどを掲げていた。こうした姿勢は高く評価できる。

 心配なのは、その実現に向け、数値目標などを盛り込んだ実行計画ができていないことだ。東京大会の組織委員会は来年度に計画を公表する予定だが、ロンドン大会と比べると遅れている。策定に際しては政府や都、環境NGO(非政府組織)などと合意形成を図る必要がある。5年という期間を有効に使ってほしい。

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