当主の最後の挨拶
当主の最後の挨拶、というとなんかシャーロック・ホームズの最後の挨拶みたいですね。でも僕は今のところまだ死ぬつもりはありませんので、ご安心ください。このサイトが終了するというお知らせに過ぎません。
さて、この怒濤の期限限定サイトも、いよいよ更新終了の時を迎えました。まことに残念ではありますが、どんなものにも終わりはあります。どんな猫にも尻尾はあります(ちょっと違うか)。
もともとは三月の末に終了する予定だったのですが、予想を遥かに超えた、とんでもない数のメールをいただいたもので、それまでにはとてもその処理を終えることができず、期間を四月末まで一ヶ月延長したのです。しかしそれでもなお、溜まりに溜まったメールをすべて読み切ることはできず、心ならずも「積み残し」が出てしまうことになりました。
正確に申し上げますと、15日間にいただいた37465通のメールのうち、今の段階で僕が読み終えたのは32550通で、4915通がいまだに読めておりません。ほかの仕事は全部放り出して、どこにも遊びに行かず(まあ、ちょっとは遊びましたが)精一杯がんばったのですが、何しろ個人作業で目を通しておりますので、がんばりにも限界があります。身体はひとつしかありませんし、目もさすがに疲れてきました。
というわけで、このサイトはここでいちおう更新を終えますが、サイトそのものは5月13日までアップされておりますので、それまでは自由にご覧になっていただけます。またサイトの更新が終了したあとも、僕は責任をもって「積み残し」のメールをすべて読み、そのうちの一部にはこれまでどおりお返事を差し上げます(サイトにはアップされませんが)。すべてのメールに僕が目を通すという最初の約束はちゃんと守りますので、その点はどうかご安心ください。
本当はずっとこのままサイトを続けられるといいのですが、僕の方にもいろいろと事情があり、〈チーム縁の下〉の方にもやはり事情があって、これ以上サイトを維持することはむずかしくなりました。残念ではありますが、どうかよろしくご理解ください。
しかしよくもまあこれだけのメールが来たなあ、というのが僕の偽らざる実感です。日本国内ばかりではなく、外国からもたくさんのメールをいただきました。もし37465人の人が一度に集結したら、神宮球場にだって入りきらないですからね。ちなみに神宮球場の公式収容人員は34572人。ちょっと足りないですね。
僕もできるだけ注意深く、慎重に、言葉を尽くしてみなさんとやりとりしたつもりなのですが、なにしろ日々千本ノック状態だったので、ときには勢いに乗って口が滑ってしまうこともあったかもしれません。ふらふらして、とんちんかんなことを言ったかもしれません。そしてその結果、お気を悪くさせたかもしれません。もしそんなことがあったとしたら、僕としては本当に申し訳なく思います。決して悪意があってのことではありませんので、「ま、しょうがないか。そういうこともあるだろう。大目にみてやろう」と軽くスルーしていただけるとすごく嬉しいです。
このみなさんとのメールのやりとりは、内容的にもとても面白いものだったので、セレクト版を書籍のかたちで、コンプリート版を電子書籍で出版しようかということになりました。セレクト版は400から500通のやりとりを選んで収録し、コンプリート版はおそらく3500を超えるであろうやりとりをすべて、ほとんどひとつ残らず収録することになると思います。コンプリート版を紙の本のかたちで出すと、たぶん電話帳二冊ぶんくらいの厚さになってしまいそうです。こういうときはなんといっても電子書籍が便利ですね。いくらでも好きなだけ詰め込むことができますから。ちなみにこれが僕にとっての記念すべき、日本語版で最初の電子書籍になります(おまけに電子書籍オリジナルです)。あまりにもやりとりの数が多かったので、いっそ電子書籍にしちゃおうというアイデアが途中で出てきました。これも予想外の展開でした。
書籍版は七月下旬に出版されることになると思います。電子版については七月下旬〜八月に発売予定です。
三ヶ月この仕事にかかりっぱなしで、正直なところ、百キロマラソン並みにくたびれましたが、それでもみなさんとのやりとりはとても楽しかったです。たまにはこういうのもいいですね。また何らかのかたちで同じようなことをやりたいなと考えています。もうこれとまったく同じ形式でやることはできないと思いますが(もう一度やったら確実に死にます)、何かうまいフォーマットを考えたいですね。
僕も大変でしたが、僕を支えてくれた〈チーム縁の下〉のみなさんの日々の労働量も、僕に劣らず過酷なものでした。休日返上、夜なべでせっせと仕事をしていただきました。深く感謝します。
メールの処理を終えたあと、しばらくは一人で奥の方にこもって、本来の仕事に励みたいと思います。
それでは、お元気で。
村上春樹