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異世界Cマート繁盛記 作者:新木伸

賓人《まれびと》、店を開く

「おや?」
 向こうに着くなり、俺は周囲を見回した。
 異世界転移も5回目となったからだろうか。今回はいきなり目的地に出現していた。
 気がついたときには、街の外れにもう立っている。建物がそこに見えている。

 街の中心部のほうに向かった。
 このあいだの市場に向かおうと思っていた。また市場の端っこで、地面に商品を並べて、行き交う人々に見ていって貰おうかと考える。

 だが、ある建物の前を通りがかったとき、ふと、そこに誰も住んでいない空き家になっていることに気がついた。
 建物の窓は開きっぱなし。中もがらんとしている。床が少々埃っぽいが、店の中は広くていい感じ。

「あの……、すいません」
 近くを歩いていた人に声をかけて、呼び止めた。
「ここって空いてるんでしょうか?」
「ああ。そこは空き家だよ。何年も前には店をやってたんだけど……。なんの店だったかなぁ?」
「ここの持ち主ってわかります? 俺、借りれますかね?」
「ああ。わかるよ。ついておいで」

 教えてもらったところに行って、おばあさんに話を通す。手持ちの金貨4枚を渡すと、おばあさんは仰天して、そんなに受け取れないよ1枚でいいよ、と返そうとする。
 礼によって押し問答になって、金貨2枚で1ムルグの期間借りるということで、話がついた。
 しかし1ムルグって、それ何日のことだろう?
 まあいいか。

 店を持った俺が、まずやったことは、床の清掃。
 ほうきとちりとりは、たしか突っ込んであったはず――と、バックパックの中味をぶちまけて探すと、ほら、やっぱりあった。
 5枚セットになってる雑巾を、1枚使って、ペットボトルの水で湿らせて、雑巾掛けをする。
 一仕事終えて、店を綺麗にし終わったところで――。
 俺は休憩がてら、外へ出た。

「うーん……」
 腕を組んで店を眺める。
 自分の店だ。マイショップだ。
 なんか感動だ。感無量だ。
 こーゆーの、なんてったっけ?
 一国一城の主?

 しかしファンタジー世界ってスゴい。登記がどーとか、保証人がどーとか、面倒くさいことは、なんにもなかった。
 あんた誰? とも聞かれず、持ち主のおばあさんに直接話を付けにいって、ほんの数分で話が決まった。このスピード感もスゴい。

 外から店を眺めていた俺は、店の外見に、ひとつ、足りないものがあることに気がついた。

 看板だ。
 店の入口の上に、なにか看板っぽいものがかかっている。何かが書かれていたようだが、もう風化してよく見えない。
 その看板は再利用させてもらうとして……。そこに店の名前を書かないと。

 そのまえに、まず、店の名前を決めないと……。
 これは一国一城の主としての、初めての役目であった。
 聖なる儀式である。

 俺は熟考に熟考を重ねた。
 具体的には3秒間ぐらい考えた。
 そして決めた。

「うん! “Cマート”でいこう!」

 荷物のなかからマジックを出してきて、店の看板に「Cマート」と大きく書いていると――。

「ここ。お店なんですか?」
 近所の人が興味を持ってくれたのか。店の中を覗きこんできた。
「ええ。よかったらどうぞ」
 俺は言った。
 店内は掃除が終わったばかり。がらんとしていて、まだなにも並べていない。
 だが俺はさっそくその人を招き入れた。

 記念すべきお客さん第一号だ。
 俺は品物をひっぱりだしながら、商品の説明をはじめた。
長い前置きにおつきあいいただいて、ありがとうございます!
はじめての店舗経営(超イージーモード)、ようやくスタートです。
次回、夜20時の更新は、エルフ耳の店番を雇う話です。


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