柳家花緑、小さん師匠の戦争体験「引き継ぐ」 8・6から舞台初主演
落語家の柳家花緑(43)が初主演する戦後70年特別企画の舞台「南の島に雪が降る」(中島淳彦脚本・演出)が8月6日に東京・浅草公会堂で開幕(9日まで)する。原作は映画「七人の侍」など黒澤明監督作品の常連としても知られた俳優・加東大介さんの戦争体験に基づく物語。インタビューに応じた花緑は、祖父の5代目柳家小さん(享年87)さんから聞いた戦争体験を明かし「引き継いでいくことはいいこと。いい芝居にしたい」と力を込めた。
太平洋戦争末期、ニューギニアの首都・マノクワリで、俳優だった加東軍曹(花緑)が従軍していたことから兵士の士気高揚のため、演劇慰問部隊が作られた。故郷に思いをはせる兵士たちで舞台は大盛況。ある日、瀕死(ひんし)の兵士が「故郷東北の雪がみたい」とつぶやいた―。1961年、加東さん自らが主演し映画化され好評でその後も映画、舞台化されてきた名作だ。
今回初めて知った花緑は「すごい話だなと思いました。祖父から戦争体験を聞いていた部分があるので、自分の体験がないのに絵空事でない気がしている。どれほど極限だったのか。女形であっても女を感じ、紙吹雪であっても雪を感じる。どれほど飢えてるんだろうって」と思いをはせた。
2度徴兵された祖父、小さんさんの経験を何度も聞いて育った。「『行ってくるよ』とあいさつした時、もう今生の別れと思って家を出たって。そういう覚悟がいかばかりかってことですよね。食堂でよいしょって伸びをしたら流れ弾が飛んできて隣の人が死んだんだって」
満州(現中国東北部)では慰問隊として毎週のように落語を披露。「ネタを替えなきゃいけないからうろ覚えでもなんでもやったって。祖父はそういうの得意な人だったんで。お礼がみんな食べ物で、おなかをこわすんだけどとにかく詰め込んで食べたって言ってました」。重機関銃隊で「当たりゃあしねえよ」と1機も撃墜できず、1人も殺さなかったこと。部隊長が「敵が来たら逃げろ」と言った内緒話まで「祖父の口から聞けてリアルさを感じました」。
俳優の加東さん、師匠の小さんさん。2人の体験を舞台の上で表現する。「落語も伝統芸能で、つながりっていうのはすごく大事だと思っている。亡くなっている人でも思いはつながっている。戦争の話もつながりを感じますよね。戦後70年というタイミングで託される。しっかりやり通したい」(角田 史生)