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先日、フランスの青年部から、「『3・16』の決意を込めて」とのことで、一冊の本が届けられた。
文豪ゾラの文章である。謹んで、御宝前に供えさせていただいた。
ゾラについては、これまで何回も、お話ししてきた。
しかし、そこに収められた青年への烈々たる呼びかけを、重ねて皆さんに贈りたく、紹介させていただきたい。
ゾラは、ユゴーとならび称される、フランスの大文豪。
自然主義文学を代表する作家で、『居酒屋』『ナナ』『大地』などの作品は日本でも有名である。
彼は、″下層階級の赤裸々な生活を描くとき、真骨頂を発揮する″と言われる。
彼の人生は、「庶民の側に立って」戦う人生であった。
これを覚えてもらいたい。大事なのは庶民である。
日蓮大聖人も庶民であられた。「民が子」であると胸を張っておられた。
当時の高僧は、ほとんど、貴族出身など高い身分であった。
しかし、大聖人は、あえて、家柄もなく、地位もなく、財産もない、最低の階層にお生まれになった。
ここに重大な意義がある。
地位などで自分を飾ることは、インチキの生き方である。
偉ぶって、庶民を差別する人間のどこが偉いのか。
真の仏法者は、虚飾をはぎ取った″人間としての偉さ″を追求する。
ゾラの人生は、決して順風満帆ではなかった。
七歳で父を亡くし、大学入試にも失敗。
進学を断念して、出版社に勤めながら、文筆活動を志した。
与えられた仕事は、書籍の梱包作業などの雑用ばかり。
しかし、その仕事に懸命に取り組みながら、小新聞に投稿を重ねていた。
地道な文筆活動を続け、遂には″十九世紀最大のベストセラー作家″と称されるまでになった。
ゾラが晩年に遭遇したのが、ドレフュス事件という、有名な″冤罪事件″である。
何の罪もない人間が、軍部権力によってスパイ容疑をかけられ、遠島に流刑にされていた。
事件の背景には、国民の″反ユダヤ感情″を悪用した策謀があった。
ゾラは、黙っていることができなかった。
齢六十近くになっていたが、彼は正義のために、敢然と立ち上がった。
高齢にもかかわらず、「正義のために叫ぼう」と。
叫べなくなってしまえば、人間、おしまいである。その人は、″心″が死んでいる。
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