連休中、いままで株はしたことがない、勉強をはじめたばかりの株式初心者と話をする機会がありました。
どの銘柄がよいか、ユーグレナやバイオ株はどうかなど質問がありました。
対話を通して、私が感じたことは下記です。
・初心者は何を買ったらよいかわからないので、経験者としては何か具体的な銘柄は伝えるべき。
・数年は勉強期間と考え、100万円くらいで売り買いして経験を積むとよい。野球選手も中学、高校とたくさん練習してプロになるのに、プロがわんさかいる株式相場ではなぜか初心者は謙虚さを失いやすい。
・相場が過熱している時期に投資を始めることは、長い目でみると良い投資開始タイミングかもしれない。早い段階で急落を経験し、リスク管理の重要性を実感できる。損失リスクの管理はとても重要。急落らしい急落の経験がないと、ライブドアショックみたいな急落でいきなり退場しかねない。
『時価総額について』
・初心者は時価総額は気にしていないことが多い。似たような企業を時価総額で相対比較することは重要。例えば武田薬品の時価総額が5兆円なら、小野薬品の時価総額はこのくらい、エーザイはこのくらいでもよいかな、とか。数年後にカカクコムとクックバッドの時価総額が逆転する可能性もあるけど、もしそうなるとクックパッドはこのくらいの株価になっているかも、とか。
・時価総額の大きな目安としては、少し前のデフレの時代の感覚では、成長しきって業績横ばいの会社で営業利益100億くらいだと、時価総額1000億くらい。資本主義社会では正常な状態と言えるインフレの時代では時価総額はもっと評価される。
・時価総額は分野によってかなり差はあって、製薬会社や強固なビジネスモデルの会社はその数倍まで許容される。逆に証券業界やゲーム業界は浮き沈みが大きいので、ピーク時の営業利益100億でも、数年後には赤字転落の可能性も織り込んで時価総額1000億以下で推移することが多い。
『初心者が勉強しやすいという意味で、おすすめの銘柄選択について』
・富士フィルムみたいな多角化した大企業は分析しづらいので、主な事業内容は1つで、その事業の好不調が業績を左右する銘柄の方がシンプルでわかりやすい。
・増収増益のインターネット系企業は事業内容がシンプルで、設備投資もあまり必要ではないため、財務の分析もしやすい。キャッシュフローの計算もしやすい。
・小売株も棚卸資産や月次売上、季節要因など勉強になる要素は多い。何より実際にお店を訪問したり、商品を買って使ってみたり、企業の好不調を実感できることが多い。
・今後、大量出店とかCM開始、新規事業、業績の上方修正などわかりやすいカタリスト(株価上昇が期待できるようなきっかけとなるイベント)があるとなお良い。カタリストで株価はどう動くか、またはこの程度の材料は織り込み済みで株価は動かないとか、経験になる。
『夢材料のある株について』
・雑誌などの株式評論家が勧める夢材料銘柄は、宝くじみたいな夢シナリオを描きやすい。夢のあるシナリオを作りやすいので、評論家はユーグレナやサイバーダインみたいな銘柄を推奨することは多い。
・実際には有望な分野は国外の企業との技術開発競争が激しく、夢シナリオの実現確率は低いし、どのくらいの勝算があるのかよくわからない。
・バイオ燃料やロボットスーツはどのくらいの市場規模になるなどの分析はよく見聞きするが、じゃあ市場規模が拡大したその時にユーグレナやサイバーダインはどのくらいの売り上げでどのくらいの利益率なのか、だれもわからない。数年後にどのくらいの利益が出ているかわからないので、どのくらいの時価総額が適切かもわからない。
・私は、ユーグレナは懐疑的、サイバーダインは応援している、しかし、サイバーダインも含めて、自分自身で他社との技術や商品、サービスの優劣を評価できない銘柄や、業績予測や分析ができない銘柄は長期投資しない主義なので、原則として夢銘柄には短期売買以外は手を出さない。
・しかし、本来ハードルが非常に高いはずの夢銘柄に株式初心者が惹かれやすい。私が思うには、将来はわからないことだらけなので、決算書の分析不要、遠い将来の飛躍を期待して買っているので、来期や再来期の業績予測は不要、宝くじを買ったつもりであとは神頼みで努力せず楽に投資できる点が好まれるのかも。いまの株価が高いのか安いのかわからない夢銘柄では、株価指標も計算する意味がない。
・個人的には決算説明会資料を熟読し、四半期決算短信を読むような個人投資家達に、こういう夢シナリオで満足して楽な投資しかしない人はいつまでも追いつくことはできないと思っている。
・数年前だと有機EL、太陽電池、電気自動車の普及を先取りしてリチウム電池関連などの相場があった。結局、有機ELはテレビやスマホの画面では主流にならなかったし、太陽電池は価格競争が激化し期待ほどの利益にはならなかった。電気自動車はいまだに一般家庭には十分に普及しておらず、GSユアサは2009年の高値を超えられずにいる。
・夢銘柄は株式相場の全体の地合いがよいときは比較的値は保たれるが、株価を支えるのは期待が大半なので、相場全体が急落すると真っ先に数分の一になるので、本来は株式初心者は避けるべき銘柄群になる。
『バイオ株について』
・ナノキャリア、カイオム、アンジェス、デ・ウエスタンみたいな時価総額100億以下が妥当のようなバイオ銘柄は、ときどきIR材料を出して株価が乱高下するが、本業はうまく行っていないので長期投資はおすすめできない。株式上場時のシナリオ通りにうまくは行かず、最初の夢も破れて紆余曲折の末、いろいろと資金調達して企業の延命を図った結果として今に至る。苦し紛れの新たな夢を作って、今はなんとか株価を維持しているが、短期売買以外は初心者には手出し無用。しかし、初心者はこういう銘柄に長期投資しようとするから、不思議。