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道央、消えゆく懐かしの円形校舎 石狩小や室蘭・絵鞆小、江別・第三小

北海道新聞 5月4日(月)15時53分配信

 1950年代に全国で流行した円柱形が特徴の「円形校舎」。建設費の割に広いスペースが確保できることから当時一気に普及した。道央では石狩市立石狩小が今も現役だが、室蘭市立絵鞆(えとも)小が今年3月で閉校し、江別市立江別第三小は5月にも解体工事が始まるなど、現存する校舎も姿を消しつつある。仮収蔵庫として活用されている小樽・旧石山中を含め、道央に残る円形校舎のいまを紹介する。

■石狩小 道内初、築59年の現役

 「階段を上ると方向感覚がおかしくなり、目指す教室の場所が分からなくなる。慣れるまで少し時間がかかった」。2階建ての円形校舎、石狩市立石狩小(横町)の伊藤裕基校長(57)は、2013年春に赴任した当時を振り返る。

 玄関を入ると丸い廊下が出迎える。向かって左側のらせん階段が「上り専用」、右側が「下り専用」。児童同士がぶつからないための配慮だ。2階に上がった時、上り始めとは体の向く方角が変わるため、方向感覚が狂いそうになる。

 校舎中心にある円形の廊下を囲むように教室や図書室、職員室などが並ぶ。

 教室内は切り分けたバウムクーヘンのように扇形で、扇の外辺側に窓、中心側に黒板がある。児童の机は「ハ」の字形に配置。長方形の教室に見慣れた目には異質だが、コンサートホールのように視線が黒板に集中できる構図だ。

 児童72人が学ぶ同校では、1〜4年生の教室が円形校舎内、5年生と6年生の教室が長方形の新校舎内にある。児童会長の菅野翔哉君(6年)は「円形校舎は外の光が背中を押してくれる感じがして、とても勉強しやすい」と、4年生まで学んだ教室を振り返る。

 1956年完成の円形校舎は道内初とされる。石狩市が96年に発行した「石狩百話」には「小学校では全国で初めての円形鉄筋コンクリート造りの校舎」とある。築59年と古く、児童数も減っていることから、石狩市教委は隣の八幡小との統合を検討している。

■室蘭・絵鞆小 東棟は保存活用

 白鳥大橋のたもとに建つ、室蘭市立絵鞆小(祝津町)は3月末で閉校し、「みなと小」に統合された。2棟つながった円形校舎は、地域のシンボル的な存在だった。

 校舎はともに直径が約30メートルで、一部4階建ての東棟が1958年、最上階にドーム形屋根の体育館を備えた3階建ての西棟が60年にそれぞれ完成。当時1600人を超えた児童は閉校時には217人となった。

 被写体に選ぶカメラマンも多く、室蘭市のアマチュア写真家で会社員の関浩勝(ひろかつ)さん(47)は今年3月に幻想的な夜景写真を撮影した。同小の出身で、「らせん階段も好きだったし、何より他の小学校の友達からうらやましがられてうれしかった。母校であることが自慢です」と話す。

 室蘭市は、耐震基準を満たす東棟を保存し、不登校児向け適応指導教室などを置いた。西棟について市教委は「保存活用は難しい」としている。

■大型連休明け解体工事開始 江別・第三小

 1957年に完成した江別市立江別第三小の円形校舎(緑町西)は地場産業のれんがを利用しているのが特徴だ。最上階4階には展望スペースの「ペントハウス」が設けられ、JR江別駅や製紙工場が見渡せる。

 同校は校舎の老朽化や、児童数の減少などから来春、江別小と統合し「江別第一小」となる。円形校舎を取り壊した跡地に新校舎が建てられる。

 児童は今春から仮設校舎などに移動したが、今年4月まで理科など一部の授業で円形校舎が使われた。5月の大型連休明けにも解体工事が始まる予定だ。新校舎の最上階にはペントハウスが設置され、円形校舎の雰囲気が引き継がれる。

最終更新:5月4日(月)16時22分

北海道新聞

 

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