前回はドーパミンについてドーパミン神経系の主だった経路と中枢における作用を取り上げた。ドーパミンの神経系は主に4つで、その機能は運動機能、認知機能、意欲などの情動に関係する。腹側被蓋野から側坐核に投射する経路(中脳辺縁系路)は一般に報酬系として知られている。
今回のテーマ、ノルアドレナリンの神経細胞体は脳間内のA1〜A7の部位に存在し、特にA6青斑核が最大の物である。
この僅かなノルアドレナリン細胞群(12000〜25000個)から脳全体(大脳皮質, 大脳辺縁系, 視床)そして脊髄へと広く投射する。これは個々の情報の伝達というよりは、個体全体の状態変化をもたらす物質であると考えられる。
俗に怒りのホルモンと呼ばれ、戦うか逃げるかの状態を作り出し、恐怖・怒り・不安・緊張をもたらすと言われる。
ノルアドレナリン神経系は青斑核系と外側被蓋系の2つに大別され、下図のように投射する。
青斑核系は睡眠・覚醒リズムと同期的に変動する。覚醒時で周期的に発射活動が見られ、入眠で活動低下しレム睡眠時には完全に活動が停止する。
従って青斑核から始まるノルアドレナリン神経系経路は覚醒状態を直接コントロールしていると思われる。また、ノルアドレナリン神経系は内外の刺激(視覚、聴覚、低血糖、失血など)で容易に活動が亢進する事から、ストレス反応を司っていると思われる。
ノルアドレナリン神経系は, 脳内のストレス感知系であり, 内外環境から伝達されるストレス情報に対して覚醒レベルを調節し, 情動行動やストレス反応などを揮発しているものと思われる。
ノルアドレナリンはセロトニンと類似する特徴がある。脳幹の細胞核から脳全体に投射し作用する点や睡眠覚醒リズムと同期的に活動する点などである。一方ストレス刺激による一過性の活動亢進とそれに続く抑制はセロトニンには見られないものである。
ノルアドレナリンの過剰がパニック障害、不安障害を引き起こすとされる。ノルアドレナリン神経系への覚醒刺激は情動の中枢である扁桃体の基底核へも入力され, 不安や恐怖などの情動発現を増強させると思われる。
この系の主要な抑制系はGABAAである。
ストレス反応系には2つの違った反応を示す内分泌系が存在する。所謂能動的反応と受動的反応である。前者は闘争か逃走の反応。後者は硬直、怯えなどと言い換えて良いと思う。いつか取り上げたいと思う。
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