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【メガプレミアム】止まらぬ軍事汚職は「韓国のコンプレックス」の現れ?…国産兵器にこだわり業者と癒着、摘発の“大なた”も効果のほどは

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止まらぬ軍事汚職は「韓国のコンプレックス」の現れ?…国産兵器にこだわり業者と癒着、摘発の“大なた”も効果のほどは

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 韓国では海軍救難艦「統営艦」に軍用ソナーではなく魚群探知機が積まれていたことが発覚したのを機に、軍・防衛事業庁の装備品納入を巡る不正や汚職が次々と明らかになっている。世論の沸騰で過去の不正も蒸し返され、朴槿恵(パク・クネ)政権が提案した兵器開発関連予算案は国会を通らず、兵器予算は大幅削減。海軍トップの総長も更迭が予想される事態となっている。業者との癒着や汚職蔓延(まんえん)の背景には、兵器の国産化にこだわる「韓国のコンプレックス」も指摘される。(岡田敏彦)

“マグロ艦船不正”に司直のメス

 軍用ソナーの代わりにマグロ漁船用の魚群探知機を搭載していたとして問題になった統営艦。納入業者はソナー代金として国から41億ウォンを受け取りながら、実際には2億ウォン(約2160万円)の探知機を納めていたことが昨年11月に発覚したことは以前の本稿で伝えた。

 しかし問題はこれだけでなく、司直のメスが入った結果、軍の上層部が関与した汚職事件の構図が浮かび上がってきた。

 中央日報(電子版)など現地メディアによると、キーマンは防衛事業庁に所属していた元海軍中佐。ソウル中央地検の調べでは、この中佐が現役時に魚群探知機(ソナー)の業者の社員(39)から、自社製品を海軍軍艦に採用してほしいと頼まれ、約5億1千万ウォン(5500万円)の賄賂を受け取っていた。また中佐は統営艦のウインチ納入に関しても他の業者から1億ウォン(1080万円)を受け取っていたという。

 さらに別の軍人(佐官級の将校)も、統営艦の装備品納入にからみ、2つの業者から軍の在籍中に6100万ウォン(約660万円)、除隊後に4億5600万ウォン(約4920万円)を受け取っていたことが判明した。

 防衛事業庁の不正はこれにとどまらず、昨年12月23日には、陸軍の野戦用の防寒服の納品を巡り特定業者に便宜を図ったとして同庁の大佐と部長が逮捕された。朝鮮日報(電子版)によると、この部長は部下の反対を無視し、出身高校の先輩が役員をしている企業と10億ウォン(約1億800万円)の取引をしたという。

 軍の兵器納入を統括する防衛事業庁で業者の選定にからんで賄賂が横行する実態が明らかになったわけだが、これをきっかけに軍の不正や欠陥が次々と指摘されていく。

戦車も小銃も落第品

 朝鮮日報など現地マスコミによると、開発が迷走していた主力戦車K-2は、エンジンとミッションを一体化した「パワーパック」の国内開発が難航。100両分はドイツ製を輸入して凌いだが、残る100両分は国産に固執。ようやく完成した国産パワーパックは、軍の作戦要求性能である「停止状態から8秒以内で速度32キロまで加速できること」の条件を満たせず、8・7秒かかることが判明した。

 一方で部隊配備予定の2011年はとうに過ぎ去り、これ以上配備を遅らせるわけにはいかない-との判断から、最終的には作戦要求性能の方を引き下げるという本末転倒な解決策を打ち出した。

 また最新鋭のK11複合小銃は、ライフル銃とグレネードランチャー=空中炸裂(さくれつ)弾などを発射する銃=を一体化するという無茶な思いつきで設計したため、複雑な構造から暴発事故が重なり、二度も回収措置を受けるなどした。さらに朝鮮日報によると、昨年10月の試験では、グレネードランチャーに装填した20ミリ空中炸裂弾の撃発センサーに欠陥が判明。磁石を近づけると、撃発信号と誤認して暴発する危険性が明らかになった。

 こうした流れで、過去の不正も蒸し返された。軍では11年、砲兵部隊用の4GBのUSBメモリー(当時市価1万ウォン=約1080円)を、特定の生産業者から95万ウォン(約10万2600円)の高値で660個も購入していたが、こうした問題が中央日報(電子版)などで再びクローズアップされ、「国防のためと称して税金を使い何をやっているのか」と、軍と関連業者への批判が沸騰する事態に。

韓国のコンプレックス

 朝鮮戦争の緒戦で北朝鮮軍に惨敗し、米軍の孤軍奮闘で何とか半島の南半分を確保した韓国。兵器は長らく米国製の時代が続き、国産兵器開発は同国軍関係者の悲願だった。そうしたコンプレックスの裏返しとして、近年国産化した兵器については政府もマスコミもこぞって「名品武器」と自画自賛してきた。

 しかし実態は、国産とは名ばかりの劣化コピー品や欠陥品ばかり。統営艦の不正発覚で、こうした不良品の群れが改めて批判されることになった。

 ついに国会も業を煮やし、朴政権の出した軍事の15年度予算案のうち武器購入と開発の予算を大幅削減した。朝鮮日報(電子版)などによると、K-11小銃は6割以上の、対艦ミサイル「ヘソン」は200億ウォンの削減。赤外線閃光弾事業は62億ウォン全額が削減されるなど、全体で約1500億ウォン(162億円)が削減された。

 とはいえ、軍事費全体が減ったわけではなく、削減分は「戦力運営費」にまわされた。昨年、いじめを受けた兵士が銃を乱射して脱走するなど不祥事が頻発したことを受け、兵営生活専門相談官を配置するなど、劣悪な環境下にある兵士の生活環境改善に乗り出したのだ。

 軍隊という強烈な縦社会の中で、将官ら幹部ばかりが賄賂などで“いい思い”をしてきたことへの反動が表面化してきたといえる。こうした上層部の不正と汚職の問題で、最もやり玉にあげられているのが黄基鉄(ファン・ギチョル)海軍総長だ。

反日英雄の末路

 黄総長は統営艦のソナー装備契約時、防衛事業庁の艦艇事業部長で、まさに統営艦問題の最高責任者だった。国の監査院や国会議員らによる調査の結果、黄総長が贈収賄に関わったとの証拠はなく、無罪放免となるはずだったが、監査院は現場トップとしての管理責任を問うた。

 中央日報(電子版)によると、「事実上の人事措置を国防部に要求した」という。さらに同紙は「監査の結果、黄総長の不正容疑は明らかにならなかったが、無能に対する責任は取らなければならない」と強調。「彼はすでに総長の資格を喪失している」と“断罪”した。

 さかのぼること半年前の6月21日。韓国海軍は島根県竹島(韓国名・独島)の近海で、駆逐艦「広開土大王」(3200トン)やイージス艦「栗谷李珥」(7600トン)、ミサイル艇などによる演習を実施。日本が「訓練は極めて遺憾」(菅官房長官)と中止を要請したのを無視して強行した演習は「北朝鮮の潜水艦対策」などとされたが、半島から遠く離れた竹島まで北朝鮮の潜水艦が南下するはずもない。

 事実上は国民に反日をアピールするための演習だったわけだが、そこで威勢がよかったのが黄総長だ。中央日報(電子版)などによると、演習で黄総長は「潜水艦の天国と呼ばれる東海(日本海の韓国名)を潜水艦の墓にする準備ができている」と勇ましいコメントを発して、韓国マスコミに格好良くとりあげられていたのだが…。

 わずか半年で無能の烙印(らくいん)を押された黄総長。自業自得とはいえ哀れな末路だ。(1月13日掲載)

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