地球温暖化に立ち向かう意欲に欠けているというほかない。政府が新たにまとめた温室効果ガスの削減目標案である。

 2030年のガス排出量を13年に比べて26%減らすという。気候変動枠組み条約や京都議定書の基準年1990年に比べれば、40年かけてわずか18%ほど減らす目標に過ぎない。

 すでに1人当たり排出量で日本より少ない欧州連合(EU)は、90年比で40%以上の削減を掲げている。それに比べて政府案のレベルは低すぎる。

 実質的に国際水準に劣るのに、基準年を最近の年へずらしたため、そう遜色がないようにも見える。そんな姑息(こそく)なやり方で近年の無策をごまかしては、国際社会の信頼を失うだけだ。真剣に考え直すべきである。

 最大の問題は、経済成長で当然のようにエネルギー消費が伸びるとしている点だ。原発回帰を進めようとするのも、つまりはエネルギー消費構造への切り込みが足りないからである。

 日本はEUなどと異なり、京都議定書で13~20年のガス削減に参加しなかった。このため、国全体の取り組みがゆるみ、政府が基準年とした13年の排出量は90年より約11%も増えた。

 それは原発事故の影響だけではない。この間、事務所など業務部門の排出量は2倍以上、家庭部門も1・5倍以上になった。政府案は両部門での省エネを特に強めるというが、それでも業務部門の30年の想定排出量は90年より多く、家庭部門もわずかに下回る程度だ。

 全体の約3割を排出している産業部門の削減幅が、13年比で約7%というのは、あまりにも低すぎる目標である。

 確かに産業部門は業界ごとに計画を立てて省エネを進め、90年比で約15%減らしてきた。だが、もっと余地があるはずだ。

 経済産業省系の省エネルギーセンターによると、製造業では保温断熱材の劣化だけでエネルギーを10%も損しているという。複数の工程や事業所を結んでの省エネも遅れている。

 欧米は経済成長とエネルギー消費の切り離しを積極的に進めている。例えば、電力会社などエネルギーの供給や小売りを担う事業者に一定の供給削減を義務づけることで、工場や事務所、家庭などの省エネ投資を促す政策が広がりつつある。

 その結果、省エネ策を提案・提供する新産業が育ってきた。

 省エネは世界の一大潮流である。国内で本気になって最新の経験を積まなければ、急速な成長が見込まれる途上国の省エネ需要も取り込めないだろう。