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 憲法9条と自衛隊。てんびんの両端で揺れ動くように保たれてきたバランスが、崩れようとしている。安保法制が成立すれば、自衛隊の役割に格段の重みが加わるからだ。立場は違うが、そんな動きを憂えている、2人の学者に聞いた。

 桜美林大教授の加藤朗(あきら)さん(63)は国際政治が専門。かつては憲法を改正し、戦闘機を持つ自衛隊を「軍隊」と認めるよう訴えていた。そんな加藤さんが、戦争放棄を定めた9条に「救われた」という。

 2012年夏、内戦の実情を知ろうとシリア入りした。首都ダマスカスの外れで、軍のヘリがロケットを発射するのを目撃した。とっさにビデオカメラを構えた瞬間、秘密警察に捕まり、住宅街の「邸宅」に連れて行かれた。

 地下の独房と雑居房に30人以上が捕らわれていた。取調室からは革のムチでたたく音と悲鳴。翌日に姿が消えている人もいた。計4日間拘束され、何の説明もなく強制退去となった。

 帰国すると防衛相経験のある小池百合子氏から「助かったのは日本人だったから」と言われた。アラブ諸国が、憲法9条を知っていたかどうかはわからない。しかし、街中で出会う子どもさえ「ヒロシマ」「ナガサキ」と口にした。「戦争を避ける『平和大国ブランド』の重みを実感した」

 中学生の時に海上自衛隊に体験入隊し、大学院を出た後は防衛研究所で15年間、研究生活を送った。自衛隊の必要性は身にしみている。だからこそ思う。戦力不保持をうたう平和憲法と、実態として軍隊と変わらない自衛隊。「矛盾するような二つがあって、日本は70年もの間、戦争の被害者にも加害者にもならないで済んだ」