2015年5月3日23時14分
朝日新聞は4月、衆参両院の憲法審査会に加わる9党で憲法議論をとりまとめる責任者や、政策担当者に対し、党の憲法についてのスタンスや見解をインタビューした。
■自民党 船田元・憲法改正推進本部長
我が党の党是は、戦後、連合国軍によって与えられた現行憲法を日本人の手によって作りかえることだ。今の憲法が今日までの日本を形づくり、定着してきたという事実はある。一方、冷戦の終結や中国の台頭など国内外の状況は大きく変わってきた。時代の要請に合わせた憲法にしていくことが必要だ。
9条は改正し、自衛権を明記すべきだ。独立国家が平和を保ち、国民の安全を確保するために軍隊を持つことは世界では常識だ。自衛隊の名称は「国防軍」あるいは「自衛軍」にすべきだ。
改正手続きを定めた96条も改正したい。今は衆参両院のどちらかで3分の1以上が改正発議に反対したら、国民投票に進めない。改正のハードルが高く、国民が主権を行使する機会が与えられないということだ。発議要件は衆参各院の3分の2以上から過半数に引き下げるべきだ。
東日本大震災での政府対応の反省を踏まえ、緊急事態に対処するための仕組みを憲法に規定すべきだ。国民の生命や身体、財産の保護は、国家の最も重要な役割だからだ。地球の環境保護の観点から、環境権についても憲法に加えたい。(聞き手・安倍龍太郎)
■公明党 北側一雄・憲法調査会長
まず、今の憲法は優れた憲法だと認識している。そのうえで、制定以来68年が経っている。憲法は国の最高法規ではあるが、一切触ってはならないというのはちょっとおかしい。時代の大きな変化の中で、変えるべきは変えていくという立場が、我々が掲げる「加憲」だ。
加憲の対象になるのは、今の憲法のままでは不都合があり、多くの政党が合意できるテーマでないといけない。その意味では、「緊急事態条項」を加えることは、中身によっては多くの人の理解を得られるのではないか。憲法には、国会議員の任期や解散規定が明確に書いてあり、それに反することはできない。
しかし、東日本大震災のような大規模災害があった時に選挙をやっているわけにはいかないし、国会が全く機能しない状況はまずい。明確な条件を示した上で、任期などについて憲法規定の中に例外を設ける必要性はあるだろうと思う。
ただ、内容については相当な議論が必要だ。改正の発議に必要な3分の2以上の合意を形成するのは、容易なことではない。改正の時期ありきではなく、しっかり論議を重ねていくことが大事だ。(聞き手・池尻和生)
■民主党 江田五月・憲法調査会長
憲法改正には賛成だ。だが、民主党としては、改正論議を当面「封印」する。安倍晋三首相と、戦後日本は「いい憲法を手にした」という認識を共有できていないからだ。
今の憲法を制定した当時の国民は、民主主義国家になったことを歓迎し、日本は平和で豊かで恵まれた道を歩んできた。議論を始める大前提は憲法についてそうした認識を持つことだ。
政権が手練手管で国会発議に必要な国会議員の3分の2以上を確保しても、国民投票で我々が協力しなければ、改正に必要な過半数の賛成を得られないかもしれない。そうなれば、将来にわたり憲法に触れられなくなりかねませんよ、と首相には申し上げておく。
封印が解かれた場合、人権の制限には手を触れず、緊急時の国会議員の任期延長や首相の解散権の制限を盛り込んだ緊急事態条項を創設する議論は大事だと考えている。
とはいえ、統一地方選を振り返っても、議員の担い手不足が深刻になっている。国民主権による代議制民主主義は憲法の大原則だ。その根本が揺らいでいる今、憲法改正よりも、こうした問題を議論する方が先だろう。(聞き手・渡辺哲哉)
■維新の党 小沢鋭仁・憲法調査会長
我々はよく、安倍政権が目指す憲法改正の「補完勢力」などと言われるが、「率先勢力」だ。このままでは国力がずるずると下がり続けてしまう。
そうならないためには、国の根本的な統治機構を改革する必要がある。そう考える日本維新の会と結いの党が合併し、昨年9月に生まれた政党だからだ。
具体的には道州制を導入し、国会を一院制とし、首相を公選制とすることを公約として掲げている。いずれも憲法改正が必要だ。
緊急事態条項や環境権、財政規律については、いずれも改正の方向で考えている。まだ決定していないが、緊急事態では自民党が主張するように、一時的に私権を制限することに大きな意味があると思っている。
憲法改正の発議に、国会議員の3分の2以上の賛成が必要と定めた96条も、過半数にハードルを下げるべきだ。時代の変化に合わせて国民の手で憲法を作り替えていくことが必要だ。
現実的には我々だけで発議できる議席数はないので、与党の動向をしっかりとにらみながら動いていく。優先順位を付けず、改憲のため、まず一歩を踏み出すことに力を注ぎたい。(聞き手・渡辺哲哉)
■共産党 小池晃・政策委員長
憲法改定には断固反対だ。改憲論者は「現実と憲法が背離したから憲法を変える」と言うが、背離させた責任は、憲法に背く政治をやってきた歴代の自民党政権にある。現行憲法の全条項を守り抜く。とりわけ9条を変えてはならず、9条に基づく平和外交に全力を注ぐべきだ。
緊急事態条項は結局、憲法規定を一方的に停止し、憲法秩序を否定するものだ。環境権は憲法上の基本的人権として認められており、憲法を生かした立法政策に政治が本気で取り組むべきだ。財政規律条項は社会保障費の削減に根拠を与え、25条の生存権を侵害するもので、相いれない。
自民党の進め方はあまりに姑息(こそく)だ。要は9条を変えたいのに、国民に口当たりが良いことから議論に入るやり方自体、品性のかけらも感じられない。「改憲になれてもらう」という発言には、国の根幹に関わる議論をする姿勢が見えない。国民を愚弄(ぐろう)するもので、今の改憲論のインチキさが透けて見える。
現実政治で、憲法を変えなければ国民のために実現できない課題は一つもない。憲法を変えない一点で共闘を広げる闘いをやっていきたい。(聞き手・石松恒)
■次世代の党 江口克彦・参院憲法審査会委員
現行憲法はGHQ(連合国軍総司令部)から押しつけられたものであり、国民自身の手で作っていないので、改正すべきだ。日本の歴史や日本人固有の伝統精神を含めて、憲法を作っていく必要がある。憲法はその国の固有のものであって、抽象的、普遍的なものではない。普遍性、時代性、国民性の三つの観点から考えないといけない。
国民の同意を得やすいものから改正すれば、パッチワーク的な改正となり、醜い憲法になってしまいかねない。党としては全体を新しい憲法にそっくり変えるべきだと思うが、現実的には必ずしも改正がすぐ進むとは考えられない。次善の策として、段階的に改正しなければならないだろう。
改正は緊急事態条項から入るのが現実的だ。自然災害やテロの発生時に、非常事態が宣言できないのは問題だ。国民を守るために緊急の措置がとれるよう、憲法に定める必要がある。
ただ、最も改正が必要なのは前文だ。今はあまりにも国柄や国民性が無視されていて、日本の憲法ではないようだ。「平和を愛する諸国民を信頼する」という記述は、今の国際情勢にそぐわない。日本語としても不自然な部分が多い。(聞き手・笹川翔平)
■社民党 福島瑞穂・副党首
まずは改正しやすいところから憲法を変える、という自民党の根性そのものが最悪だ。環境権も財政規律条項も、将来9条を変えるための手段にすぎない。
「国民を憲法改正に慣れさせる」という姿勢は、子供が泳げるようにちょっと水に慣れさせて、と言うようなもので徹底的な上から目線だ。原発推進や辺野古の基地建設で現に環境を破壊している人たちが、憲法に環境権を、などと言うのは笑止千万だ。国民を愚弄(ぐろう)するにもほどがある。
そもそも自民党の改憲草案は、国民は「公益および公の秩序」に従わなければならない、としていて基本的人権の制限につながる可能性がある。国民を縛る草案は憲法ではない。上から目線の、国民に説教たれ憲法だ。
国会で安全保障関連法案を「戦争法案」と表現したことに対して、自民党は議事録での修正を求めてきた。今、何が起きているか。戦争が起きるずっと手前で、戦争反対という声をあらゆるところで押さえ込もうとしている。戦争法案が日本国憲法下で成立することを止めなくてはいけない。明文改憲のずっと手前で、憲法を踏みにじることと戦わなければいけない。(聞き手・笹川翔平)
■生活の党と山本太郎となかまたち 主浜了・参院憲法調査会委員
「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」「国際協調」という日本国憲法の4大原則は堅持する。この基本原則を変えるのであれば、それは「憲法改正」ではなく、「新憲法制定」だ。時代や環境の変化に応じて必要があれば「加憲」していくというのが基本方針だ。
憲法とは、権力者を縛るもので、決して国民を縛るものではない。自民党の改憲草案は、「国民の義務」ばかりが目立ち、立憲主義をまったく理解していない。
緊急事態条項についてもそれは言える。大規模テロが起き、全国務大臣が欠けた場合に備え、臨時代理を置くための根拠規定は必要だ。一方で、緊急事態になっても、民主的な統制が担保されないといけない。自民党の改憲草案にはその部分が欠けている。
解散権についても考える必要がある。首相の一存で、極めて都合のいい時期に勝手に解散するのはどうかと思う。
「最後は国民投票で決める」という理由で、憲法改正の国会発議を急ぐ動きがあるが、それには反対だ。時期ありきではなく、国民の理解ありきで進めていくべきだと考えている。(聞き手・岡村夏樹)
■日本を元気にする会 山田太郎・政調会長
我が党は、直接民主主義の仕組みを取っているので、最終的には国民に賛否を尋ねることになる。重要なのは改正の時期ではなく、改正する必要があるかどうか。改正すべき項目があれば、積極的に提示していきたい。
時代に合わなくなったり、今後想定される事態に対応する必要があったりする点は、改正を検討すべきだろう。結論は出ていないが、党内では参院のあり方や住民投票などについて議論している。
例えば、参院は衆院の「カーボンコピー」と揶揄(やゆ)される。結論が決まっている国会議論は茶番だ。国民の代表である議員が政党に縛られず、もっと自由に議論をできるようにすべきだ。政党の概念そのものや、参院の党議拘束禁止などを憲法に明記する議論があっていいかもしれない。
自民などが主張する緊急事態条項、環境権、財政規律条項を加える改正については中立の立場だ。具体的な内容がわからないので、判断のしようがない。ただ、財政規律条項についてはかなり疑問がある。財政を運営する政府側に立つ与党が提案するのは、ナンセンスだ。まずは、財政法を守るべきではないか。(聞き手・岡村夏樹)
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