徹底比較!自衛隊CH-47チヌーク
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-自衛隊のヒミツシリーズ③-
独特なフォルムを持った大型輸送ヘリCH-47チヌーク、何とも軍用機らしいこのどっしりとした風格に惚れたマニアも多いはず。しかし自衛隊のCH-47には様々なタイプがあり、航空雑誌でさえもたまに説明を間違えてしまうという状況です。普通のマニアさんなら尚更、見分け方が分からず困っている方もいるはず....ということで今回は自衛隊のCH-47J/JAの「見分け方」についてご紹介させていただきます。 1.自衛隊CH-47の種類 自衛隊の保有しているCH-47は大きく以下のように分けられます。 ・陸上自衛隊 CH-47J ・陸上自衛隊 CH-47JA ・航空自衛隊 CH-47J ・航空自衛隊 CH-47J(LR) しかし上に記したものはあくまでも制式名でしかありません。自衛隊では随時様々な改修を行っているので厳密に分類すると以下のようになります。 ・陸上自衛隊 CH-47J ・陸上自衛隊 CH-47JA 無印 ・陸上自衛隊 CH-47JA 国際貢献仕様 ・陸上自衛隊 CH-47JA 後期型 ・陸上自衛隊 CH-47JA 国際貢献仕様 新型エンジン搭載型 ・陸上自衛隊 CH-47J 勢力維持改修機 ・航空自衛隊 CH-47J ・航空自衛隊 CH-47J(LR) 無印 ・航空自衛隊 CH-47J(LR) 新型エンジン搭載型 ・航空自衛隊 CH-47J(LR) 後期型 ・航空自衛隊 CH-47J(LR) 後期型 新型エンジン搭載型 正式な名称はありませんので、私が独断で名前を付けさせてもらいました。便宜上、通常形態のCH-47JA、CH-47J(LR)はCH-47JA無印、CH-47J(LR)無印とさせていただきます。ただの「CH-47JA」や「CH-47J(LR)」と表記した場合は無印や派生型関係なく表すものとします。次にこれらの機体の違いについてみていきたいと思います。 2.JとJA まず陸上自衛隊のCH-47JとCH-47JAの違いから説明しますと、主な外見上の相違点は、 ・JAには気象レーダーがある(緑枠) ・JAにはFLIR(赤外線暗視装置)がある(緑枠)(普段は外していることが多い) ・JAはスポンソンが大型化された(青枠) FLIRは近年、陸上自衛隊では「CH-47JA用近距離暗視装置」の名称で調達が行われています。 3.無印と国際貢献仕様 防塵フィルターとはEngine advanced protection system、通称EAPSのことです。この装置があると砂漠などでの活動で、ローターが巻き上げた砂などをエンジンが吸い込んでしまう確率を下げることができます。普通のエンジンの吸入口には円錐型のカバーがついていますが、この部分にEAPS(円筒型)を取り付けます。また、エンジン吸入口の前部のレールはEAPSを固定するためのものです.。 (青枠の円筒状の装置がEAPS 写真:第1ヘリコプター団HP掲載画像を加工)
CH-47JA無印とCH-47JA国際貢献仕様の主な外見上の相違点は、 ミサイル警報装置はAN/AAR-47A(V)2を装備していると思われ、前部ローター基部と後部ローター基部に搭載されています。機首と後部ローター基部に搭載されている別の黒い装置はAN/AAR-47(V)2またはAN/AAR-47(V)1というミサイル警報装置で、陸上自衛隊の全CH-47J/JAに装備されています。 ・AN/AAR-47(V)1は赤外線探知ミサイル警報装置です。CH-47Jと一部のCH-47JAが使用していると思われます。 ・AN/AAR-47(V)2は赤外線探知ミサイル警報装置にミサイルレーザー警報装置が追加されたモデルです。 ・AN/AAR-47A(V)2は紫外線探知機をAN/AAR-47(V)2に追加したモデルで前より性能が向上しました。また、コンピューターが自動的に脅威の分析をしてフレアを発射するそうです。自衛隊機は普段はセンサを取り外していて、架台にキャップをしていることが多いです。 ・EAPSを装備している(写真のようにEAPSを外した、通常形態の時もあるので注意) ・EAPS装着用レールがある ・チャフ・フレアディスペンサー(AN/ALE-47(H))がある ・ミサイル警報装置AN/AAR-47A(V)2がある (CH-47JA 国際貢献仕様 写真:筆者撮影)
4.国際貢献仕様と後期型(新型と従来型エンジンの見分け方) CH-47JA後期型とは私が今回勝手につけた名称で、CH-47JAの52976号機以降の機体、つまり2012年度以降に自衛隊がメーカーから受領した機体のことを指します。CH-47JA後期型はCH-47JA国際貢献仕様と同じ装備を搭載しています。CH-47JA国際貢献仕様と異なる点は新型エンジンを搭載していることです。今まではすべてのCH-47J/JA/J(LR)でT55-K-712というエンジンが使われてきましたが52976号機以降はT55-K-712Aという高出力化した新型エンジンが搭載されています。 新型エンジンと従来エンジンの見分け方は排気ノズルのモールドの本数とノズル内の形、そして排気ノズルの色にあります。 ・従来型エンジンには排気ノズル側面に2本しかモールドがありませんでしたが、新型エンジンには3本のモールドがあります。 (左:従来型エンジン 右:新型エンジン 写真:筆者撮影)
・従来型エンジンには排気ノズル内側は何もありませんでしたが、新型エンジンにはノズルの内側にもう一つノズルがあって、二重になっています。 (左:従来型エンジン 右:新型エンジン 写真:筆者撮影)
・従来型エンジンの排気ノズルは銅のような色、新型エンジンは銀色や金のような色となっています。5.後期型と国際貢献仕様新型エンジン搭載型 CH-47JA国際貢献仕様新型エンジン搭載型とは文字通り、CH-47JA国際貢献仕様に新型エンジンを搭載した機体で、CH-47JA後期型と全く同じです。なぜ分けたかというと、CH-47JA後期型は自衛隊への納入時から新型エンジンでしたが、CH-47JA国際貢献仕様新型エンジン搭載型はそもそも旧型エンジンだったCH-47JA国際貢献仕様に新型エンジン換装改修を行った機体だからです。外見上はCH-47JA後期型と全く違いはありませんが念のため分けておきました。 CH-47JA無印→CH-47JA国際貢献仕様→CH-47JA国際貢献仕様新型エンジン搭載型......と計2回の改修が行われています。 6.勢力維持改修機 CH-47J勢力維持改修機とは老朽化したCH-47Jに大規模な改修を行い、機体寿命の延長を行う機体のことです。初めて予算計上されたのが平成25年度ですので、今は工場で改修作業の真っ最中と思われます。既に4機分が予算計上されています。この機体は新型エンジンへの換装やスポンソンの大型化、防弾装甲版の装着などが盛り込まれていてCH-47JA相当の機体になると発表されています。この記事で言うCH-47JA後期型・CH-47JA国際貢献仕様新型エンジン搭載型相当の機体になると思われます。現在のCH-47Jから改修後はその名前が変わるかは不明です。また、この改修により機体寿命は新造機と同程度になるうえ、1機当たりの改修コストは約36億円とされています。(CH-47JA新造機は1機当たり約60億円) 平成27年度予算ではMV-22オスプレイ5機分の予算が計上されるなど、UH-Xやその他ヘリの更新の問題もあり、ますます陸上自衛隊のヘリコプターの予算は厳しくなるだろうと思われます。その点を踏まえるとこれからはCH-47JAは新規調達ではなくCH-47J勢力維持改修機での調達になっていくだろうと思われます。 7.無印の新型エンジン搭載機 2015年春現在、陸上自衛隊ではCH-47JA国際貢献仕様新型エンジン搭載型・CH-47JA後期型以外、つまりCH-47JA無印で新型エンジンが搭載された機体はありません。CH-47JA国際貢献仕様への搭載改修が行われている真っ最中なので、CH-47JA無印の新型エンジンへの換装は先になると思われます。EAPSは異物からエンジンの損傷を守ってくれる一方、エンジン出力が低下するという副作用があるのでCH-47JA国際貢献仕様の新型エンジン化が急がれます。また、新型エンジン搭載機は2014年秋において、木更津の第1ヘリコプター団にしか配備されていなかったのも興味深い点ではあります。 ちなみにCH-47Jへの新型エンジンの搭載改修予定はありません。CH-47Jで新型エンジンが搭載される予定なのはCH-47J勢力維持改修機のみです。 8.航空自衛隊 航空自衛隊ではCH-47Jを運用していましたが今は全機退役していると思われます。航空自衛隊CH-47Jは陸上自衛隊CH-47Jと違い、AN/AAR-47(V)2ミサイル警報装置を装備していません。しかし機体側面ドア上部に機外ホイストを、機首下にはミラーを装備しています。また、陸上自衛隊の機体とは迷彩塗装が異なります。 航空自衛隊CH-47J(LR)後期型はCH-47JA(LR)無印にカメラとミサイル警報装置が装備された機体のことです。CH-47J(LR)後期型は77-4497号機以降の機体を指します。このカメラは陸上自衛隊のCH-47JAに装備されているFLIRとはちがい、赤外線装置も搭載しているものの機体下部の吊り下げ貨物を監視するためのカメラだそうです。CH-47Jではミラーで監視していました。日頃から物資輸送が任務の空自CH-47特有の装備といったところでしょうか。しかしCH-47J(LR)無印にはカメラもミラーついていないようです。 また、機首にAN/AAR-47(V)2ミサイル警報装置の本体は搭載されておらず、架台だけというのはCH-47J(LR)無印と同じですが、CH-47J(LR)後期型からは機首下部にもAN/AAR-47(V)シリーズ用の架台がついており、本体が搭載されているのも確認できます。(写真①では本体が取り外され、キャップがついている) 航空自衛隊CH-47J(LR)後期型新型エンジン搭載型は、既存のCH-47J(LR)後期型の従来型エンジンを新型エンジンに換装する改修を行った機体です。
また、航空自衛隊CH-47J(LR)新型エンジン搭載型は、既存のCH-47J(LR)の従来型エンジンを新型エンジンに換装する改修を行った機体です。 航空自衛隊のCH-47J(LR)は納入時から新型エンジンだった機体はなく、納入後の定期検査時などに新型エンジンへの換装改修を受けています。また、航空自衛隊のCH-47J(LR)後期型新型エンジン搭載型・CH-47J(LR)新型エンジン搭載型にはEAPS装着レールは装備されていません。 陸上自衛隊CH-47JAは納入時から全機FLIRを搭載していますが、航空自衛隊はCH-47J(LR)後期型のみ納入時からFLIRを搭載しており、非FLIR搭載機は新型エンジン換装改修の際に一緒にカメラ搭載改修もやるのかと思ったのですが、それは無いようです。
9.Q&A Q:次の写真のCH-47JAはEAPSを搭載しているでしょうか?
(CH-47JA 出典:第1ヘリコプター団HP)
A:正解はYESです。エンジン下部の突起物がEAPSの特徴です。また、通常のカバーの網目が見えないことからもEAPSを搭載していることが判断できます。 (CH-47JA 写真:第12旅団HP掲載画像と第1ヘリコプター団HP掲載画像を加工)
10.機体一覧 2014年防衛白書によれば2014年3月31日までの陸上自衛隊のCH-47J/JAの保有数は58機、航空自衛隊のCH-47Jの保有数は15機となっています。 ・陸上自衛隊CH-47J ・52901 退役 朝霞駐屯地に設置 2009年退役 総飛行時間5500h ・52902 ・52903 ・52904 退役 習志野駐屯地に設置 ・52905 ※退役 富士に設置との情報有り(確認中) ・52906 ・52907 退役 宇都宮駐屯地に設置 中央即応連隊所管 震災により2011.3.14退役予定が2011.7.11退役となる ・52908 ・52909 退役 松本駐屯地に設置 原発への初空中放水任務実施 ・52910 ・52911 退役 木更津駐屯地に設置 ・52912 ・52913 ・52914 ・52915 ・52916 御嶽山災害派遣 ・52917 ・52918 御嶽山災害派遣 ・52919 ・52920 ・52921 ・52922 ・52923 ・52924 ・52925 ・52926 ・52927 ・52928 ・52929 ・52930 ・52931 ・52932 ・52933 ・52934 計29機運用、計5機退役(2014年春時点) 29機中4機は勢力維持改修予定。勢力維持改修初号機の納入は2016年度ではないかと推測。 ・陸上自衛隊CH-47JA ※ヘリ団:第1ヘリコプター団所属を確認 ・52951 ・52952 ・52953 ・52954 国際貢献仕様 パキスタン派遣任務 ヘリ団(2014秋) ・52955 国際貢献仕様 ヘリ団(2014秋) ・52956 国際貢献仕様 パキスタン派遣任務 ヘリ団(2014秋) ・52657 ・52958 ・52959 ・52960 ・52961 ・52962 国際貢献仕様新型エンジン搭載型 ヘリ団(2014秋) ・52963 2007年急患輸送任務中に墜落 ・52964 ・52965 国際貢献仕様 ヘリ団(2013.6) ・52966 御嶽山災害派遣 ・52967 国際貢献仕様新型エンジン搭載型 ヘリ団(2014秋) ・52968 国際貢献仕様 ヘリ団(2014秋) ・52969 国際貢献仕様新型エンジン搭載型 パキスタン派遣任務 ヘリ団(2014秋) ・52970 ・52971 ・52972 ・52973 ・52974 ・52975 ・52976 後期型 ヘリ団(2014秋) ・52977 後期型 ヘリ団(2014秋) ・52978 後期型 ヘリ団(2014秋) ・52979 後期型 ヘリ団(2014秋?) ・52980 後期型 ヘリ団(2014秋) 計28機運用、計1機損失(2014春時点) ※2010年に不時着水をして大破した機体があったが無事修復された。 ※2015年以降受領・受領予定の機体 ・52981 後期型 ヘリ団(2015.2) ・52982 後期型 2015年度受領予定 ・52983 後期型 2015年度受領予定 ・52984 後期型 2015年度受領予定 ・52985 後期型 2016年度受領予定 ・52986 後期型 2016年度受領予定 ・航空自衛隊CH-47J ・67-4471 ・77-4472 ・87-4473 ・87-4474 ・97-4475 ・97-4476 ・07-4477 ・07-4478 ・17-4479 ・17-4480 ・27-4481 ・27-4482 ・37-4483 ・37-4484 ・47-4485 ・87-4486 全機退役と思われる ・航空自衛隊CH-47JA(LR) ・27-4487 ・27-4488 ・37-4489 ・47-4490 ・57-4491 ・57-4492 ・57-4493 ・57-4494 ・67-4495 ・67-4496 新型エンジン搭載型 (2014年に換装) ・77-4497 後期型 ・97-4498 後期型 ・07-4499 後期型新型エンジン搭載型 (2013年に換装) ・17-4500 後期型新型エンジン搭載型 (2014年に換装) ・37-4501 後期型 計15機 ※筆者撮影画像の無断転載を禁じます。本文を引用する場合は必ずURLを明記してください。 |
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2015/4/24(金) 午後 10:23
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2015/4/23(木) 午後 6:45
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2015/4/21(火) 午前 8:27
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2015/4/17(金) 午後 10:25
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2015/4/15(水) 午後 11:58
はじめまして、とても分かりやすい解説ありがとうございます。
お気に入り登録させていただきます。
2015/5/3(日) 午後 0:40 [ KYモデラーズ ] <<コメントに返信する
初めまして。自衛隊チヌークのまとめはありそうでなかったので、ワタシも自分のwebの更新時に参考にさせていただきたいと思います。
ところでひとつだけ指摘させていただきますと、空自のLRのアゴの下に付いている黒い円筒形のものはFLIRではなく、機体下部に吊した貨物を監視するためのカメラです。LRになってバックミラーが付けられなくなったために、代わりに付けられたのだそうです。
2015/5/3(日) 午後 6:26 [ kwat_01 ] <<コメントに返信する
> kwat_01さん
読んでいただきありがとうございます。拙い文でしたがご参考になれば幸いです。また、カメラの情報をありがとうございます。このような記事を書いておきながら私自身理解が不足していることがありお恥ずかしいです。これからもご指導いただければうれしいです。
2015/5/3(日) 午後 7:15 [ poripate ] <<コメントに返信する
> KYモデラーズさん
ありがとうございます。KYモデラーズさんのツイッターもよく拝見させてただいております。大変素晴らしい作品ばかりで感動しております。
2015/5/3(日) 午後 7:18 [ poripate ] <<コメントに返信する