田原総一朗×若宮啓文(朝日新聞元主筆)  憲法記念日スペシャル対談 前編 「安倍叩きは朝日新聞の社是」発言の真実

2015年05月02日(土) 田原総一朗
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安倍首相も「社是発言」を国会答弁で引用

田原: 小川榮太郎氏も百田尚樹氏も、朝日新聞のことを面白くないと思っているんですよ。ハッキリ言うと朝日新聞は時の政権に厳しいですよね。安倍政権だけに限ったことではなくて、時の政権全体に厳しい。全国紙で言えば、朝日新聞と毎日新聞が今の政権に厳しくて、読売新聞と産経新聞は今の政権に優しいというか、支持しているというのがハッキリカラーとしてありますよね。だから、小川氏にしても百田氏にしても、それが面白くないんだと思います。

若宮: それはそういうことでしょう。だからといって、事実かどうかをまったく確かめずに公の場所で言ったり書いたりしていいのかということなんですね。

田原: すでにもう、若宮さんが三宅さんにそう言ったということが「事実」として広まっているわけね。

若宮: 百田さんたちは慰安婦問題で吉田清治の証言を載せた朝日新聞を散々批判しているわけですよね。吉田証言を真に受けて、裏もとらずに載せてけしからんと言っているわけでしょう。だったら「若宮なら言いそうだ」とか「朝日新聞ならそんな社是がありそうだ」というだけで、安倍叩きが朝日新聞の社是だと若宮が言ったなんてことを堂々と広言するのはどうなのか。全くフェアじゃないということですよ。

田原: 三宅さんは公的に否定していないんでしょう?

若宮: 否定はしていないです。そのまま亡くなりました。だから、「三宅さんがそう言った」というなら仕方がない。それは言ったのは事実だからしょうがないんです。だけど、僕は全面否定しているわけだから「三宅さんがそう言った」というなら「若宮はこう言っている」というのを言わなければおかしいのですよ。

田原: 三宅さんはもう亡くなっちゃったからしょうがないんだけど、若宮さんが三宅さんに抗議したときに、三宅さんは「そんなことは言ってない」と否定はしなかったんでしょう?

若宮: 三宅さんは、「若宮さんは冗談のつもりだったのかもしれないが、小川君に言ったら、あんなふうに書くとは思わなかった。悪かったな」と言っていた。ご本人がそう思い込んでいるのだから、それ以上は仕方ないんですよ。それだけのことですよ。

田原: ハッキリしているのは、若宮さんが「社是」なんてことを言いっこないだろうってことなんですよね。だから僕は若宮さんが三宅さんに冗談半分で言ったのかな、と思ったんだけど、若宮さんのほうはそんなことを言ってないんですね?

若宮: いや、まったくそういう記憶はない。冗談でもそんなことを言うはずがない。

田原: じゃあ、三宅さんが勝手にそう思い込んで言っちゃったんだ?

若宮: だから、何かと混同したんじゃないですかね。別の人の言ったことと取り違えたのかもしれないですね。

田原: この話は、安倍晋三首相までが信じて引用しているんですね。

若宮: そうなんですよ。僕は安倍さんには間接的にだけど、「三宅さんがこう言ったとこの本に書かれているけれど、事実とは違いますし、こういうふうに抗議もしていますよ」と伝えたんですよ。

田原: 反応はありましたか?

若宮: いや、何もなかったです。それどころか国会の質疑でもこの話をしたので驚いた。私の固有名詞は出していないですが、安倍さんは答弁の中で「朝日新聞は幹部が『安倍政権打倒は朝日の社是である』と言うような新聞ですから」と言ったのです。そのときに朝日新聞は紙面にも「それは違う」と載せているんですよ。社説にも書いたんです。

小川氏に書かれたのが一回限りですんだのなら、私もそんなにグズグズ言わないんですが、あちこちでこれが喧伝されて百田さんには「有名な話ですが」とまで言われているわけですから、これはきちんとしておかないといけない。僕も「そんなことを言ったんですか」とよく聞かれるんですが、常識で考えてもそんなことがあるわけがないでしょう。

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