ことしはソチ冬季オリンピックや2014FIFAワールドカップブラジル大会など世界的に大きなスポーツイベントが数多く開催されている。それらを観戦していると、海外のトップアスリートの歯並びのよい選手がほとんどであることに気付かされる。
歯には物をかむ、発音を助けるなどのさまざまな機能以外に「全身を支える」という重要な全身的機能があり、この機能がスポーツパフォーマンスに大きく関係している。
かみ合わせは全身の筋肉や骨格に重要な影響を与え、かみ合わせが悪いと、まず顎のまわりの筋肉に無理な力がかかってくる。すると、これらの筋肉とつながっている首すじの骨や筋肉にも次第に影響がおよび、体で一番重い頭を支える首はもちろん、腕や肩、背中や腰にも影響が広がり、わずかなかみ合わせのズレが、背骨をゆがめ、ボディーバランスを崩しスポーツ選手が実力を発揮できないこともある。
本来持っているパフォーマンスをすべて発揮するために、かみ合わせが非常に重要なこ
とを海外のアスリートたちは知っている。
しかしこれはアスリートだけではなくすべての人に当てはまることであり、かみ合わせが悪いとボディーバランスが悪くなるだけでなく、歯の三大喪失原因である歯周病やう蝕、歯の破折にも大きく関連する。
かみ合わせのズレを直す方法に歯科矯正治療がある。矯正治療は歯並びの見た目を直すという認識がまだまだ大きいと思うが、見た目の美しさは、いわゆる「機能美」であり、本来の目的は歯が本来が持っているパフォーマンスをしっかり発揮できるようにし、また余分な負担を軽減し、生涯にわたって自分の歯でかむことができるようにすることが最大の目的である。
しっかりかみ合った歯は咬合力を分散し、本来持ったパフォーマンスを発揮する。咬合力の分散を簡単にたとえるならば、重いものをみんなで運んでいるときに、数人が手を離してしまうと残りの人の負担はものすごく大きくなり、つらい思いをし、最悪運んでいる物を落としてしまうかもしれない。これと同じようなことが口の中でも起こる。正しくかみ合っていないと、一部の歯に力が集中し、過度の負担により歯を失う原因となり、残された歯は前述のように負担過多となりどんどん失われ咬合が崩壊する。また「かめている」と思っていても、実はしっかりとかめていないことが多く見られる。これもたとえるならば、つるでできた一人で渡るのが精いっぱいの橋と、大きな国道に架かる橋では同じ橋でも明らかに機能が違う。しっかりとしたかみ合わせは健康な生活を送るのに重要なウェイトを占めている。矯正治療は若いうちでなければできない治療ではないので、この機会にかみ合わせのチェックに歯科医院で受診してほしい。