3-27 剣の完成と労働に対する報酬のお話
運営さんに怒られたので、えっちな描写を削減しました。
ほんの二行ほどですが、念のためです。
カァンッ! カァンッ! カァンッ!
オレはインゴットを金床に乗せて、ハンマーで叩く。
焼き立てのインゴットを壊さないよう加減しながら、強く静かに叩き続ける。
「叩き方が、素人ではないのじゃ……!」
「はうぅ…………!」
のじゃーたちが感嘆の声を漏らし、シャルルはなんか、オレへの好感度をアップさせた。
オレがカンッと打つたびに、赤いインゴットはただの金属塊から、『刀身』と呼べるそれに近づく。
オレはひたすら叩き続ける。
刀身が冷えてきたら火にくべ直してやわらかくして、
カンッ! カンッ! カンッ! カンッ! カンッ! カンッ! カンッ!
大まかな形ができあがったら、小さなハンマーに変える。
微妙な出っ張った釘を打ち直すような感覚でコツコツと叩き、微妙なゆがみを修正していく。
「よし……」
剣の形ができあがった。
刃渡り一メートル級のロングソードの刃の部分だ。
「かなりの腕なのじゃ……」
お師匠のじゃーが、渋い顔でうなった。
「それじゃあちょっと、カーテンとか閉めてもらえるか?
次の作業は、暗いところでしたい」
のじゃーたちは答えずに、お師匠を見た。
「わかったのじゃ……」
お師匠は、ほかののじゃーに指示を出し、カーテンなどを締めさせた。
部屋が一気に暗くなり、炉の中の炎ひとつが、イフリートの魂のように輝く。
オレは剣に手を当て、素材の声を肌で聞く。
どのくらいの温度でどのくらい熱すればよいか、剣に直接聞いていく。
オレは剣に意識を溶かし、剣を深く理解した。
剣を長いペンチのような道具で摘まみ、炉の中に入れる。
銀色の剣が、炎に包まれ光り輝く。
夜のように暗い世界の中で、たったひとつ輝く炎。
オレはその炎を見つめ、今度は炎に意識を溶かす。
炎と化して剣に触れ、剣の声を肌で聞く。
今のこの瞬間、炎はオレで、オレは炎だ。
フツフツフツフツ。
パチパチパチ。
自ら爆ぜる、炎の音を聞いていく。
闇の中で光り輝く、剣の色を双眼で見つめて――。
(ここだっ!)
オレは剣を引き抜いた。
紅く輝く美しい剣を、すぐさま水に浸して冷やす。
ジュワワァ、ジュワアァ…………。
カメの水が沸騰し、激しい蒸気を発した。
オレは剣を水から出して、指でコツコツと叩く。
グッド。そしてエクセレントだ。
元のやつより、かなり硬くなっている。
「うまく焼けたようじゃが、それでいったいどうするのじゃー……?
ヌシが焼いた剣は、ちゃんと折れにくくなっているのじゃー……?」
「そんなことはないさ。今さわった限りでも、やっぱり折れやすい感じはしてる」
オレはあっさりと認めた。
ゆえに終わりではない。
炉の中の火を金属製のヘラで消し、残り火がくすぶっているだけの状態に変える。
そしてその熱い空間の中に、オレの剣を差し入れてあぶる。
「なにをしているのじゃー……?」
「焼き戻しだよ」
「やきもろし…………のじゃ?」
「一部の金属には、超高温で熱した直後に水で冷やすと、硬くなる性質がある」
「知ってるのじゃー……」
「ただそれをやると、アンタが言った通り、折れやすくもなる」
「それも知っているのじゃー……」
「でも硬くなったあとにそこそこの温度で熱してやると、『硬いけど折れにくい』っていう状態になるんだよ」
「のじゃあ……?!」
のじゃーはまるで、魔法の存在を知らされた地球人のような顔をした。
言葉の意味は理解できても、真実であるとは信じ切れていない感じだ。
無理もない。
焼き入れは、焼いた直後の水で急激に冷やす技法だ。
それゆえに、自力で発見できる可能性は高い。
しかし焼き戻しになると、焼いた剣をしっかりと冷やしたあとに、わざわざ熱し直すという工程が必要になる。
しかも温度が高すぎた場合、硬くした分がパーになる。
焼き入れに比べ、自力で発見するのが難しいのだ。
そしてこの焼き戻しを知らないと、焼き入れのほうも『硬くはなるが折れやすくなる邪法』として記録されてしまう。
そこに先ほどののじゃーたちのような、『手間をかけるほどよくなる』という信仰が入ると、停滞は止まらない。
よい剣を作るために手間をかけるのではなくて、手間をかけるために手間をかけるようになってしまう。
焼き戻しが終わった。オレは剣を金床の上に置く。
焼き入れのそれと違って、焼き戻しの剣は時間で冷やすのが基本だ。
頃合いを見計らい、小さなハンマーを手に取った。
剣の表、裏、背中をコツコツと叩き、焼き入れのせいで生まれたゆがみを矯正していく。
ゆがみが取れたら剣を砥石にピタリとつけて、ゆっくりとこする。
シャー、シャー、シャー。
砥石と剣がこすれるたびに、鋭い音と鈍色の粉が舞った。
オレは途中で砥石を変えて、ひとこすりひとこすり、丁寧に研いでいった。
「よし……」
完璧に研げた。
オレは試し斬り用のスペースに移動して、鋼鉄のヨロイを着た人形の前に立つ。
剣をパチリと鞘に納めて――。
「ハアッ!」
人形は、ヨロイごと真っ二つになった。
切断面も完璧に近い、完璧な一撃だ。
「あとは魔法液でコーティングして、刃こぼれしにくいようにすれば完璧だな」
「のじゃあ……」
オレに懐疑的だったお師匠のじゃーも、ほうっと呆けてうなずいた。
そして剣ができた。
名前で言うと『ただのロングソード』になってしまうが、性能的には超一線級のはずだ。
オレは剣を鞘に納めて、シャルルへと渡す。
「それじゃあ、受けとれ」
「はうぅ…………」
「どうした?」
「シャルルのシャルルの地方では、男性の方が女性の方に剣を渡す行為には、『オマエはオレのモノだから、貞操はこれで守れ。イザとなったら自害しろ』という意味がございまして…………」
「それで剣の店に入った時から、微妙に様子がおかしかったのか」
「はい……」
「だけどオレが渡すのは、そういう意味じゃないぞ?
特に自害とか絶対すんなよ?」
「わかっているであります! わかっているでありますが……」
シャルルは剣を受け取ると、ギュッ~~~~~~~~~っと抱きしめた。
「頭ではわかっても、うれしい気持ちは抑え切れないのでありますぅ~~~~~~~~~!!」
叫ぶシャルルのお尻の尻尾は、パタパタパタパタ振られまくった。
このシャルル、本当にオレのことが大好きだな。
かわいい。
(くい。くい。)
「ん?」
(きゅっ………。)
リアがオレの袖を引き、真正面からオレに抱き着いた。
「どうしたんだ?」
「………ヤキモチ。」
素直につぶやいたリアは、オレの胸板に顔をうずめて、顔をすりすりこすらせた。かわいい。
ふたりがあまりにもかわいすぎて、オレは気持ちを抑え切れなかった。
だからそのままふたりを連れて、近くの宿に直行した。
家まで戻ってもよかったのだが、そこまで耐えることもできなかった。
家があるのに宿に入ってる段階で、リアもシャルルもされることがわかったのだろう。
ふたりそろって頬を染め、シャルルはオレの腕に、リアはオレの体に引っついた。
そしてたっぷり楽しんだ。
剣を本気で打ったせいで、神経が昂ぶっていたのだろう。行為はかなり激しくなった。
とにかく欲望の限りを尽くした。
そして不平等にならないよう、帰宅したあとはレミナやミーアたちもかわいがった。
次回更新は九月八日ぐらいの予定です。

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