【コラム】李完九首相離任式と韓国人が期待する光景

 李首相は、就任前に親しくしていた成完鍾(ソン・ワンジョン)京南企業前会長を限りなく恨んだのかもしれない。あるいは、成前会長との関係をもっと早く清算できなかった自らを責めたのかもしれない。成前会長が地位を失うや、誰も関わろうとしなかったのと同じように、今度は李首相に対しても誰も見向きもしなくなったことで、世の中とはそういうものだと実感したのかもしれない。あるいはこの際、国会議員も辞職して、身を守るものが何もない状態で、検察の捜査に臨もうと考えているのかもしれない。そうすることで、李首相に同情する人も出てくるかもしれないと思ったのではないか、と想像してみたが、離任式ではそのような気配は感じられなかった。

 李首相は世間に対し、自らを恥じるのではなく、これからいかにして政界で復権できるのか、暗中模索していたように思える。首相を辞任し、国会議員として党に所属すればどうなるのか。検察から出頭を求められたら、どう対処すればよいのか。来年の総選挙にまた出馬することはできるのだろうか。そのようなことを思い苦悩していたのだろう。そうすることにより、政治工学的な次元で再起に向けた準備をしていたようにも思える。

 李首相は金品の授受を否認しているが、本当の真実はどこにあるのか、それを明らかにする道は遠い。それでも、何か悪いことが発覚し、茫然(ぼうぜん)自失の状態に陥っている人はまだ、人間らしいにおいが感じられる。たとえ首相であっても、当初は心の余裕がなく、無駄口をたたくこともあり得る。だが私たちは「ああ、彼もやっぱり人間なんだ」と思い、あわれみを感じられるような告白や光景を見聞きしたいだけなのだ。

キム・グァンイル論説委員
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