「日系なのに反日」とか言うこの図を監修したやつ誰だよ。フジテレビのスタッフ?これこそ炎上案件じゃないの‥。 pic.twitter.com/waw6tvUvfw
— 折原ナナナ (@ORIHARA7NA) 2015, 4月 30
フジテレビ「みんなのニュース」 マイクホンダ議員は韓国系住民の票目当ての反日政治家だそうです。 pic.twitter.com/BakAJf2sJU
— Tanaka Isao (@yokatopia) 2015, 4月 30
この問題がやたらと拡散している。
ホンダ議員はネトウヨの間で「反日議員」認定されており、その歴史は2000年代初頭にさかのぼることができる。彼らの間ではフジテレビは「売国放送」とされているが、今回の件ではなぜか大喜びで賞賛されている。
どう考えてもこの「偏向報道」はおかしいだろう。日系人差別を煽るものだ。
ネトウヨはよく「朝鮮人は出て行け」と言いたがり「朝鮮人だけが問題だ」と言っている。だが、実際には、帰化した韓国系日本人(たとえばサッカーの李忠成選手や民主党の白真勲参院議員)も反日的だと理由をこじつけてその排斥を掲げている。実際には帰化手続きはやたら煩雑で、もし仮に反日なら認められないはずなのだが、そういう理性は彼らには通用しないのだ。
では「日本民族至上主義」なのかというとそうでもない。このように日系人差別と言う概念もあるからだ。
日系人は戦前から戦後期にかけて日本を離脱し、南北アメリカ大陸に渡った人たちである。宣伝に煽られ、いざ行ってみればそこは過酷な環境であり、ギラギラと太陽の日差しを浴びながらただっぴろい陸地を開拓に勤しんだ。
移民の理由は大抵が農村の貧困などであり、福島や広島出身が多い。特に多いのは沖縄出身者である。ただでさえ内地との格差があるのに、戦前には「ソテツ地獄」があり、戦後期には沖縄戦の後遺症があり、生きるのに必死な彼らが渡ったのが異国の地だった。
ホンダ議員のような日系アメリカ人は特に受難の歴史がある。戦争当時はアメリカから差別され、強制収容所にぶち込まれた。もちろん棄てた側である日本からも何も援助されず、苦難を生きた人である。日本に対する複雑な感情があるのは事実だろう。
私は確かに、ホンダ議員の掲げる政策は日本の国益と矛盾するものが多いと思う。故ダニエルイノウエ議員とは違うのは明らかだ。しかし、それを一方的な日本側の都合を押し付けることで反発することは筋が違うと思うし、ましてや「日系人なのに反日」という紹介の仕方は、民族をひとくくりにした明らかな差別扇動に他ならないだろう。人類全体の問題である人権については、客観的立場で考える必要がある。その上で、日本側の長い目で見た国益や世界秩序を意識した上で、ああいった立場を取る議員と日本側は話し合いをするべきではないかと思うのだ。
フジテレビはネトウヨメディアではない。国民全体が見る地上波放送だ。そうした媒体でこういうことが放送できてしまうということからお察しのように、こういった偏見や差別の類は、何も特殊なネトウヨに限ったことではなく、実はわれわれ日本人の根底に通じるものである。開き直り、その「負の本質」に依存しまくればネトウヨになる。これはなにも日本だけがおかしいのではなく、白人社会における黒人差別とかもそういうものなのだ。つい半世紀前までテレビの「ミンストレル・ショー」が国民的娯楽だったのもアメリカの現実だ。「憎悪」は普遍性を帯びるものだ。
本来あるべきメディアは、そういうものを煽るのではなく、むしろ正しい方向に導く報道だ。あのフジテレビの報道を英語字幕付きで海外に拡散すれば、きっと多くの人がどよめくに違いない。先進国であるはずの今の日本のテレビが、その程度の古いレベルなのである。
それにしても、日本のヘイトスピーチとか民族差別は、なぜ近い存在にばかり向かいがちなんだろうか。遠くの外国から見れば区別のつかないような同じ肌の色と顔付きをした韓国人や中国人への差別だったり、実際同じ民族である日系人の差別である。きまって同質性の欠落、つまり「純血な日本民族で日本国籍保有者」に及ばないことを差別したりするのだ。悪意を持たない人でさえもこの思考の枠組みを持っている人が意外と多い。
他者を他者として尊重して理解し、多元性に富んだ世の中の方が理想的なはずだが、そういう前向きな発想をできない愚民をどうにかしないとまずい。人種差別撤廃法案を作り、極端な分子を牢屋にぶちこむようにして恥ずかしい存在を委縮させない限り、難しいのだろうか・・・