ようやく国内販売台数が100万台を超えたPS4。
先日、3月の国内家庭用ゲーム市場の速報値が、ファミ通から発表された。
それによれば、「ドラゴンクエストヒーローズ」「龍が如く0」「Bloodborn」など、大作ソフトが次々登場したPlayStation4(以下PS4)が、20万台を売り上げてハードウェア部門の首位を獲得したそうだ。
PlayStation 4 ジェット・ブラック 500GB (CUH-1100AB01)
- 出版社/メーカー: ソニー・コンピュータエンタテインメント
- 発売日: 2014/09/30
- メディア: Video Game
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正直いって、ドラゴンクエストヒーローズは自分の予想を少し下回った。もう少し楽天的に考えていて、PS3とPS4合算で100万本は行くと思っていたからだ。実際には80万本強といったところだった。
それでも、この3月攻勢の甲斐あって、PS4の国内販売台数も135万台弱と、どうにか海外ローンチ時のワールドワイドの数字を超えることが出来た。日本にいると信じられないかもしれないが、PS4発売初日は米国とカナダだけで100万台を売り上げているのだ。この海外ローンチ台数は、あのモンスターマシンとさえ言われたPS2の日本発売時をも上回る数字だったりする。
ちなみに、PS2は三日間で98万台と、いまの国内据え置きゲーム機市場からすれば、考えられない数字を叩きだしている。改めて考えると凄い時代だったんだなぁと思うと同時に、当時は北米に次いで世界第二位の市場規模を誇った、日本ゲーム業界の凋落を感じてしまうのがわびしい。
とにもかくにも、ようやく日本でもPS4はスタートラインに立つ準備ができたといえるだろう。
コナミを巡る喧騒。
いま、日本のゲーム業界では、従来の据え置き・携帯ゲーム機からスマホなどのモバイルへの移行がどんどん進んでいる。
とくに顕著なのがコナミで、据え置きゲーム機で出すゲームは、もう「パワプロ」「ウイイレ」「メタルギア」以外には無いのではないかとさえ言える状態になってしまっている。
この状況を鑑みてか、クリエイターの流出も相次いでいる。
昨年には「悪魔城ドラキュラ」シリーズのプロデューサー、五十嵐氏がコナミを退社していることが判明した。
そして、今年の3月には「ラブプラス」「ときめきメモリアルGirl's Side」などを手がけた、内田氏とミノ☆タロー氏が同時期に退社。
さらには、コナミの看板ゲームの「メタルギア」シリーズの生みの親、小島秀夫氏にまで退社の噂が飛び交った。
さすがに小島氏の退社は即座にコナミが否定している。しかし、本人がいまだ沈黙しているため、真相は闇の中である。
クリエイターは作ってなんぼ。
どうしてこんなに多くの重要人物が退社してしまったり、小島氏ほどの人物に退社の噂が持ち上がってしまうのだろうか?それは、前述のドラキュラシリーズプロデューサーの五十嵐氏についての、下記の記事に集約されていると言えるのではなかろうか。
なお、五十嵐氏は大手企業に在籍中に“作りたいゲームが作れない環境”になっていたそうで、自身が企画したゲームが世に出せないこともあったのだそうだ。五十嵐が大手企業を辞職したのは、“出せてナンボ”のゲーム業界において、当り前の“発売する”ということですらできなくなっていたことも理由のようだ。
いま、日本において「作りたいゲームを作る」というのはとても難しいことである。
現状、日本において据え置きゲーム機は、マーケットボリュームが採算分岐点に達していないため、どうしても前世代機との同時発売、いわゆる縦マルチにならざるを得ない。
PS3世代よりもスペックの上がったゲーム機のポテンシャルを引き出すゲームを遊べないのであれば、わざわざPS4を買うまでもない。なにしろ同じ名前のゲームがPS3で遊べるのだから…というのが、今の日本のユーザーの偽らざる本音だろう。
ワールドワイドでは2000万台を突破してるんだから、そっちで売れるゲームを作ればいいじゃないかと思うかもしれないが、もはや日本のゲーム会社には、ワールドワイドで大ヒットを狙えるフランチャイズが殆ど残されていないのが現状だ。
そんな状況で、「自分の作りたいゲームを日本の大きなゲーム会社で作る」ことが、どれだけ困難かは素人の自分でもわかる。ならば、そんな会社は退社して、自分でゲーム会社を立ち上げてしまおうとか、もっとフットワークの軽い他社へ行こうと考えるのも十分に納得の行く話だ。
そして、ワールドワイドを相手にした場合、そういう需要を十分に受けいれてくれる場所がある。それがSteamだ。
巨大プラットフォームに成長したSteam。
日本に住んでいるとまったくピンとこないかもしれないが、PCゲームの配信プラットフォームであるSteamは、いま凄まじいことになっている。
下記の記事にも書いてあるが、アクティブアカウントは1億2千万を超え、同時接続者数も900万人を超えているのだ。ちょっとした国家並みの規模になっているのである。
しかも、Steamで配信されているのは巨大メーカーのゲームだけではない。
たとえば、下記のゲーム「Banished」は、いわゆるインディーズゲームなのだが、なんと基本的に一人で作り上げた作品なのである。
Banished Gameplay Trailer - YouTube
いまの日本のゲームメーカーで、このジャンルでこれだけのクオリティのゲームをリリースしているところがあるだろうか?否、である。そもそも、こういうニッチなニーズのジャンルには手を出せない状態になっているのが実際のところだ。
だがSteamは違う。
Steamには、完成したゲームを配信するだけでなく、「アーリーアクセス」といって、フルプライスではない少額の価格を付けて開発中のゲームを配信し、その売上をさらに開発費に回すというシステムもある。こういうシステムを設けることによって、参入のハードルを低くし、ユーザーも多様なゲームを楽しむことが出来るのだ。もちろん、開発が途中で頓挫するというリスクも有るのだが…
据え置きか、モバイルか。
世界的にも、スマホで最もゲームにお金をつぎ込んでいるのは日本人だ。
AppStoreの各国のランキングを見てみればわかるが、日本の「トップセールス」の上位は殆どゲームだ。
なので、ゲームメーカーがスマホに力を入れたいのはよく分かる。だが、スマホにシフトすることが、ゲームメーカーとして先進的な戦略なのかと問われれば、そうは思えないというのが個人的な見解だ。
もちろん、会社にとってお金は非常に大切なモノなので、「稼げるタイトル」ならば、スマホだろうが据え置きゲーム機だろうが関係ないという意見はあるだろう。だが、お金だけに目を奪われて、ゲーム会社としての開発スキルを磨くことを怠っては、PS3世代で開いた差は、縮まるどころか開く一方になってしまう。
スマホゲームの隆盛が今後も続くという保証はどこにもない。いまでさえ、玉石混交の様相を呈しているスマホゲームが、今後十数年業界を支え続けるほどの存在になれるとはどうしても思えないのだ。
アイデア重視のスマホゲームは、いつか絶対に飽きられる時が来る。その時に、いざゲームを作ろうと思ったのに、クリエイターが誰も残っていなかった…などということになってしまったら、その時こそ、本当に日本のゲーム業界が終わりを迎える日になるだろう。
そんな日は絶対に来てほしくない。