ネパールで起きた大地震の犠牲者が増え続け、発生から1週間を迎えても被害の全体像がみえない。行方不明者の捜索に加え、避難所や医療施設の不足も深刻になっている。日本を含め国際社会は被災地でいま何が足りないかを見定め、支援を強めるべきだ。
先月25日に起きたマグニチュード7.8の地震では建物の倒壊や地滑りが相次ぎ、死者は1万人に及ぶとの見方もある。ヒマラヤで雪崩も起こり、日本人を含む多くの登山者が巻き込まれた。
国連によれば、被災者は約800万人にのぼり、余震の恐れから屋外での生活を強いられている人も多い。医薬品や飲み水、食料も不足し、衛生の悪化で感染症のまん延も懸念されている。
多くの国が緊急援助隊を送り、がれきに埋もれた人の捜索などにあたってきた。発生から日がたち人命救助は一刻を争う。二次災害や災害関連死を防ぐためにも、支援はこれからが正念場だ。
日本政府は2次、3次の救助隊を準備し、被害の実情に沿った支援を強めるべきだ。安全な避難場所の確保では国内で災害を経験した自治体職員らの知恵を生かせる。公衆衛生や心のケアなどでは民間の専門家の役割も大きい。
長い目で被災地に減災意識を根づかせ、復旧や復興を手助けすることも大事だ。
ネパール周辺はヒマラヤ山脈をつくった地殻変動がいまも続き、地震が多い。だが近年は都市に人が集中し、れんが造りの建物を急ごしらえで増築するなど、地震への備えが薄れていた。
3月に仙台市で開かれた国連防災世界会議では、耐震化など事前の防災投資を増やし、減災につなげることで参加国が一致した。先進国ではほぼ定着した考え方だが、防災より開発が優先されてきた途上国では浸透していない。
日本はこの会議で、途上国で災害に強い都市づくりなどに携わる専門家を約4万人育てると約束した。こうした協力を強め、途上国の減災に貢献すべきだ。