原子力規制委はリスクを無視している-石橋・神戸大名誉教授
2015/05/01 09:47 JST
(ブルームバーグ):日本の原子力規制当局は、九州での地震のリスクと自ら設定した規制基準を無視したとの見方を、神戸大学名誉教授で地震学者の石橋克彦氏が示した。
石橋氏は地震関連の著書や論文で知られ、原子力規制委員会 の決定に対して異議申し立て書を提出している。
同委員会は昨年9月、九州電力 の川内原子力発電所の安全性を承認。年内にも再稼働する可能性がある。2011年の福島第一原発の事故後に導入された新基準の下で再稼働が承認されたのは初めて。国内の原発は安全性審査のため少なくとも1年半にわたって稼働が停止されている。
石橋氏が警告した地震の危険性は過去に少なくとも2回、現実になっている。
同氏は1994年の著書「大地動乱の時代-地震学者は警告する」の中で、建築基準が日本の都市をリスクにさらしていると指摘。翌年に阪神・淡路大震災が発生し6000人余りが死亡した。
97年には日本の科学誌で発表した論文で、大地震による原発災害を「原発震災」と名付けた。その約14年後に福島第一原発事故が発生したが、論文の内容は実際に起きたことを分析しているかのようだ。つまり、大地震によって原発が外部電源を喪失し、津波が原発の防御能力を超える被害をもたらし冷却不能となってメルトダウンに至る、というものだ。
石橋氏は27日に都内で会見し、見通しが現実となったことについて「がっくり来ました。だからこそ二度と今後それを繰り返さないように、ある意味もう一度自分自身が失望するのはいやなのでやっています」と述べた。
同氏は、原子力規制委員会が再稼働承認に向けプレッシャーにさらされており、そのために安全性審査の厳密性が低下していると指摘した。
原子力規制委員会のウェブサイトに掲載された映像によると、田中俊一委員長は28日の定例記者会見で「石橋先生には石橋先生のご持論があるのでしょうが」、当時の委員はそれなりに判断したのだと思うと述べた。
原題:Japan Earthquake Expert Says Nuclear Watchdog Ignoring Risk(抜粋)
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更新日時: 2015/05/01 09:47 JST