2015年5月1日23時01分
物流大手・佐川急便の梱包(こんぽう)資材などを手がける印刷会社「佐川印刷」(京都府向日市)で、元財務・経理担当役員の男性(61)が昨年までの5年間にわたり、グループ会社の資金約80億円を取締役会の決議を経ずに不正流用した疑いがあることが1日、同社への取材でわかった。同社は元役員を業務上横領容疑などで京都地検に告訴する方針。
佐川印刷によると、今年1月、グループ会社「エスピータック」(京都府亀岡市)の口座から多額の資金が第三者に流れていることが外部からの指摘で発覚。社内調査で元役員の関与が分かり、不透明な出金は総額約80億円にのぼった。元役員は調査に「将来の個人的な資金を確保しようと思ってやった」と釈明。その後、依願退職したという。
調査で判明した流出先は、元役員の知人男性が関与したシンガポールでの自動車レース運営資金(約54億円)▽元役員が代表取締役だった別会社の資金(約15・5億円)▽京都府南丹市にあるゴルフ場の買収資金(約7・2億円)▽モンゴルの金融機関の増資に関する資金(約4億円)。
不正流用を知った佐川印刷は資金の回収に着手。元役員の知人男性の会社が買収したゴルフ場運営会社の株式や、元役員が所有していた京都市内のマンションなどについて仮差し押さえを京都地裁に申請し、4月までに認められたという。
元役員は1983年に佐川印刷に入社。03年にグループ全体の資金管理を担う財務・経理部長に就き、12年から担当役員に。子会社の銀行印を自由に使える立場にあり、決裁権限を一手に握っていたという。
佐川印刷の月田豊二副社長は「チェック機能が働かず、資金の管理体制に甘さがあった。申し訳ない」としている。京都市内に自宅がある元役員とは連絡がとれず、海外にいる可能性もあるという。
信用調査会社によると、佐川印刷は1970年創業。従業員は約1370人。2014年4月期の売上高は681億4200万円。佐川急便と、その持ち株会社の会長が計10%以上の株式を保有している。
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