【ホーソーン(米カリフォルニア州)=兼松雄一郎】米電気自動車(EV)メーカー、テスラモーターズは4月30日、家庭やビル、大規模な太陽光発電所などで使える据え置き型の蓄電池を8月にも発売すると発表した。EV向けにリチウムイオン電池を量産してきた経験を生かし、価格を他社製品の半額以下に抑える。この分野で先行してきた日本勢にとって大きな脅威となりそうだ。
米ロサンゼルス近郊のホーソーン空港で会見を開いた。家庭向けと、太陽光発電やビルの非常電源など業務用のリチウムイオン蓄電池を投入する。
最大の売り物は価格だ。家庭向けは、一般家庭の1日の消費電力を賄える容量10キロワット時のモデルで、3500ドル(約42万円)。7キロワット時のモデルは3千ドル(約36万円)。米国では業界の標準的な製品の半分以下の価格となる。流線形のデザインで、赤、黒、白、灰色など色も選べる。最低10年、最大で20年まで延長できる保証もつける。
価格はこの分野に力を入れる日本勢と比べても大幅に割安だ。例えば東芝の製品は容量6.6キロワット時で137万円(補助金制度上の基準価格)。国からの補助金の約50万円を差し引いても、テスラの蓄電池は半値以下となる。
同社が低価格化できるのはEV向けに蓄電池を量産してきた経験が豊富だからだ。容量10キロワット時2千ドルが蓄電池が爆発的に普及する目安とされるが、この水準に近づいた。EV向けで進んできた価格下落が据え置き型でも広がる可能性が出てきた。
同時に発表した太陽光発電やビルの非常電源など業務用の100キロワット時のモデルは、既に電力会社から受注済みという。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は「持続可能なエネルギー社会に向け、欠けていたピースが埋まる」と語り、太陽光発電など再生可能エネルギーの普及を後押しする商品だと強調した。
当面は車載用電池のサプライヤーであるパナソニックの技術を土台に米カリフォルニア州フリーモント市の工場で製造し、今夏の米国向けを皮切りに日本など世界で順次販売していく。6千億円を投じ、米国内でパナソニックと共同建設中の工場が稼働し始める来年以降、生産ペースを上げる。2020年のフル稼働時には、3分の2を自動車向けに、残りの3分の1を据え置き型の蓄電池や他社への販売分とする。
調査会社の富士経済(東京・中央)によると、13年の世界の据え置き型蓄電池市場は593億円だった。20年までに家庭用が約5倍、電力系統向けが10倍に増え、市場規模は3906億円まで拡大すると予測している。カリフォルニア州では24年までに電力会社向けだけで家庭100万軒分の電力消費量、原発1.3基分に相当する需要が見込まれる。
拡大する市場で東芝やNECなど日本メーカーも国内外での受注拡大を狙うが、価格面でテスラが強力なライバルとなりそうだ。
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