噂話

 幸せのピンという
 噂がある

 とあるショッピングモールの
 ゲームセンターの前に
 飾られている
 でっかいボウリングのピン
 そのオブジェを触ると
 幸せになれるという
 たわいもない噂話
 ぼくの住んでいる
 この界隈で
 急速に広まっている
 噂のひとつである

 くだらない話として
 聞き流すのが
 当然なくらいに
 くだらない話としか
 言いようがないのだが
 この噂の震源地を
 ぼくは知っている
 他でもない
 このぼく自身だ

 友達に冗談で
 話した思いつきが
 いつの間にか
 世間に広まって
 しまっていたのである

 こんな思いつきに
 過ぎないものが
 広まったということは
 それなりに
 信憑性を感じた人が
 いたということなのだろう
 現に幸せになった人が
 何人か現れたのだ
 そうでもない限り
 こんな話が広まるわけがない

 そこでぼくも
 半信半疑で自らピンを
 触ってみた
 それから今まで
 幸せを感じるような
 出来事は
 特にこれといって
 起こっていない

 しかし
 噂はものすごい勢いで
 広まっている
 今度テレビ局が
 取材に来るらしい

 戸惑いつつも 
 ちょっと
 にやにやしている
 ぼくがいる



テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

ケンタッキーの肉

 ぼくはケンタッキーの
 店の前に来ている
 今日のお昼は
 フライドチキン
 お母さんに頼まれて
 買いに来たのである
 そうでなければ
 こんな贅沢はできない

 新商品
 特製地鶏の
 あつあつピリ辛チキン
 か
 おいしそうだが
 頼まれもしないものを
 勝手に買うわけにはいかない
 今日は普通のヤツで
 我慢するのだ
 店の中へと足を
 踏み込もうとするぼく
 だが
 そのときぼくは
 ふと気になってしまった

 例のあの人形
 ちょっと太った
 白いスーツの
 メガネのおじさんだ
 ははは
 ナイストゥーミーチュー
 ぼくはその笑顔につられて
 腕を差し出して
 握手をする
 次の瞬間

 人形が
 がっちりと
 その硬い手を
 握り返してきたのだ
 大慌てで手を
 引っ込めようとするぼく
 しかし人形の握力は
 信じられないほど強かった
 離れない
 離せない

 だれか

 思わず悲鳴が出る
 しかしなんということか
 まわりには誰もいない
 まるで
 このタイミングを
 計っていたかのように
 店の中も同じだ
 店員が気づいている様子は
 まったくない

 ありえないほどの
 時間が過ぎた
 にこやかに微笑む
 人形を前に
 手を握られたまま
 ぼくはその場に
 座り込んでいた
 もうどうにでもなれ

 そのとき
 突然人の気配がした
 そちらを
 振り返るとそこには
 人形そっくりな
 ちょっと太った
 白いスーツの
 メガネのおじさんが
 立っていた

 特製ピリ辛チキン
 材料入ったよ

 ぼくは
 その英語の意味が
 理解できなかった



テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

隕石

 隕石が
 地球に降ってくる

 間違いない
 何度計算しても
 そうなる

 突然だが聞いてほしい
 このぼくは
 将来気象予報士を
 目指していて

 天気とか気候とか
 自分なりに
 色々研究して
 予想していたのだが

 ひょんな弾みで
 このままいくと
 地球に
 巨大隕石が
 ぶつかることを
 突き止めてしまった

 間違いないが
 この天体が
 ぶつかる事は
 今までいっさい
 ニュースにもなっていない

 どうしよう
 気象庁にでも
 連絡するべきなのか
 それともNASAか
 いたずらだと思われて
 マトモに取り扱って
 くれないことも
 考えられる

 ぼくは心を
 落ち着けるため
 椅子から立ち上がる
 弾みで
 テレビのリモコンの
 スイッチが入った

 天気予報の時間だった

 明日の天気です
 午前中は雨
 のち
 隕石が降ってくるでしょう

 淡々と口にする
 お天気のお姉さん

 人類最後の
 二十四時間が
 始まる



テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

食べなさい

 このリンゴは
 はたして食べても
 いいのだろうか

 台所の
 テーブルの上に
 ひとつ
 リンゴがおいてあった

 食べろといわんばかりに

 毒リンゴだったら
 どうしよう

 世の中というものに
 不信を
 覚えつつあったぼくは
 こんなことにすら
 迷いを抱くように
 なってしまっていた

 食べなさい

 暖かい声が聞こえる
 例えるならマザー
 ぼくはその声を
 信用することにした

 ナイフを取り出し
 皮をむく
 四つに切って
 芯を切り抜き
 お皿に盛る

 リンゴだ
 まぎれもなく

 ぼくはリンゴを
 口にした

 涙が出るくらいに
 おいしいリンゴだった

 それから
 一ヶ月
 ぼくはまだ
 生きている



テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

ぼくの神さま

 目の前に
 神さまがいる

 まさか
 こいつが
 神さまだったなんて
 巧妙に正体を
 隠していたのだ
 ぼくは神さまから
 洗礼を授かった

 次の日
 神さまは
 奥さんと離婚した

 次の日
 神さまは
 借金まみれで
 あることが
 判明した

 次の日
 神さまは
 ぼくに
 食事をおごれと
 ねだってきた

 こいつは本当に
 神さまなのだろうか
 ぼくは
 ついに疑念を
 持ち始めた

 だが
 あの日に
 起こった出来事は
 こいつが
 神さまであることを
 間違いなく
 裏づけていた

 結果としてぼくは
 今日この日まで
 延々と神さまと
 付き合い続けている

 借金の申し入れは
 さすがに断った
 こんなのが
 神さまをしている
 世界なんだ

 世の中が
 こんなふざけた姿を
 しているのも
 ある意味
 当然なのかもしれない



テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

Author:島
無断転載はきんしー

最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR