【スピーカー】
ライター Kathryn Schulz(キャサリン・シュルツ)氏
【動画もぜひご覧ください】
Kathryn Schulz: Don’t regret regret
29歳でタトゥーを入れて猛烈に後悔
キャサリン・シュルツ氏:ご覧の通りジョニー・デップです。そしてこれはジョニーの肩。そしてジョニーの有名なタトゥーです。
1990年に彼は当時の婚約者ウィノナ・ライダーにむけて「ウィノナ・フォーエバー」というタトゥーを肩に彫りました。そしてその3年後、ハリウッドの基準では3年は「永遠」とも言えるのでしょうが、ジョニーとウィノナは破局します。
その後ジョニーは「ウィノナ (Winona)・フォーエバー」というタトゥーを矯正します「ワイン(Wino)・フォーエバー」と。
(会場笑)
ジョニー・デップ、そして16歳から50歳のアメリカ人の25%の人々と同じように私にもタトゥーがあります。
タトゥーを入れようと考え始めたのは20代半ばでしたが、それから実際に入れるまでしばらく時間を置きました。
17歳、 19歳、 23歳でタトゥーを入れて30歳になる頃にはタトゥーを入れたことを後悔している人、たくさんいますよね。
私は29歳の時にタトゥーを入れてすぐに後悔しました。
(会場笑)
タトゥー・ショップを出てすぐにものすごく後悔して、ニューヨーク市内、ブロードウェイとキャナル通りの交差点で泣き出してしまったんです。
でもニューヨークのその場所は私がウワァー、となっていても誰も変に思わない、おかしな人が多いエリアでしたからよかったですけど。
(会場笑)
自分がこうなるなんて思っていなかったものですから、とても衝撃を受けました。なぜなら、その瞬間まで私はそれまで生きてきた人生に何も後悔を持っていないことを自慢に思っていましたから。
もちろんたくさん間違いを犯してきましたし、バカな判断をしたことは数知れず。
しかし、その当時の自分ができる限りの、その当時持っていた情報の中で最善の判断をしてきたし、自分がしたことから学んだし、それが無ければ今の自分の人生はなかったのだ、だからあれはあれでよかったのだ、と常に考えてきたものですから。
つまり後悔などしている暇はない、常に前を向いて、人生を悔いることなく生きることが高潔な生き方なのだという哲学を持っていました。この考え方はこちらの引用によく表現されています。
「救済の余地がない物事に心を砕くべきではない。既に起きてしまったことは取り返すことができない」とても高潔な引用に聞こえますよね。
皆がうんうん、と深く共感するような。でもこれを言ったのが誰か教えたら、皆さんはその考えを正すことと思います。マクベス夫人です。要は彼女が夫に向けて、人を殺すことを怖れたりそのことを悪く思ってグダグダ言うのはやめなさい、と言っているのです。
(会場笑)
後悔するということの意味
後悔の感情を感じることができないという性格は、実は社会病質者の性格のひとつなのです。
そして脳の障害を抱えていることの表れであることもあります。眼窩前頭皮質に何らかの障害を抱えている人は後悔をすることもなければ、傍から見てバカなことをしていると思うようなことも平気でします。もしも一生後悔せずに生きていきたいと願うのであれば、ロボトミーがその方法のひとつかもしれませんね。
人間として生きていきたいと願うのであれば、後悔の無い人生を送ることを目的とするのではなく後悔と共に生きる方法を学ぶべきです。
では、「後悔」の定義とは? 後悔とは過去に違う行動を取っていれば今の状況がより良い、またはより幸せな状況になっていたはずだと考えることです。
つまり後悔するには2つのことが必要です。まずは自分の人生に対する決定権です。自分で意思決定ができることが前提です。
そして第2に想像力です。過去を振り返り、その時違った意思決定を下し、それがいかに現在の状況に影響するか、とここまで想像することができる能力が必要です。後悔する物事に対して自分の人生を自分で決定する能力が高くなる、または想像力がたくましくなればなるほど、その後悔は強くなるのです。
例えば、親友の結婚式に向かっているとしましょう。
空港に向かう道中、ものすごい渋滞にはまってしまいました。渋滞を抜けてなんとか空港のゲートにたどり着くのですが、もう飛行機は出発してしまっていた。
このような状況では20分前に飛行機が出発してしまっていたと知るよりも「あと3分だけ早く到着していれば間に合っていたのに!」という状況下で体験する悔しい気持ち、後悔のほうが強くなるはずです。
それはなぜだと思いますか? それは3分間だけ時間を縮めることができた方法を想像するのがより容易いからです。トンネルじゃなくて橋を渡ってくればよかったんだ! あの黄色信号を突っ切ればよかったんだ! と。このように私達は後悔を感じるのです。もう少しで良い結果を得ることができたはずなのに、今こうなってしまったのは全て自分の責任だという自責の念です。
一般的に人が後悔することランキング
私達はたくさんのことに後悔を感じます。私達が後悔することのほとんどはこれからご紹介する分野内で起こります。
私達が後悔する分野トップ6の中でダントツは教育です。私達が後悔することの33%は教育に関連しています。
もっと勉強すればよかった、あの学位を取っておけばよかった、受けた教育をもっと人生に活かせればよかった、違うことを学べばよかった等々です。
その他上位はキャリア、恋愛、親としての子供との接し方、自分自身のアイデンティティに関連するさまざまなこと、そしてプライベートの時間の過ごし方、またはプライベートでできなかったことに関連する後悔です。
そしてその後ファイナンス、恋愛や子育てに関連しない家族問題、健康、友人関係、スピリチュアル関連、そしてコミュニティ関連の後悔と続きます。
ご覧の通り、人生全般で見ればファイナンス関連の後悔は全体の3%に過ぎないのですよ。もし今日ここにいる皆さんが、どちらの会社にしようか、時価総額が大きいほうか小さいほうかだとか仕事上のことで悩んでいたり、スバルを買うかプリウスを買うかで悩んでいるのだとしたら、覚えておいてください。皆さんはそれについて悩んでいたことを5年後には忘れていますよ。
後悔の感情プロセス
このようなことが私達が主に後悔の念を感じる分野ですが、実際後悔する感情とはどのようなものでしょうか? 簡単に言えば最悪の気分ですよね。その最悪の気分は大抵4つの段階に分けることができます。
第1に「否定」する気持ちです。そしてこれは常に後悔とセットです。
私がタトゥーを入れて帰宅したその夜、一睡もできませんでした。眠ろうとして数時間はたったひとつの考えに縛られていました。それは「タトゥーよ、消えろ!」です。
これは本当に単純で理性の無い感情的な反応ですよね。「ママァァ!」と母親に頼ってごねる気持ちと同じです。問題を解決すること、問題自体から目を背け、その問題が消えてなくなればいいのにと願う。
2つ目は当惑です。タトゥーを入れた夜、ベッドルームで思いました「なぜこんなことをしてしまったのだろう? 一体私は何を考えていたんだ?」と。後悔する感情の元となる状況をつくりだした自分が信じられないという気持ちです。自分が受け入れられない、理解できない。そしてそんな自分にまったく共感できない。
そしてこれが第3のポイント、自分を罰することに繋がります。「あんなことをした自分を張り倒したい!」と後悔して叫んだことはないですか?
そして心理学では後悔は固執と言い換えられます。つまり同じことを何度も何度も繰り返し頭の中で考え続けることです。固執するとはつまり今挙げた第1から3のポイントの間を頭の中でぐるぐるぐるぐる回り続けることになります。
私はタトゥーを入れた夜、ただ瞬間的に「タトゥーよ、消えろ!」と思ったわけではなく、一晩中「タトゥーよ、消えろ!」と願い続けたんです。
心理学文献を読むと今ご紹介した4つの点が、後悔する感情に多くの場合共通することです。
私はここに第5の点があると思っています。あの夜、自分を責めることに疲れ果ててベッドに横になっていました。皮膚移植をしようかとまで思いつめました。
どうやら西洋文化にコンピュータ文化が根付き、すぐになんでも「Undo(消去)」できるように思ってしまうのではないかと考えます。厳しい現実に直面することができなくなっているのではないでしょうか。
お金やテクノロジーですぐに問題を解決しようとして、すぐに消去したり、フォローするのをやめたり、友人リストから削除したりできるのですからね。
しかしなんとかしてこれを取り消したい、変えたいと願う状況があっても、もう取り消すことも変更することもできないことがあるというのが事実です。
自分の力ではもうどうすることもできないことだってあるのです。何でも自分でコントロールしたい完璧主義者な人にとってこれを受け入れるのはとても難しいことです。自分で全てを決定し、行動し、常に「正しく」ありたいのですから。
後悔の程度や後悔する期間は状況によって異なります。これが私の現代で起きがちな後悔する話の中で好きなもののひとつです。
「全員に返信」
(会場笑)
テクノロジーって、たったひとつのクリックで物すごい後悔に繋がったりしませんか?
誤って全員に返信をクリックしてしまったがために、人間関係に大きな亀裂が入る。またはものすごく恥ずかしい思いをしながら一日を過ごすことになる、またはそれがその職場での最後の日になってしまうなんてことも。
後悔し自分を責めたくなった時の対処法
でもこれは人生の深い後悔に比べれば何でもないことです。時に私達は取り返しのつかないこと、最悪な状況に繋がる決定を下してしまいます。自分自身、または周囲の人の健康、幸福、生計に関わることです。最悪な場合には誰かの命に関わる決定を下してしまう。
このような場合、その後悔は心に突き刺さり、長い間心に抱えて生きていくことになるのです。間違って全員に返信をクリックしてしまった後の数日間その後悔に苦しむことだってあるでしょう。
私達が抱える後悔に平穏をもたらす方法は3つあると思います。第1に、皆同じようなことで後悔を抱えていることを知って安心することです。「後悔」「タトゥー」でGoogle検索にかけると1150万のページがヒットします。
(会場笑)
タトゥーを体に入れているアメリカ人の17%が、タトゥーを入れたことを後悔しているとも言われています。つまりジョニー・デップと私と他700万人が後悔しているということです。タトゥーについての後悔だけで、こんなに仲間がいるんですよ。
後悔に対処する2つ目の方法は、自分を笑うことです。29にもなってタトゥーが嫌だからと母親に「ママァ! いやっ! 助けて!」と言うかのようにダダをこねた自分を笑うのは簡単でした(笑)。
何か大変なことをした人間が、自分のしたことを笑って忘れようなんて甘い、という反感もあるとは思いますが、私は真に後悔をした人、自分のしたことについて十分に後悔して苦しんだ人にとって、ユーモア、ジョーク、ブラックジョークで自分を笑うことすら救いになると思っています。
自分の人生のポジティブとネガティブをジョークで繋ぐといいますか、今の人生を生きるための救いになるはずです。
第3に時間が解決してくれます。傷は時間が経てば癒されます。タトゥーは一生消えませんけどね。タトゥーを入れてから数年が経ちました。見ますか?
(会場笑)
私のタトゥーを見せる前に言っておきますが、皆さんきっとこれを見ても「あー、なんだ。つまらないな」と思うでしょう。私がこれまでこれを入れてどれだけ後悔しているかについて話してきたほど、ダサくないからです。
マリリン・マンソンの顔をちょっと見られては困るところに入れてしまったとかそういう類のものではないからです。人からは素敵なタトゥーね、と言われます。ただ私が気に入らないだけなのです。私は完璧主義者なので。ではご覧ください。
これが私のタトゥーです。皆さん大したことないな、と思ったのではないですか?
皆さんが後悔していることも同じですよ。皆さんが思うほど人から見ればそれは大したことないのではないでしょうか?
このタトゥーを入れたのは、20代のほとんどをアメリカ国外で旅をしながら過ごしたからです。その後ニューヨークで腰を落ち着けると、旅で学んだ人生の教訓を忘れてしまいたくないと思ったのです。特に自分について学んだ2つのこと、これを決して忘れたくなかった。
探究し続けることの重要性と、自分の生きる道、「北極星」がどこかを見失いたくなかった。この2つです。コンパスの絵を選んだのは、この2つのポイントを上手く表現していると思ったからです。タトゥーとして体に刻むことで、コンパスが常に私の旅の方向を指し示してくれると。
しかし入れてみると、このコンパスはこの2つの点を私に思い起こさせるのではなく、後悔が教えてくれる教訓を常に思い出させてくれるものとなりました。人生で最も重要な教訓とも言えるでしょう。皮肉なのですが、
人生のゴールや夢があって、自分にできる力でそれを叶えたいと願ったり、大切な人がいて、その人を傷つけたくないし失いたくないと願う時に自分のせいで物事が、状況が悪化したのなら、それを後悔する痛みを感じるべきなのです。
後悔しないで生きることが重要なのではなく、後悔を抱えて生きる自分を受け入れることが重要です。
タトゥーを入れて私が学んだことはこれです。
完璧にはなれないことを受け入れ、自らが犯した間違いを愛し、間違いを犯した自分を許すことです。
後悔は自分がいかに失敗したかを思い起こさせるものではなく、いかに次は上手くやれるかの教訓ですよ。
ありがとうございました。
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