NPT:イスラエル20年ぶりに参加 アラブと連携模索か
毎日新聞 2015年04月29日 22時03分(最終更新 04月29日 22時19分)
【ニューヨーク草野和彦】国連本部で開催中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に、NPT非加盟のイスラエルが20年ぶりにオブザーバーとして参加している。今会議の焦点の一つは、イスラエルの核兵器を念頭に置いた「中東非核化」構想の取り扱い。この問題に強いこだわりを持つアラブ諸国に前向きな姿勢を見せることで、対イランでの連携を図る思惑などがありそうだ。
「域内のすべての穏健な国々が、直面する問題について議論する機会だ」。ロイター通信によると、イスラエル当局者は会議参加の意義をこう説明。イスラエルが対話を通じて、アラブ諸国に「誠意」を示そうとしていることを強調した。
イスラエルが20年前に参加した1995年の会議では、中東非核化地帯実現を目指す中東決議を採択。2010年の前回会議では、中東非核化に関する国際会議を12年までに開催することで合意したが、実現していない。アラブ側には、イスラエルが議題の設定にさえ応じないという不満が強い。
対照的なのが、交渉が継続中のイランの核問題だ。前回会議ではイランと鋭く対立した米国だが、今回は雰囲気が一変。ケリー米国務長官は27日の一般討論で、イラン核問題について「歴史的進展の可能性がある」と評価した。
イランのザリフ外相は同日、非同盟諸国(119カ国)を代表した演説で、イスラエルについて「中東地域で唯一NPT非加盟で、加盟するつもりも、核兵器を放棄するつもりもない」と指摘。国際社会の非難の矛先をイスラエルに集中させる狙いがあるようだ。
イスラエルは、イランを安全保障上の最大の脅威とみなしており、イランと欧米との接近を懸念。またイスラム教スンニ派アラブ諸国は、シーア派国家イランの中東地域での勢力拡大を警戒している。対イランでは、イスラエルとアラブ諸国の利害は一致するのだ。
オブザーバー参加国は会議での発言権はない。この5年間の中東情勢の変化を踏まえ、国連筋は「イスラエルは、これまで離れていたNPT会議の現場でも情報を収集する必要性に迫られているのだろう」と語った。