ベトナム戦争終結40年:当時の敵、対中国で歩み寄り

毎日新聞 2015年04月29日 22時09分(最終更新 04月30日 01時00分)

カムラン湾の地図
カムラン湾の地図
29日、ホーチミン(旧サイゴン)で行われたベトナム戦争終結40周年を記念するパレードに登場した車両=AP
29日、ホーチミン(旧サイゴン)で行われたベトナム戦争終結40周年を記念するパレードに登場した車両=AP

 【バンコク岩佐淳士】1975年4月にサイゴン(現ホーチミン)が陥落し、ベトナム戦争が終結してから30日で40年を迎える。米国とベトナムは東西冷戦を背景に泥沼の戦いを繰り広げた。しかし、かつての敵国同士はアジア太平洋の覇権をうかがう中国をにらみ、歩み寄りを始めている。両国は軍事協力を進め、米軍がベトナム戦争中に基地を置いたベトナム中部カムラン湾が、米越の対中戦略の拠点となる可能性も浮上している。

 カムラン湾は、ベトナムやフィリピンが中国と領有権を争う南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)、西沙(パラセル)両諸島に臨む要衝。米軍はベトナム戦争後に撤退し、その後は2002年までソ連(ロシア)軍が使用した。

 そのカムラン湾を12年6月、米国のパネッタ国防長官(当時)がベトナム戦争後、米国防長官として初めて訪問。停泊中の米補給船を視察し「より多くの米艦船がこの港を利用できるようベトナムと協力することは極めて重要だ」と語った。

 現在、カムラン湾に入港できる米軍艦船は補給船のみで、数も限られている。米国はアジア太平洋で中国と対峙(たいじ)するため、こうした規制を緩和してもらいカムラン湾を再び「拠点」化したい考えだ。

 南沙や西沙で中国の実効支配拡大を許すベトナムも米軍の影響力拡大を求めており、米国との協議に応じているとみられる。

 一方でベトナムは、ロシアとの海軍協力も強化する。カムラン湾ではロシア軍爆撃機が給油をしていることが判明し、米国が3月、ベトナムに抗議した。

 日本国際問題研究所の小谷哲男主任研究員は「ベトナムがあからさまに米国に傾斜すれば、中国との緊張を高めてしまうし、ほかの東南アジア諸国も歓迎しない。カムラン湾をロシアなどにも開放することで、米越関係を目立たないようにする狙いがあるのではないか」とみる。

 米越は95年に国交を正常化し、00年には米国のクリントン大統領が初めてベトナムを公式訪問した。両国は貿易を拡大し、軍高官の交流や軍事演習を通じ軍事協力を重ねている。

 米国は昨年10月、ベトナム戦争終結以来続いた殺傷力のある武器の禁輸を一部解除。ベトナム共産党のグエン・フー・チョン書記長は今年夏ごろ、同国最高指導者としてベトナム戦争後初めて米国を訪問する予定だ。

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