安倍政権:「民意」のご都合主義 沖縄の声は違うのか

毎日新聞 2015年04月29日 20時20分(最終更新 04月29日 22時39分)

安倍晋三首相(左から2人目)と菅義偉官房長官(左)=首相官邸で2015年4月20日、竹内幹撮影
安倍晋三首相(左から2人目)と菅義偉官房長官(左)=首相官邸で2015年4月20日、竹内幹撮影

 67年の都知事選敗北直後、田中角栄元首相(当時は党都市政策調査会長)は「自民党の反省」(中央公論67年6月号)と題した論文で「議会制民主主義の確立は、多数党が国民に密着し、その意向を正しくくみ取って政治に反映させ、少数意見を十分に尊重する道を歩き続けることによって可能となる」と書いた。現政権にどう響くか。

 塩田さんは「その頃は、自民党が政権を奪われるという現実的な危険性が、まだ低かった。ある種の余裕もあったと思います」と話す。

 これほどかたくなに「民意」を認めないのはなぜなのか。

 「政治的思考」(岩波新書)などの著書がある法政大の杉田敦教授(政治学)はこう分析する。「戦時中に各地で玉砕や撤退が続いても、『負けではない、転進だ』と主張し続けた軍部を思い出します。米国や過去の経緯を含めた『メンツ』を重んじるあまり、途中で引き返せなくなっている。沖縄の民意は、移設政策が破綻していると指摘しているのです。『民意がこうだから、もう一度話し合いたい』と米国に提案するいい機会なのに、その交渉力がないことを自覚しており、それが露呈するのを恐れているのかもしれません」

 米国のジョセフ・ナイ元国防次官補は今月、琉球新報の取材に「沖縄の人々の支持が得られないなら、米国政府は(移設を)おそらく再検討しなければならないだろう」と述べた。ナイ氏はクリントン政権で普天間飛行場返還の日米合意を主導した重鎮。杉田さんは「現地の反対を無視した基地移設は、米国のデモクラシーの伝統からしても問題視される。米側に再考の余地が出てくるのでは」と語る。

 今からでも「民意」重視へ方針転換するだけの度量が、安倍政権にあるだろうか。

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