安倍政権:「民意」のご都合主義 沖縄の声は違うのか

毎日新聞 2015年04月29日 20時20分(最終更新 04月29日 22時39分)

安倍晋三首相(左から2人目)と菅義偉官房長官(左)=首相官邸で2015年4月20日、竹内幹撮影
安倍晋三首相(左から2人目)と菅義偉官房長官(左)=首相官邸で2015年4月20日、竹内幹撮影

 ◇統一地方選「国民がアベノミクスに期待」というけれど……

 「了見が狭い」といわれても仕方ないのではないか。現政権の「民意」との向き合い方だ。菅義偉官房長官は統一地方選の前半戦終了後、「アベノミクスへの期待があった」と政権の効果だと胸を張る一方で、例えば「新基地建設反対」の選挙結果が示された沖縄は「民意とはいえない」という趣旨の発言をしている。民意を都合よく使っているとしか思えないのだが……。【江畑佳明】

 今月12日、統一地方選の前半戦の投開票。結果は、実施された10の道県知事選のすべてで与党が支援する候補が勝利するという「圧勝」だった。直後の政権与党幹部の主な発言はこうだ。

 「統一地方選は国政選挙と異なり、あくまでそれぞれの地域の住民の皆さんがその地域の行政のあり方を選ぶ選挙だと思っている。ただ全体としてみると、安倍政権が進めているアベノミクスの実績への評価と地方創生、ここを含めたアベノミクスの期待、そうしたものが表れた結果だろうと思う」(菅官房長官)

 「総じていえば、アベノミクスによる経済好循環がようやく動き出しておりますので、(略)それに対する有権者の期待があったのではないか」(谷垣禎一自民党幹事長)

 「地方創生元年、アベノミクスの地方展開元年になっていくことを候補者が訴え、有権者に届いたと理解している」(甘利明経済再生担当相)

 ところが、札幌市長選では与野党が激突し、野党支援の候補が当選した。敗因を質問された菅官房長官は「地域の皆さんが地域のさまざまな行政のあり方を選択する中での結果だったのだろうと思う」。

 また以前には、こんなこともあった。昨年7月、滋賀県知事選で、「卒原発」を訴えた元民主党衆院議員の三日月大造氏に、自公推薦の候補が敗れた。選挙直前のタイミングで、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈変更の閣議決定をしたばかりだった。しかし敗戦の弁は「国政の議論の影響もあったという声も確かにある。しかし基本的には、滋賀県の将来を誰に託すかの観点で県民の皆さんが判断されたのだろうと思います」(安倍晋三首相、衆院予算委員会の答弁で)。

 これらの発言で浮かび上がるのは、勝てば「政権が評価された」、負ければ「地方の選挙事情」。これはダブルスタンダードではないのか。

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