「著作権」…あなたには正しい知識がありますか
インターネットの普及により、例えば誰かの書いた絵や撮影した写真、文章などが誰にでも容易に取得出来るようになりました。そんなことも背景にあり、最近度々目にする言葉に「著作権」というものがあります。きっとあなたもご存知のことでしょう。
さて、この「著作権」についてですが、あなたはどれだけ正しい知識を持ち合わせていますか?なんとなくボヤ~っとは知っているけど、深くとなるとよくわからない…という方が大半であるのではないかと思います。
そこで、今回はこの「著作権」について、簡単に解説していきます。
そもそも「著作権」とは?
著作権(ちょさくけん)はコピーライト(英語: copyright)とも呼ばれ、言語、音楽、絵画、建築、図形、映画、写真、コンピュータプログラムなどの表現形式によって自らの思想・感情を創作的に表現した著作物を排他的に支配する財産的な権利である。
著作権は特許権や商標権にならぶ知的財産権の一つとして位置づけられている。
絵や写真、文章や音楽など…例えば、あなたが紙に落書きをしたら、そこには著作権が発生し、あなたの落書きは知的財産として著作権によって守られます。
誰かが作った知的財産を守る為の著作権。あなたの描いた落書きを、他の誰かが「わたしが描いたの!」と公開したら、それは著作権の侵害となります。
また、著作権には「著作者人格権」というものもあり、例えば、あなたの描いた落書きを、あなたはネット上に公開したいと思っていないのに、「◯◯さんが描きました!」と誰かがネットにアップしたら、これは著作者人格権の侵害となります。
現在の日本では、憲法により表現の自由が約束されています。「著作権」は表現したもの、表現した人を守る大切な法律なんですね。
著作権には例外もある
著作権のある著作物を著作権者の許諾を得ないで無断で利用すれば、著作権侵害となります。ただし、許諾なく使える場合に該当するときは、無断で利用しても著作権侵害にはなりません。
誰かの著作物を勝手に使うと、それは基本的に違法となります。ですが、一部例外がある、ということをあなたは知っていましたか?
では、この例外とは果たしてどんな内容なのでしょうか。
•私的使用のための複製(著作権法第30条)
•付随対象著作物の利用(著作権法第30条の2)
•検討の過程における利用(著作権法第30条の3)
•技術の開発又は実用化のための試験に用いるための利用(著作権法第30条の4)
•図書館での複製・自動公衆送信(著作権法第31条)
•引用(著作権法第32条)
•教科書への掲載(著作権法第33条)
•拡大教科書の作成のための複製(著作権法第33条の2)
•学校教育番組の放送など(著作権法第34条)
•学校における複製など(著作権法第35条)
•試験問題としての複製など(著作権法第36条)
•視覚障害者等のための複製(著作権法第37条)
•聴覚障害者等のための複製(著作権法第37条の2)
•非営利目的の演奏など(著作権法第38条)
•時事問題の論説の転載など(著作権法第39条)
•政治上の演説などの利用(著作権法第40条)
•時事事件の報道のための利用(著作権法第41条)
•裁判手続などにおける複製(著作権法第42条)
•情報公開法による開示のための利用(著作権法第42条の2)
•公文書管理法による保存のための利用(著作権法第42条の3)
•国立国会図書館法によるインターネット資料の複製(著作権法第42条の4)
•翻訳、翻案等による利用(著作権法第43条)
•放送などのための一時的固定(著作権法第44条)
•美術の著作物などの所有者による展示(著作権法第45条)
•公開の美術の著作物などの利用(著作権法第46条)
•展覧会の小冊子などへの掲載(著作権法第47条)
•インターネット・オークション等の商品紹介用画像の掲載のための複製(著作権法第47条の2)
•プログラムの所有者による複製など(著作権法第47条の3)
•保守・修理のための一時的複製(著作権法第47条の4)
•送信障害の防止等のための複製(著作権法第47条の5)
•インターネット情報検索サービスにおける複製(著作権法第47条の6)
•情報解析のための複製(著作権法第47条の7)
•コンピュータにおける著作物利用に伴う複製(著作権法第47条の8)
•インターネットサービスの準備に伴う記録媒体への記録・翻案(著作権法第47条の9)
•複製権の制限により作成された複製物の譲渡(著作権法第47条の10)
調べてみると、かなり多くの例外が定められていることがわかりました。
わたしたちにとって身近な「著作権の例外」は、
•私的使用のための複製(著作権法第30条)
•引用(著作権法第32条)
•非営利目的の演奏など(著作権法第38条)
•時事事件の報道のための利用(著作権法第41条)
•インターネット・オークション等の商品紹介用画像の掲載のための複製(著作権法第47条の2)
ですね。それでは、一つ一つを解説していきましょう。
■私的使用のための複製 とは?
1.著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
二 技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第120条の2第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合
例えば、購入したCDからiTunesに音楽を取り込むのは、著作物(音楽)の私的な使用であるので著作権侵害にはなりません。しかし、データ化した音楽をWebサイトなどで配布したら、それは私的な使用とは言えないので著作権侵害になってしまいます。
ニコニコ動画やYouTubeなどの動画共有サイトに、アニメや映画、テレビ番組などがアプロードされて度々問題になりますが、これは私的使用に当たらない著作権侵害行為だから。テレビで放送されている内容を録画して自分で見るだけなら、私的使用なので著作権侵害には当たりません。
動画共有サイトにアップロードされた動画や音声をパソコンにダウンロードすることも、「私的使用の為の複製」に当てはまらないので著作権侵害となります。
■引用 とは?
著作権法では、著作権者に許諾を得ることなく、公表された著作物を利用することができるいくつかの例外を定めています。
引用はその 1つですが、次の要件を満たすことが必要です。
•引用して利用できる著作物は、公表されたものでなければならない。
•公正な慣行に合致した引用、たとえば論文において自分の説を正当づけるためなどの必要性がなければならない。
•正当な範囲内の引用でなければならない。正当な範囲とは、次のような場合である。 ◦引用する個所がかぎかっこなどで明瞭に区別できること、
◦自分の論文が主であり引用が従であること、
•引用元の著作者人格権を侵害しないこと。
•出所の明示をしなければならない。論文の場合であれば引用個所に注をつけ、近いところに著作者名、書名(題名)、雑誌名、ページを表示する必要がある。参考文献で参照しても、本文中の引用個所が特定できないときは、適法な引用とはいえない。
論文やネットのまとめ記事等に、著作物を引用する場合は、適法な引用であれば著作権侵害に当たりません。
しかし、この「適法な引用」というのがミソ。例えば、誰かの書いた論文や、Webページの内容をまるまるコピーしたらそれは「適法な引用」とは言えません。
メインの部分は自分で作成し、そのメインを補助する目的であれば、出典元を明記し、引用であることがハッキリとわかる状態にすれば、引用が可能です。
しかし、例えば引用した文章や写真の製作者を中傷する目的で引用すると、それは著作者人格権の侵害に当たる場合があります。
著作物の引用は、用法用量を守って正しくお使いください、ということですね。
■非営利目的の演奏など とは?
営利を目的としない上演とは、観客から料金を徴収せず、かつ出演者にも出演料などで金銭等の支払いをしない場合を言います。
この場合は著作者に許可はいりませんし、著作権料の支払いも必要ありません。
無料で使える例をいくつか挙げると、
•文化祭でコピーバンドを結成し、みんなの前で演奏する
•学校の合唱コンクール
•運動会でBGMとしてCDを流す
•公民館などで映画を上映する
非営利であり、無料かつ無報酬であることが条件です。
お金を取る目的でなく、更に実際に演奏する等、著作物の複製を作成しにくい場合での著作物利用であれば、著作権の例外に当たるようです。例えば、チケットを販売して開催したコンサートで、誰かの作った曲を演奏するのなら、その場合は著作料の支払いが必要になるんですね。
皆で見る為に、著作物の映画等を無料上映することも著作権の例外にあたります。でも、皆で見る為に、という口実でネット上で著作物を無料公開してしまったらそれは著作権違反。やはり、ここで注目したい点は、「公開された著作物から容易に複製を作ることが出来るか」というポイントのようです。
■時事事件の報道のための利用 とは?
著作権法文中の「時事の事件」とは、現時または近時に起こった事件をいい、「当該事件を構成」とは、その著作物を利用しないと報道にならない場合(例えば、絵画が盗まれたニュースでその絵画を映像で見せるなど)を指します。「正当な範囲内」とは、著作物の利用を必要最小限にすることなどです。
事例② 尖閣諸島沖中国漁船の衝突映像
中国漁船が沖縄の尖閣諸島付近で違法操業し、日本の巡視船に衝突し破損させた際の録画映像がYou Tubeにアップロードされ翌日のワイドショーやニュースでこの映像が放送されたが、「報道利用」の要件を満たすと考え関西テレビでも利用した。
※一部抜粋
ニュースやワイドショーの一部に、YouTube等の動画共有サイトにアップロードされた動画が使われることがありますが、あれは著作権の侵害には当たりません。報道の為に必要な情報として、著作物を利用することは、著作権の例外に当たるようです。
そういえば、ひと昔前に世間を騒がせた、「万引き爪楊枝少年」。コンビニで万引きをする様子や、お菓子に爪楊枝などの異物を混入させる様子(実際はどちらもしていなかったようですが)を撮影した動画が、多くのニュース番組で利用されましたね。
これは報道の為に必要な情報であったために、撮影者の許可無くニュースに利用出来た、ということになります。
■インターネット・オークション等の商品紹介用画像の掲載のための複製 とは?
近年,インターネットオークションをはじめとして対面で行われない商品取引の形態が広く普及していますが,このような取引の際,美術品や写真の商品紹介用の画像を掲載することは,複製権や公衆送信権の侵害に当たる可能性があると指摘されています。
しかし,画像は,商品情報の提供として取引に不可欠なものであり,その譲渡等が著作権侵害とならない場合であるにも関わらず,画像掲載に関する著作権の問題(複製権や公衆送信権)を理由に事実上譲渡等が困難となるのは適当ではありません。
このため,今回の改正では,譲渡権等を侵害しないで美術品や写真の譲渡等を行うことができる場合には,その申出のための複製又は自動公衆送信を権利者の許諾なしに行えるようにするものです。
ネットオークションで何かを販売する際、売り物の状態などを購入検討者に見せる目的でその商品の写真を撮って公開することはよくあります。実際に商品を手に取らずとも購入することが出来るようになった現在、こういった例外が設けられないと、出品者は苦労しますよね。
ただし、掲載できる画像にも厳密に規定があり、画像のサイズは50平方センチメートル以下、画素数は32,400以下でないとなりません。スマホで写真を撮影するだけであれば、何の問題もなさそうですね。
ちなみに、例えば本のページを1ページづつ撮影してインターネット・オークションの商品紹介画面に掲載するのはダメです。
意外と知らない著作権のアレコレ…あなたは知ってた?
身近に溢れているのに、意外と知らない「著作権」の問題。あなたはどこまで知っていましたか?
しっかり勉強しておかないと、いざというときに困ってしまうことがあるかも…。わたし自身も、記事を作成して非常に勉強になりました。
トラブルを起こさない為、トラブルに巻き込まれないようにする為にも、著作権について、しっかり勉強しておきたいものですね。
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