安倍首相演説:中韓が批判的反応…70年談話をにらみ

毎日新聞 2015年05月01日 00時06分(最終更新 05月01日 01時37分)

 【北京・石原聖、ソウル大貫智子】安倍晋三首相が米上下両院合同会議で行った演説に対し、中国、韓国側ともに批判的な反応を示した。中国外務省の洪磊(こう・らい)副報道局長は30日の定例会見で「村山談話を含め、侵略の歴史を正視し反省する態度の表明を日本政府の指導者に対し一貫して促している」と、従来の主張を繰り返した。

 中国メディアからは「謝罪」の言葉を避けたとの批判的な報道があるほか、国営中国中央テレビは「米国とアジアでダブルスタンダードだ」と報道。米議会での演説と、アジアにも向けられる戦後70年談話とを分け、アジアへの謝罪は不十分との不満をにじませた。

 洪副報道局長はこの日、演説への評価を避けたうえで「おわび」を表明した「村山談話」にも言及。70年談話が中国の許容できる内容か判明するまで、安倍首相の歴史認識に対する評価を留保した形といえそうだ。

 一方、韓国外務省報道官は30日の声明で「周辺国との和解と協力の場となる転換点となり得たにもかかわらず、そのような認識も真摯(しんし)な謝罪もなく大変遺憾」と批判した。ただ、6月の日韓国交正常化50周年や6月ごろで調整中の朴槿恵(パク・クネ)大統領の訪米を前に、一定の関係改善は図りたい考えだ。

 韓国側は、米議会演説を戦後70年談話に続くものとして注視。特に朴大統領が重視する慰安婦問題では「河野談話を継承すると言いながら、内容には踏み込んでおらず、事実上否定している」(韓国外務省幹部)と大きな進展がなかったことに失望感があるようだ。

 一方、朱鉄基(チュ・チョルギ)外交安保首席秘書官は30日、「今年中に歴史問題を解決しようと努力しており、韓日関係を必ず解決する」と発言。日米同盟強化や日中関係改善で韓国の孤立化が懸念されるとの指摘を意識した発言とみられる。

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