小渕優子・前経済産業相の政治資金の不明朗な処理をめぐり、元秘書2人が起訴された。

 2人は小渕氏の政治団体の会計を担当していた当時、交際費などを収支報告書に記載せず、その一方で別の政治団体に寄付したように装うなどし、帳尻合わせをした疑いがある。

 偽って報告された額は億単位にのぼる。小渕氏自身は「認識していた証拠がない」として不起訴(嫌疑不十分)となったが、自らの政治団体である以上、政治的責任は免れない。

 議員の世襲はかねて批判されてきた。この事件はスタッフや慣行もまるごと受け継ぐ問題の根の深さを示す。先代からの担当者に資金管理を任せきるようでは、自分の政治資金を把握し、誠実に公表する意識があったのか、疑わざるをえない。

 問題が表面化した後、小渕氏は弁護士ら第三者に調査を頼み、説明責任を果たすと約束したが、果たされてはいない。

 その後の衆院選で再び当選したが、そもそもこれだけの疑惑のさなかに立候補すること自体妥当だったのか。選挙で勝てばいいというものではない。

 政治団体の帳尻合わせは、程度の差はあれ、ほかの国会議員の事務所でも行われているという指摘もある。すべての国会議員が足元を見直すべきだ。

 政治資金の報告・公開の制度のねらいは、政治にまつわるカネをガラス張りにすることだ。しかし、同じ政治家がかかわる複数の政治団体の会計を操って収支を合わせれば、巨額の裏金が捻出できるということを、今回の事件は示唆している。

 政治団体への寄付額には制限があるが、複数の政治団体間のカネの流れはつかみにくい。政治団体がどの政治家とつながっているかわかりにくいことも、チェックを難しくしている。

 政治団体・日本歯科医師連盟にも別の政治団体経由の「迂回(うかい)寄付」の疑いが浮上し、東京地検がきのう強制捜査に入った。

 政治家が一つだけもつ資金管理団体と、ほかの政治団体との関係を明らかにする。収支も合わせて報告させる。そうしたごまかしがきかない公開方法のルール化が、必要ではないか。

 09年度以降、政治資金収支報告書は、総務省や都道府県選管での閲覧だけでなく、インターネットで見て印刷できるようになった。だが公開方法は各都道府県選管次第で、報告書に添付される領収書は対象外だ。

 自分のホームページで政治資金の収支を公開する政治家もいる。個々の政治家の、公開への姿勢も問われている。