【北京=大越匡洋】中国共産党は30日、習近平国家主席が主宰する政治局会議を開き、当面の経済政策運営について「経済の下振れ圧力への対応を高度に重視する」と表明した。景気の安定をより重視する方針を決定し、きめ細かな政策調整を通じて景気の失速を防ぐ強い姿勢を示した。インフラ整備の加速など財政政策に加え、追加の金融緩和も視野に入れる。
中国の1~3月期の実質成長率は前年同期比7.0%と、前の期より0.3ポイント減速した。今年の政府目標「7%前後」の水準は保ったが、6年ぶりの低い伸びだ。国内外の需要が伸び悩み、企業間取引の価格が落ち込み、企業の生産活動が鈍っているためだ。
習指導部はこれまでも「景気の下振れ圧力が比較的大きい」との認識を示してきた。今回はさらに、景気減速への「対応」を強化するという指導部の姿勢を明確にした。
具体的には、インフラ整備の加速や減税で景気を下支えする。金融政策についても「実体経済にお金がきちんと行き渡るよう」に運営する方針を強調しており、一段の利下げなど追加金融緩和に動く公算が大きい。会議は個人消費の拡大、不動産市場の健全な発展の必要性にも言及した。
もっとも「積極的な財政政策と穏健な金融政策」「穏中求進(安定の中で前進をめざす)」という従来からの基本路線は変えなかった。無理に高い成長率を追わず、安定成長と構造改革の両立をめざす「新常態(ニューノーマル)」という現状認識も改めて示した。
このため、2008年のリーマン・ショック後に打ち出した4兆元(約76兆円)対策のような、財政支出を大幅に積み増す大規模な景気刺激策に動く可能性は小さい。
一方で、足元の景気減速は「習指導部の想定以上だった」(北京の金融筋)との指摘は多い。李克強首相も4月以降、「安定成長で雇用を守ることが重大な任務だ」と、「安定成長」の重要性を繰り返し強調している。
特に習指導部が重視する雇用は、1~3月の都市部の新規就業者数が324万人と、前年同期の水準を20万人下回った。就業者数の減少は09年以来、初めてだ。政治局会議は「雇用情勢は安定している」としたものの、景気の減速を放置すれば失業者の増加など社会不安につながりかねないため、早めに政策対応を強化する必要があるとの判断に傾いたもようだ。
会議では「国有企業改革の方向性は変わらない」「過剰設備の解消を進める」などと、構造改革の重要性も改めて訴えた。景気がぐらつけば、痛みを伴う改革への国内への抵抗は増す。景気の下支えを強め、経済を安定成長軌道に乗せることで、構造改革を進める余地を広げる狙いもある。
習近平、李克強