Updated: Tokyo  2015/05/01 06:29  |  New York  2015/04/30 17:29  |  London  2015/04/30 22:29
 

日銀総裁:現時点で追加緩和の必要ない-物価の基調着実に改善

Share Google チェック

  (ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は金融政策決定会合後の記者会見で、物価上昇率が目標である2%を達成する時期は後ずれしたものの、「物価の基調は着実に改善している」として、「今の段階で何か追加的な緩和は必要ない」と述べた。

黒田総裁は「確かに2015年度を中心とする期間から、16年度前半ごろと、若干2%程度に達する見込みが後ずれしているのは事実だが、物価の基調は着実に改善しているし、今後とも改善が続くという見通しなので、今の段階で何か追加的な緩和は必要ない」と述べた。

その上で、「物価の基調が変わってくれば、躊躇(ちゅうちょ)なく政策の調整を行う考え方に変わりはない」と言明。また、「2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するというコミットメントは、これを変更する考えはない」と述べた。

日銀は30日に開いた金融政策決定会合で現状維持を決定した。その後公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、15年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比見通し(政策委員の中央値)を従来の1%上昇から0.8%上昇に下方修正。2%程度に達するのは「16年度前半ごろ」として、従来の「15年度を中心とする期間」から後ずれさせた。

3人が展望リポートに反対

黒田総裁は「原油価格下落の影響が剥落するのに伴って、物価安定の目標である2%に向けて上昇率を高めていく」と指摘。2%程度に達する時期は「消費者物価の前年比に対するエネルギー価格の影響がおおむねゼロとなる16年度前半ごろになると予想される。その後は平均的に見て2%程度で推移すると見込まれる」と述べた。

また、2%程度に達する時期について、白井さゆり審議委員から「16年度を中心とする期間に」とする案が、佐藤健裕審議委員、木内登英審議委員からは「見通し期間中に2%程度には達しないことを前提とする記述の案が提出され、それぞれ否決された」という。

原油価格の動向については、1月に置いた前提と「ほぼ変わらない動きをしている」と指摘。2%達成時期が後ずれした背景については「消費の改善の動きに若干鈍さがみられる、需給ギャップの改善がやや後ずれしているのではないかという声も聞かれたので、そういったことを反映して若干下方修正になったのではないかとみている」と語った。

出口を語るのは時期尚早

黒田総裁は一方で、「16年度、17年度にかけて2%程度の物価上昇になる見込みであることは非常に好ましいが、量的・質的緩和は2%の物価目標を安定的に持続するために必要な時点まで継続するので、その判断は、その時点までの物価上昇率の実績だけではなく、予想物価上昇率やその先の経済、物価の見通し等を見極める必要がある」と述べた。

その上で、「今の時点の見通しで出口の時期を特定できるものではない。いずれにせよ、現在は2%の物価目標に向けて最大限の努力を払っている最中なので、出口の時期や在り方を議論するのは時期尚早だ」と語った。同日開いた金融政策決定会合でも「そういう議論はなかった」と述べた。

日銀は2013年4月、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現すると宣言。量的・質的金融緩和を導入。その際、2%の物価目標を「安定的に持続するために必要な時点まで、量的・質的金融緩和を継続する」と表明した。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡徹 tfujioka1@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net 上野英治郎, 淡路毅

更新日時: 2015/04/30 17:35 JST

 
 
 
最新のマーケット情報を携帯でご覧いただけます。ぜひご利用ください。