新技術・新製品
光技術が未来を照らす−国連制定「国際光年」、長距離通信などで可能性秘める光子
香取秀俊東大教授らが開発した光格子時計システム(東大提供)
2015年は国連が定める「国際光年」。光に関するイベントや講演会が世界各地で開かれる。身近な存在であるがゆえに、表舞台に立つことの少なかった「光」が今、にわかに脚光を浴びている。国際年は、世界規模で取り組むべきテーマを国連が制定し、国際社会に呼びかける1年だ。今年は「近代光学の父」と呼ばれるハイサムの光学研究から1000年という節目の年。さらに、フレネルの光の波動説から200年、マクスウェルの光電磁波説から150年、アインシュタインの一般相対性理論から100年、カオの光ファイバーの提唱から50年でもある。(藤木信穂)
パリで行われた国際光年のオープニングセレモニー(ユネスコ提供)
カオは66年、純粋な石英ガラスを使って高効率の光ファイバーが作れると予言。4年後には実用的な光ファイバーが完成した。日本はこの分野で先駆的な業績が数多い。63年にはすでに末松安晴(現東京工業大学名誉教授)氏らが光ファイバー通信の伝送実験を実施。70年代には、川上彰二郎(現東北大学名誉教授)氏らが光ファイバーの高性能化技術を、伊澤達夫(現千歳科学技術大学理事長)氏らが光ファイバーの製造技術(VAD法)を発表した。
80年代になると伊賀健一(現東工大名誉教授)氏らが、現代の高速光通信に欠かせない面発光レーザーの室温連続動作に成功。中沢正隆(現東北大教授)氏らは、光通信の大容量化につながるエルビウム添加光ファイバー増幅器を開発した。次世代光源として注目されている量子ドットレーザーも、この頃提案されている。
歴史上の光技術の偉業(ユネスコ提供)
最近の顕著な成果を挙げるならば、一つに「光格子時計」の研究がある。香取秀俊東大教授らは理化学研究所と共同で、160億年たっても1秒しか狂わない究極の時計を開発した。光格子時計と呼ばれるこの時計は、現在の「秒」を定義するセシウム原子時計を1000倍近く上回る世界最高の精度を持つ。秒の“再定義”を迫るだけでなく、「スーパークロック(超時計)は従来の時計の概念を覆す。光格子時計ネットワークとして、社会実装も検討する」と香取教授は力を込める。
「光子」を操り、量子暗号通信や量子コンピューターを実現しようとする研究も活発だ。古澤明東大教授らは3月、アインシュタインが提唱した「光子の非局所性」と呼ぶ物理現象を世界で初めて実証。これまで説得力のある検証ができず、物理学における100年来の論争と呼ばれた解釈に決着がついたとされた。
NTTが今月発表した、光子だけで長距離の量子暗号通信が行えるという新概念も注目に値する。従来は必須だと思われていた量子メモリーが不要になり、長距離の量子暗号通信が容易に実現すれば、「量子インターネット」という新分野が近い将来に開ける可能性がある。「光子が次世代の量子情報処理技術の統一言語になる」(NTT)との見方もある。
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