安倍晋三首相が29日午前(日本時間30日未明)、米議会の上下両院合同会議で演説した。首相の演説は英語で約45分にわたった。
■米上下両院の合同会議演説、日本の首相として初
米議会の上下両院合同会議は米大統領の一般教書演説など特別な機会に開くもので、両院の議員が一堂に集まる。日本の首相は安倍晋三氏が初めてだが、他の主要7カ国(G7)首脳はこれまでに複数回、演説している。
アジアでは韓国の6回が最も多く、インド(4回)やフィリピン(3回)が続く。
■「痛切な反省」を引用
1995年に当時の村山富市首相が発表した戦後50年談話から「痛切な反省」という表現を引用した。第2次世界大戦でアジア諸国に苦しみを与えた事実にも言及した。
首相は演説で日本の「加害責任」にも触れながら、「思いは歴代首相と全く変わるものではありません」と約束してみせた。
ただ、今夏に発表する戦後70年談話をにらみ、中国や韓国が注目する「侵略」や「おわび」は使わなかった。
「侵略」と「おわび」が戦後70年談話で使われるかどうかが、中韓などが歴史認識の変化をはかる尺度になりつつある。それでも首相に抵抗感があるとされ、使うのを避けたとみられる。
■中国、韓国は警戒
中国の通信社、中国新聞社(電子版)は安倍首相が日米同盟を「希望の同盟」と呼び、安全保障法制を整備して同盟強化を目指す方針を強調したと伝え、警戒を促した。
韓国紙は30日付の朝刊で1面や社説を通じて安倍首相の演説内容を詳しく報じた。東亜日報は1面で「謝罪はおろか自賛ばかり、安倍の40分の詭弁(きべん)」との見出しで、韓国などに対する謝罪が無かったと批判した。
中国が焦点絞り批判 安倍演説、韓国メディアは「不十分」(4月30日)
■TPP交渉妥結に期待
安倍首相は演説で環太平洋経済連携協定(TPP)の早期妥結への意気込みを表明した。
「米国と日本のリーダーシップでTPPを一緒に成し遂げましょう」。29日の米議会演説で、安倍首相は米上下両院の議員らにそう訴えかけた。
TPP交渉の妥結には米議会が通商協定の内容を修正できなくする「貿易促進権限(TPA)」法案の成立が不可欠。そう確信する交渉参加国を代表し、米議会にTPAの成立を促した格好だ。