20年ぶりにドラゴンボールを一気読みした。
ドラゴンボールZ 復活の「F」公開記念ということでKindleで20%オフになっていたドラゴンボールをスーパー大人買いして一気に読んだ。Wikipediaで調べてみると、ジャンプでの連載終了が1995年になってるから、通しで読んだのは20年ぶりぐらいになるらしい。
今読んでも全然色褪せることなく面白くて夢中になって読んでしまったんだけど、あのころとはやっぱり自分が注目するところが違っていて、ただただバトルだけをワクワクして読むという感じではなくなっていた。おっさん化するってのはこういうことかー、としみじみ思う。
明らかに自分は「その他大勢」に属する人間だと認識するようになってしまった今、選ばれたエリート孫悟空やら孫悟飯の活躍よりも、雑魚扱いされていくキャラたちのほうがどうにも気になってしまうのだ。当時はたぶん、さらりと流していたのになぁ。
ドラゴンボールの挫折に注目してみる。
ヤムチャ編
(DRAGON BALL カラー版 人造人間・セル編2 其之三百四十三 ベジータ出現より)
DRAGON BALL カラー版 人造人間・セル編 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 鳥山明
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/09/04
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哀しいかな挫折と聞いてさっと思い浮かんでしまうのが、このヤムチャなので真っ先に取り上げてみる。挫折というか、そもそも華々しく活躍するシーンもないんだよなぁ。
クリリンより早くかめはめ波を体得しても、天津飯にやられ、繰気弾という新たな技を生み出しても、シェン(神様)にやぶれ、ついに栽培マンには殺され、人造人間20号には、一瞬で瀕死に追い込まれる。
これだけ努力が報われることがなかったら、そりゃ心が折れないほうがおかしい。どう考えても、初登場キャラの強さを見せつけるためのモルモット的扱いだもんなぁ。ヤムチャが必死に修行してる姿とかはあまり描かれることがなかったけど、それを想像しつつ「オレが一番役に立ちそうにない」なんて言うしかない状況に至った心境を思うと正直泣ける。
まぁ、熟年にはなってしまったけど、気の強いブルマよりも癒してくれる感じの女性とシアワセになってほしいと願うばかりだ。
亀仙人編
(DRAGON BALL カラー版 人造人間・セル編4 其之三百六十九 人造人間対セルより)
DRAGON BALL カラー版 人造人間・セル編 4 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 鳥山明
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亀仙人は初期の段階で天津飯らが登場したときに、世代交代を意識して一線を退く。ただ、それでも武術の心得ある者として、自分の弟子が強大な敵と必死に戦い、ときには命を落とす姿を見ていながら、何もできずに見守るだけというのは、耐え難いものだろうと想像する。
また、少なくとも約300年ぐらいは「世界一の武天老師」ともてはやされてたんだろうから、ただのスケベじじいに成り下がってしまったと受け入れたときの心境はどんなものだったんだろう。というか、亀仙人は何歳まで生きられるんだろうか?もし、世界一の武天老師として生きた年数より、ただのスケベじじいとして生きる年数のほうが長かったら、ちょっと切ない。
天津飯編
(DRAGON BALL カラー版 人造人間・セル編4 其之三百七十 新生ピッコロ決死の抵抗より)
DRAGON BALL カラー版 人造人間・セル編 4 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 鳥山明
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自分のことを「オレ様」とか言っちゃうような、めちゃくちゃ尊大なキャラとして登場した天津飯。しかし、ピッコロ大魔王が現れたことで、あっという間に雑魚キャラ化して、ナッパに命がけの気功砲を放つも効果なく絶命。人造人間17号にはなす術なく、一瞬で瀕死状態に追い込まれる。
ただ、天津飯の場合は、レベルが違うと認識しながらも新気功砲の連打でセルが完全体になるのを阻止したり、サタンとデンデをブウから救ったりしてるから、非力ながらも最後まで活躍の場が与えられていて、ちょっと救いがある感じ。
でも、あれだけ強さを追い求めることを目的として生きてきた天津飯が、自分の非力さを思い知らされ、もはやそれを求めても無意味と悟った後、何を拠り所に生きようとしたのかは少し気になる。引退宣言ともとれる「たぶんみんなにはもう会うことがないとおもう」と言うに至るまでには、きっと様々な葛藤とあきらめがあっただろうな。
クリリン編
(DRAGON BALL カラー版 フリーザ編3 其之二百七十七 笑うフリーザより)
DRAGON BALL カラー版 フリーザ編 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 鳥山明
- 出版社/メーカー: 集英社
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悟空のライバルであり、親友でもあるクリリンは、地球人としては最強を極めながらも雑魚キャラ化していく。ただ、クリリンの場合は最初に亀仙人に弟子入りしたときに「武術に強くなって女の子にモテたい」とか言ってるから、もともと強さは正義!みたいな価値観じゃない。
クリリンの境遇はなかなか悲惨で、ピッコロが現れる前にいきなり絶命したり、ナメック星の最長老に力を引き出してもらっても、リクームの一蹴りであっさり瀕死状態になったり、悟空がスーパーサイヤ人になるきっかけとしてフリーザーにあっけなく命を奪われたり、ダーブラに石にされたり、ブウにチョコにされて食われたりとひどい扱いを受け続ける。
でも、最終的には18号と結婚して可愛いマーロンも授かってシアワセになれたからよかったなぁ。他のキャラたちと違って、クリリンはひたすら強さを追い求めるストイックな性分じゃないから、戦士としては挫折しても、人生に挫折はしてないということが作品中で見てとれるから、ほっとする。
ピッコロ編
(DRAGON BALL カラー版 人造人間・セル編8 其之四百十四 思わぬ形成逆転より)
DRAGON BALL カラー版 人造人間・セル編 8 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 鳥山明
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もともとピッコロは世界を手中に収め、魔の世界を創りあげるという野望を持っていたわけだけど、次から次へと強敵が現れてそれどころじゃなくなった。そのうえ、力を得るための手段として、ネイルやら神様やらと融合していく中で、もともと持っていた野望はどこかへ行ってしまったらしい。それは神様が融合前に語った「かつてのような邪悪な心はもうずいぶん消えておる」という言葉をピッコロが否定しなかったことからも解る。これは挫折とはちょっと違うな。
ピッコロは融合を繰り返したから、精神状態を追ってみると滑稽な状態に陥っている。ネイルと融合して自信満々でフリーザに挑むも、第2形態フリーザには敵わず、あっという間に雑魚キャラ化して弱音を吐きまくる。次は神様と融合してセルや17号と互角に戦う力を得たものの、その後、人間エネルギーを吸収しまくったセルには全く歯が立たず、またもや雑魚キャラ化してしまう。
ただ、ピッコロは自身の強さを追い求めることより、戦士を育成することに喜びを見出すようになった。セルとの戦いに挑む前にピッコロと同じ服をほしがる悟飯にうれしそうに応えるピッコロ。トランクスと悟天に根気よくフュージョンを教えるピッコロ。そこには、自身の強さを追い求めるよりも、生き生きとしたピッコロの姿をみることができる。
ベジータ編
(DRAGON BALL カラー版 フリーザ編6 其之三百八 ベジータ死す!!より)
DRAGON BALL カラー版 フリーザ編 6 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 鳥山明
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ベジータはフリーザとの戦いの中で壮絶に挫折しているし、幾度となく悟空に一歩先をいかれる度に挫折感を味わっている描写がある。ただ最終的には挫折を受け入れてなくて「かならず勝ってみせる」という言葉を残しているので、他のキャラと並べて語るのはちょっと違うかもしれない。
セルとの戦いが終わった後「オレはもう戦わん」なんてベジータらしくない台詞を吐きながら挫折していて、次に登場したときには「トレーニングをつづけていた」から天下一武道会に出るとあっさり言ってのける。まぁ、挫折を受け入れて戦わないベジータなんてベジータじゃないもんなー。働きもしないみたいだから、完全に生きる意味を見失いそうだし。
ベジータだけは、何回挫折しても、あきらめず悟空に勝つことに執着し続けていてほしい。
今の感性で違った楽しみ方ができるのは面白い。
ずいぶん長々と書いたけれど、昔読んだマンガを今読み返すと、また違った視点で見ることができて面白いな。ついアラ探しばかりしてしまいそうになるけど、そうじゃなく、勝手にキャラクターの心情を深読みしたりするのは自己満足の極みだけど、なかなか楽しい。
ただ、ブログに書こうとすると、やたら時間がかかるのが難点かもしれないし、ここまで書こうと思えるマンガもそう多くはないかもしれないな。