ここから本文です

乃木坂46が描いた“アンダー”の未来図  「サード・シーズン」で確立したブランド力を読む

リアルサウンド 4月23日(木)11時44分配信

 4月14日からスタートした「乃木坂46 アンダーライブ サード・シーズン」は、19日の夜公演でファイナルを迎えた。およそ一年前、8thシングル『気づいたら片想い』の全国握手会後に開催されたアンダーメンバーによるライブは、目覚ましい速度で2014年の乃木坂46の目玉のひとつへと成長し、12月12日の有明コロシアムでのライブでその集大成を迎えた。それを踏まえた今回のサード・シーズン、乃木坂46のアンダーメンバーは、この一年で積み重ねてきた歴史と自信によって、組織としてまたひとつ別の段階に進んだように見える。今回のライブの特徴である、MCタイムを排したノンストップのセットリストも、そんな今の彼女たちのパワーや自信を示すものだろう。

 昨年のアンダーメンバー大躍進の象徴だった伊藤万理華や齋藤飛鳥が、11thシングル『命は美しい』では選抜組に移った今回のメンバー構成の中で、アンダーのセンターを務めるのは中元日芽香。アイドル然とした振る舞いを志向しながら、同時に芯の強さを隠すことなく端々で表してきた中元をセンターに据え、その選抜組の表題曲「命は美しい」からアンダーライブは幕を開ける。控えめなパーソナリティと存在感の大きさが同居する選抜センターの西野七瀬とは大きく個性の異なる中元のセンターもまた頼もしく、「命は美しい」の楽曲としての強さを、選抜組とは別の彩りで表現する。アンダーライブ最終日の公演のアンコールMCで中元は、「選抜経験の少ない自分は、アンダーにとっての“新しい風”になってあげることができない」「けれどアンダーとしての時間を長く経験してきた自分にはみんなの気持ちがわかる。それが強みになれば」と、センターとしての思いを告白した。それは中元自身の意志を示すものであると同時に、アンダーライブが歴史を積み重ね、そのセンターポジションに立つ意味が重くなったことも示していたる。光の当たることの少ない非選抜メンバーの活動の場として萌芽したアンダーライブだったが、いまや乃木坂46のライブパートを支える、グループ全体にとっての重要な武器になった。

 この一年でメンバーが築いてきたアンダーライブの充実度は、ライブ構成の要所要所にもうかがえる。序盤に設けられたメンバー紹介パートでは、一人一人ソロダンスを披露して個性を示す。そしてメンバー紹介パートが終わると、オリジナルでは白石麻衣と橋本奈々未が歌うデュオ曲「孤独兄弟」を10人構成でパフォーマンス。川村真洋と中田花奈を中心にした5対5のフォーメーションで、この曲に新鮮な解釈を与えてみせた。もともと乃木坂46の中でも目を引くパフォーマンスを見せる川村と中田は、このサード・シーズンでも動きでチームを引っ張った印象がある。スキルの方向性は互いに大きく違うが、この二人が中元日芽香、井上小百合、斉藤優里といった中央に立つメンバーの脇を支えることで、その見栄えはぐっと豊かになった。「孤独兄弟」の直後には中元を中心とした残りの10人が登場して「コウモリよ」のパフォーマンスに移る。「孤独兄弟」のメンバーに対抗するような勢いは、アンダーライブが単に持ち曲披露の場ではなく、アンダーメンバー内でも良い拮抗関係がつくられていることを見せつけるようで心地いい。

 またこのサード・シーズンでの大きな進化は、前回のアンダーライブではまだ研究生として位置づけられていた伊藤純奈、佐々木琴子、鈴木絢音、寺田蘭世、山崎怜奈、渡辺みり愛が、初めて他のメンバーと同様に正規メンバーとしてライブを迎えたことである。すでに昨年12月の有明コロシアム公演の「全員センター」企画では彼女たちもセンターに立つ機会を与えられ、アンダーライブの成員としては他のメンバー同様の活躍をしていたものの、研究生という肩書きは外れていなかった。今回、彼女たち6人もはじめから正規メンバーとして楽曲内でのポジションを託され、正規メンバー20人用のフォーメーションが完成した。2期生が加入して以降、「研究生」という肩書きは長らく、1期生と2期生との溝を暗示するような言葉にもなっていた。今年2月のバースデーライブでその言葉が取り払われたことはその溝を埋めるための重要な一歩であったし、正規メンバーとして臨んだこのアンダーライブの活動によって彼女たちはさらに確かな位置を得た。だからこそ、アンコールで披露された6人のユニット曲「ボーダー」は、研究生としてのこれまでと、他のメンバーと一線に並んだ現在とを繋ぐ、開かれたものになった。

 今回のアンダーライブは11thシングルのアンダーメンバーとしての活動であるため、センターの重責を背負ったのは11thのアンダー曲センターの中元だった。しかしまた、昨年からのアンダーライブの支柱として名が刻まれなければならないのは、やはり井上小百合だ。乃木坂46デビュー時からの選抜常連メンバーだった井上がこの一年余り、アンダーに入ることも多い不安定なポジションで見出したのは、ライブを充実させる組織としてのアンダーメンバーの柱の役割だった。伊藤万理華や中元のようにはっきりとした「顔」としてのセンターというよりも、フロントとバックを柔軟に動き回りライブを支えた井上の存在があってこそ、アンダーライブには懐の深さが生まれた。体調が万全でない中で、左膝にテーピングを施してアンダーライブを迎え、一部公演を休演しながらもステージに立ち続け、最終日にはそのテーピングが両膝になっていた。しかし満身創痍になりながらセンターに立つ「何度目の青空か?」の井上は気高く、この曲が選抜メンバーの代替ではなく、彼女をセンターとした別バージョンのオリジナルとして生きていることを感じさせた。選抜かアンダーかに限らず、彼女の存在は乃木坂46にとって大きなものになっているはずだ。

 サード・シーズンを迎えたアンダーライブは、彼女たちがアンダーメンバーであることの意味を一変させた。アンコールでは過去のシングルのアンダー曲すべてをメドレーで披露し、これまでの歩みを立体的に浮かび上がらせる。もちろん、アンダーライブという場が作られる以前から「アンダー」は歴史を積み重ねていたし、その日々があるからこそ現在のアンダーライブの躍動がある。その歴史を、このサード・シーズンのアンコールではくっきりと縁取ってみせた。乃木坂46の「アンダー」はいまや、選抜から漏れたメンバーという立場からある意味で解放され、選抜とはまた違う色を見せるひとつのブランドになった。性質上、アンダーメンバーも選抜メンバーもそのつど、その人員を変化させていく。しかしその時々のメンバーが、「アンダー」というブランドを背負い、プライドを見せるライブを続け、またこのブランドを継承していくのだろう。歴史の蓄積とともに、そんな未来図が描けたことは「乃木坂46 アンダーライブ サード・シーズン」の貴重な収穫だった。

※山崎怜奈の「崎」は「可」の上に「立」が正式表記。

香月孝史

最終更新:4月23日(木)11時44分

リアルサウンド