きらびやかな夜の繁華街で数えきれないほどの人々に声をかけ続ける、新宿・歌舞伎町の客引き・呼び込み。最近ではぼったくり居酒屋なども大きな話題になり、当然いい印象はありません。しかし彼らの言葉に乗せられてしまう人たちが多いのもまた事実。
ライターの渡辺大輔と申します。最近引っ越して繁華街に住んでいるのですが、客引きの手口を見ていると、いくつかの共通点があることに気づきました。通り過ぎようとするわずかな時間、巧みに相手の興味を引きつける彼らの手法には特徴的なものが多く、我々ビジネスマンのディベートやプレゼンにも応用できるエッセンスが詰まっているのではないでしょうか。今回は超短時間でプレゼンを成功させる方法をご紹介します。
1. 「話を聞いてくれるサイン」は視線で見極める
「◯っぱい◯っぱい夢◯っぱい」
これはとある繁華街での客引きから実際に耳にしたフレーズ。さっそく皆さんの気を引くため、あえて伏字にしてみましたが、正しくは「おっぱいいっぱい夢いっぱい」でした。これは特定の誰かに向けた声かけではなく、道行く人々から興味を持ってくれそうな人を見つけ出すための導入です。
平たく言ってしまえば「私は『おっぱいパブ(おっパブ)』という夜のお店をご紹介できますよ」ということですが、短くも耳に残るインパクトあるフレーズで表現していますね。彼ら客引きにとって、ここで相手が「えっ!?」と視線を向けてきたらしめたもの。これから提案する内容によっては、乗ってくれるというサインでもあります。
超短時間プレゼンでも自分が提供できる価値を周囲にアピールする姿勢は重要。どんな仕事をしているのか、どんなスキルを持っているのかわからない人物からの提案は、なかなか受け入れられるものではありません。自らを短くキャッチーに言い表すキーワードを持つこと。これは今すぐにでも取り入れられる手法と言えるでしょう。
ポイント1
普段から自分の持つ価値をわかりやすく発信しよう。相手の視線を見て「話に乗ってきそうか」を見極めよう。
2. 客引き話術を「エレベーターピッチ」に応用する
街頭の客引きは「どうですか? これから飲みのほうは?」「今日お遊びは行きませんか?」といきなり本題を投げかけます。相手とコンタクトできる時間が30秒以内だと思えば、本題以外の無駄な言葉を極限まで削ぎ落とすことが大切。自己紹介などをしていたら、あっという間に通り過ぎられてしまいますよね。
ビジネスの現場でも超短時間で企画を説明する技法として、「エレベーターピッチ」が使われることがあります。これはエレベーターが目的のフロアに昇降するまでの時間内に手早くプレゼンするというもので、多忙な上司やクライアントへの売り込みをおよそ15~30秒程度で素早く行うのがポイント。まさに客引きの手法そのものなのです。
客引きが自己紹介などをしないように、エレベーターピッチでも「◯◯を実現できる新規事業のアイデアがあります」と、いきなり本題の提案から始めるのが合理的。そして限られた時間を無駄にしないよう、企画の概要を間髪入れず一方的に話し続けるのです。
ポイント2
切り出すのは本題から。30秒以内で相手の興味を引くことを意識しよう。
3. ビジネスシーンでも「具体的な数字はセクシーだ」と知れ
超短時間プレゼンでは事前にキャッチーな言葉を用意しておくよう心がけたいところ。お金の話など、具体的な魅力(セクシーさ)を感じさせる数字が入っていればベストですね。「90分飲み放題2,000円、女の子2人つけちゃいますよ!」といった客引きフレーズを参考に「プロジェクトチームに2人つけていただければ、年間の営業利益を今の5倍にしてみせます」などの具体的かつ魅力的なアピールを用意しておきましょう。
ただし、企画の詳細をここですべて説明する必要はありません。この数十秒のプレゼンは相手に興味を持ってもらうことが最大の目的。「その話、詳しく聞かせてもらおうか」と交渉のテーブルについてくれれば大成功です。客引き的に言うなら、「1名様ご来店です! ありがとうございまーす!」といったところでしょうか。
ポイント3
短時間にすべてを盛り込む必要はないが、魅力的な数字をちりばめることを心がけよう。
まとめ 「不屈の精神」こそが客引きテクの真髄
こうした客引き流の超短時間プレゼンは、伝えられる情報量の少なさ、そして相手が必ずしも集中して聞いてくれるとは限らないという難しさから、決して成功率は高くないのが現実です。人によってはそのヒット率の低さに落ち込むことがあるかもしれません。
しかし、上手くいかなかったことを気に病んで消極的になってしまうと、さらなる悪循環が待っています。何度無視されてもやり続けること、失敗を振り返って企画の内容やフレーズの魅力をブラッシュアップしていくことこそが成功への近道です。
くじけそうになったら夜の街に出て周りを見回してみてください。あなたの企画が無視された回数よりはるかに多く、客引きたちも「失敗」を繰り返しています。それでも道行く人々に声をかけ続ける……そんな彼らの姿に勇気をもらえるかもしれません。