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【社説】

経済・通貨外交 和解が新たな地平開く

 台頭する中国を前にして日米の経済外交が迷走している。日本は米国と連携しながら中国、韓国との関係改善、和解を通じて東アジアの安定と経済発展に重要な役割を果たす時ではないか。

 「二十年後、三十年後に米国は締め出されているかもしれない」−。陰りが見え始めているとはいえ、唯一の超大国アメリカの大統領が今月十七日の記者会見で口にした言葉に、多くの人が驚いたのではないか。

 中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の実現が三月末、確実になった。これに対し、日米が主導する環太平洋連携協定(TPP)は難航している。失敗すれば米国はアジア経済圏で足場を失い、締め出されてしまうという危機感をオバマ大統領の厳しい顔が示していた。

 それにしても、経済・通貨外交でこれほどの情報収集の失敗はあっただろうか。

 先進国の参加を止めてAIIBの影響力を削(そ)ぎたい米国と日本の根回し、情勢判断とは裏腹に英国など先進国は雪崩を打って参加を表明。領土問題で中国と対立するフィリピンやベトナムも加わった。一方、領土や歴史認識での深刻な対立もあり、米国とともに取り残される形となった日本は今、参加すべきかどうか難しい判断を迫られている。

 ただ、より大きな問題は「締め出される」という米大統領の言葉が浮き彫りにした保護主義の影ではないか。

 TPPなどの地域経済協定は、相手国を選別しない自由な貿易秩序づくりを目指しながら行き詰まっている世界貿易機関(WTO)の補完と位置付けられている。

 そのTPPが日米によるAIIBへの対抗策、中国包囲網に変質すれば、中国も検討中のアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)で対抗し、自由貿易の理念とは逆の地域主義や保護主義、新たな紛争につながりかねない。

 この分水嶺(れい)ともいえる時期に日本はどんな役割を果たせるのか。同じ敗戦国のドイツは、戦後の長い年月を費やして周辺国との和解を進め、欧州の経済統合を主導している。

 成長するアジア経済圏で対立を避け、自由で安定した経済秩序をつくるため、日本はまず中国、韓国との関係を改善し、周辺国との和解を通じた経済外交に取り組むべきではないか。和解と信頼なくしてアジアに新たな地平を開くことはできない。

 

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