「クローズアップ現代」報道に関する調査報告書 2015.04.28


この時間は予定を変更して、お伝えします。
去年5月に放送した、追跡出席詐欺について、やらせがあったのではないかと指摘されています。
この問題について、NHKはきょう、記者会見を開き、調査報告書を公表しました。
その内容についてお伝えします。
今回、NHKの報道番組におきまして、視聴者の期待に反する取材・制作が行われたこと、誠に遺憾であるというふうに思っております。
視聴者の皆様に心より深くおわびします。
クローズアップ現代に出演した男性が、いわゆるやらせがあったとして、訂正を求めている問題で、NHKはきょう、調査報告書を公表しました。
その中で、事実のねつ造につながる、いわゆるやらせはなかったものの、裏付けがないまま、この男性をブローカーと断定的に伝えたことは、適切ではなかったとしています。
多重債務者を次々と出家させて、別人に仕立て上げ…。
やらせが指摘されたのは、去年5月14日に放送した番組です。
多重債務者を出家させて、戸籍上の名前を変えさせ、金融機関からさらに金を借りさせる出家詐欺。
その実態に迫る内容でした。
調査の主な対象となったのは、およそ3分30秒の場面。
出家をあっせんするブローカーと紹介した男性A氏と、多重債務者B氏との、相談のやり取りなどです。
私たちは、出家をあっせんするブローカーの1人が、関西にいることを突き止めました。
その場面は、記者がオフィスビルを訪ねるところから始まります。
この部屋をブローカーの活動拠点と紹介しました。
A氏にブローカーとして、出家詐欺の手口を聞くインタビュー。
そしてA氏が、多重債務者B氏の相談に乗る場面。
ちょっと金融のほうが、苦しくなりまして。
こちらさんにさえ来れば、もう一度やり直せると伺ってきたもので。
そのあと、B氏にもインタビューを行っています。
この場面について、A氏は自分はブローカーなどではなく、記者に演技するよう依頼されたと主張しています。
NHKでは、副会長を委員長とする調査委員会を設けました。
弁護士と大学教授の3人が、外部委員を務めました。
A氏やB氏、それにNHKの職員など、合わせて43人から聞き取りを行いました。
指摘されたようなやらせがあったかどうか、調査しました。
編集前のおよそ40分に及ぶA氏のインタビューテープを検証しました。
その中でA氏は、みずからのことを、われわれブローカーと称し、仲介する寺や住職の見つけ方、勧誘のしかたなどを詳しく語っています。
さらに、相談のやり取りを撮影したおよそ19分の映像では、A氏は専門用語を用いながら、出家して名前を変える方法を、詳しく説明。
ひとつきか、ふたつきくらいで本籍地を転籍してほしいの。
そうすることによって、債権者が追及できないと述べるなど、出家を利用した戸籍の変更に、なんらかの関係がある者でなければ知り得ない知識や情報を多く含んでいました。
また、記者がA氏と会うのは、撮影当日が2度目。
前の年の10月ごろに会って以降、一切連絡を取っていませんでした。
このことは、A氏も認めています。
撮影当日、記者が利用したタクシーのGPSを調べると、A氏と打ち合わせできた時間は最大30分。
報告書は、一度しか会っていない相手に、いきなりブローカーを演じさせるのに、この程度の時間で打ち合わせが済むとは考えられないとしています。
A氏はインタビューや相談で語った内容について、以前に出入りしていた寺の住職から聞いた話や、寺で見聞きした話、知人からの聞きかじりの話などを、パッチワークみたいに張り合わせたものなどと、今回の調査で述べています。
報告書では、A氏を出家をあっせんするブローカーに仕立てる時間や機会はなく、A氏は自身のそれまでの知識や体験に基づき、演技の指導などを受けることなく、出家詐欺の手口を詳細に語ったと考えるのが妥当だとしています。
しかし、実際のブローカーであると断定して、放送でコメントするには、裏付けがありませんでした。
例えば、A氏の仲介で、実際に出家して名前を変えた人物を確認するなどの裏付けは、今回の調査でも確認されませんでした。
A氏をブローカーと断定的に伝えたことは、適切ではありませんでした。
この相談の場面は、やらせだったのか。
出家の相談をしたB氏についても、調査を行いました。
B氏は出家について、複数の人に話をしていたことが分かりました。
B氏とは古くからの知人だという住職によれば、平成25年の年末ごろ、B氏から、借金が多くて苦しいと電話があり、その後、出家して名前を変え、金を借りたいとの相談があったと証言しています。
B氏には、複数の消費者金融などから、数百万円の借り入れがあり、多重債務の状態であることも確認しました。
今回の調査の結果、B氏は本当に出家を考えていたと思われます。
記者はB氏から、A氏に相談に行くと言われて、やり取りの撮影を考えました。
また、A氏は、相談やインタビューで語った内容について、記者から具体的な指示などはなかったといいます。
こうした点を考慮すると、記者が意図的に、または故意に、架空の相談の場面を作り上げ、A氏とB氏に演技をさせたとは言えず、事実のねつ造につながる、いわゆるやらせは行っていないと判断しました。
番組では、記者が訪れたビルの一室を、ブローカーの活動拠点とコメントしましたが、それは誤りでした。
調査の結果、ビルの一室は、B氏の知人が借りているものであったことが分かりました。
記者はA氏に直接確認をしておらず、裏付けが不十分でした。
報告書では、今回の調査で、取材・制作上のさまざまな問題や課題が明らかになったとしています。
問題になった場面では、過剰な演出や、視聴者に誤解を与える編集が行われていました。
番組の流れは、まず記者がブローカーの存在を突き止め、活動拠点を取材。
そこに訪ねてきた多重債務者との相談を撮影。
その後、多重債務者を追いかけて問いただします。
しかし、実際の取材の流れは、記者が、かねてからの知り合いのB氏を通じて、ブローカーとしてA氏を紹介されていました。
どうして実際の取材過程とは違う場面になったのか。
報告書は検証しています。
この番組が企画されたきっかけは、平成25年に、滋賀県大津市の寺を舞台に起きた出家詐欺事件でした。
この事件を取材していたNHK大阪放送局と、京都放送局のチームは、まず、関西のローカル番組、かんさい熱視線での放送を企画します。
記者は、出家詐欺に詳しい人物と接触しようと取材を進めていて、その1人が事情通としてつきあいのあったB氏でした。
平成26年3月上旬ごろ、記者がB氏に、出家詐欺に詳しい人物はいないかと電話で聞いたところ、B氏は、自分自身が近く相談に行くつもりだと答え、相談相手としてA氏の名前を告げたといいます。
しかし、3月13日に記者が作成し報告した取材メモは、事実と異なるものでした。
ブローカーに接触することができ、ブローカーのもとに相談に来る多重債務者も撮影できると記していたのです。
事実と異なるメモについて、記者は、ネタ元の話をそのまま見せることに抵抗があった。
相談が撮影できることには変わりないという認識だったと話しています。
この取材メモの内容が、取材・制作チームに伝えられ、誤った認識のまま、制作が進められました。
4月19日、撮影当日。
記者はA氏、B氏と共にタクシーに乗り、撮影現場へ向かいました。
撮影現場には、ディレクター、カメラマン、音声照明スタッフが、先に到着していました。
午後5時過ぎ、撮影はまず、B氏がA氏に相談するところから始まりました。
カメラマンとディレクター、音声照明スタッフは、斜め向かいのビルの屋上に移動し、ブラインド越しに室内を撮影しました。
こちらさんにさえ来れば、もう一度やり直せると伺って来たもので。
あたかも2人が密室で相談しているかのように、隠し撮り風に撮影していました。
このときの部屋の見取り図です。
撮影は、記者が部屋に残ったまま行われました。
テープには、記者の声が収録されていました。
撮影前には、よろしくお願いします、10分か15分やり取りしてもらって、などと話し、やり取りが一通り終わると、お金の工面のところのやり取りが、もうちょっと補足で聞きたいなどと、声をかけていました。
声かけについて、記者は、内容が分かりにくく、視聴者に伝わらないのはもったいないと思って声をかけた。
話を方向性を変えるとか、意図した展開に持っていくとかでは全くないと説明しています。
今回の撮影について報告書は、視聴者は、部屋に記者がいて声をかけているとは思いもよらないであろう。
記者の行為は、みずからに都合のよいシーンに仕立てようとしたのではないかという疑念を持たれかねず、不適切なものだった。
また、隠し撮り風に撮影したことについても、決定的なシーンを撮ったように印象づける、過剰な演出を行ったと指摘しています。
撮影に同行し、編集を担当したディレクターは、実際の取材過程とは異なる編集を行いました。
撮影現場に、A氏とB氏が一緒に現れたのに、記者と2人の関係について、確認することなく、編集を進めていきました。
そして、この場面が関西ローカルの番組で放送された5日後、クローズアップ現代での放送が決まりました。
NHKの番組制作では、放送前に、上司が編集された映像やコメントをチェックする、試写が繰り返し行われる仕組みになっています。
しかし、取材デスクは、記者から誤った情報を報告されていたことも影響し、疑問点を問いただすなどの対応ができませんでした。
いずれの試写においても、編集責任者やプロデューサーから、A氏をブローカーと断定してよいのかどうか、活動拠点というコメントの是非などについて、特段の議論はありませんでした。
記者が取材・制作チームの中で、事実と異なる報告をしていたこと、上司も記者から取材経過などを確認しようとしなかったことは、正確な報道の基本となる情報共有というルールを逸脱していました。
以上が調査のポイントと取材・制作上の問題点でした。
調査に参加した外部委員は、今回の取材・制作チームは、報道機関として、基本的なことができていなかったと指摘しています。
本来あるべきではないような取材や編集、構成の在り方があったということは、これは十分反省に値することだと思います。
専門的な強みを持ってるからといって、特定の1人の人、あるいは2人の人だけに任せない、チームワークで仕事をしていくということ、ごく普通のことを、やっていくということを心がけるということではないかと思いますが。
視聴者の皆様に、心より深くおわびします。
きょう行われた記者会見では、今回の問題についての質問が相次ぎました。
過剰な演出ってありますが、これはもう、明らかに普通の人が見たらですね、真実と違う、印象と違うことが行なわれていたということなんで、これ、言い方が違うだけで、これはもう、やらせと言ってもいいものなんじゃないかと思うんですけど、いかがでしょうか。
NHKさんのおっしゃることと、たぶん、視聴者が見て、印象、私もそうでしたが、全く違うことになると思うんですが、それでもこう、認定はしないというのは、もう結論ありきじゃないかなという。
もっと取材・制作の過程、特に編集の過程で、議論をしなかったのかというところは、まさに今回、課題・問題であると、われわれ調査委員会でも、認識しております。
記者も含めた取材陣が意図的にですね、故意に演出をしたというものではないというふうに思っていて、過剰な演出であるという判断をいたしたということでございます。
また、NHKの報道姿勢への指摘に対し、次のように述べました。
今回のケースは、しっかりと反省し、教訓にすべきだというふうに思っておりますんで、その原点にいま一度、しっかりと戻ろうということが一番大事なところだなというふうに思っているしだいでございます。
再発防止・改善に向けて、何が必要か。
報告書は、4項目にわたって記しています。
特に教訓にすべきとしたのが、匿名インタビューについてです。
匿名といえども、正確さと事実確認の必要性に変わりはありません。
今後は、取材先はどんな人か、どのように確認しているかなど、10項目について、取材担当者だけでなく、上司も必ずチェックします。
さらに、スクープ性やすごさを必要以上に強調する映像や構成への、慣れのような意識が、放送現場に広がっていないか。
ジャーナリストとしての原点を見つめ直す勉強会や研修を、全国で実施し、取材・制作の基本を確認していくことが必要だと指摘しています。
今回の調査の結果、取材・制作上、さまざまな問題や課題が明らかになりました。
事実関係の誤り、適切でない表現、そして過剰な演出等々、反省すべき点は数多くあります。
何よりも大事なのは、事実関係の確認であります。
事実関係の確認なくして、どんなにすばらしい企画や提案であっても成り立ちません。
NHKの放送は、正確でなければならない。
この原点をいま一度、見つめ直し、再発防止に向けて、全局的な取り組みを進めてまいります。
きょう公表された、クローズアップ現代報道に関する、調査委員会の調査報告について、お伝えしました。
ここで今回の調査報告で、視聴者の期待に反する取材・制作が行われたと指摘された、去年5月14日放送のクローズアップ現代を、視聴者の方々にお伝えしたキャスターとして、私からもひと言申し添えたいと思います。
まず一部に、事実関係の誤りや、放送ガイドラインに逸脱する箇所を含んだ放送を、番組キャスターとしてお伝えしてしまったこと、また、その結果として、視聴者の方々の信頼を損ねてしまったことをおわびいたします。
クローズアップ現代は平成5年の放送開始以来、22年間、さまざまな社会的事象に向き合って、今をより深く知りたいという視聴者の思いに応えようと、放送を続けてきました。
より複雑化して、見えにくくなっている現代に、少しでも迫ることができればとの思いで、私も番組に関わってきました。
常にフェアで、事実に誠実に向き合うことで、視聴者の方々の期待と信頼に応えることができればとの思いもありました。
しかしながら、今回、調査委員会により、昨年5月14日の番組は、その一部が視聴者の期待に反する取材・制作が行われたと指摘されるに至りました。
私としても、誠に残念であり、改めておわびいたします。
22年間、この番組が続いてきたのは、多くの視聴者の方々の番組への信頼という支えがあってのことであり、今回のことは、そのことを損ねてしまいました。
この信頼を再び番組の支えとしていくためには、これからの一本一本の番組を、今回の調査報告の指摘も踏まえて、真摯な姿勢で制作し続けていくことしかありません。
今、その思いを改めて、強くかみしめています。
きょうは予定を変更して、クローズアップ現代報道に関する調査報告についてお伝えしました。
今回報道番組で2015/04/28(火) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
「クローズアップ現代」報道に関する調査報告書[字]

【キャスター】国谷裕子

詳細情報
出演者
【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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