今さらな選手権レポ、つづきです。
****
2009年1月2日。
元日の町を席巻していた冷たい強風も少し収まり、新年2日目の太陽が照りつける三ツ沢球技場。
スタジアム隣の小さなトラック付き公園では、第1試合を戦う鹿島学園と野洲がそろってアップをしています。
ちらりとのぞいた表情は、両校とも気負いも不安もなさそうな落ち着いた雰囲気。
「暑い」とさえ感じるメインスタンドで、この大会からお目見えした「野洲のビッグフラッグ」がベストポジションを見つけようとうろうろ彷徨うのをながめていたら、とんでもない噂が飛び込んできました。
「山本監督、ベンチ入りできひんらしい」
えええええ!!!!1回戦スタメンの中にも発熱した選手がいるらしい…!?
苦戦した2日前の試合、4分のロスタイムに入ってからやっと「あの野洲」を取り戻し始めていたチームに、いきなりな展開です(涙目)
*鹿島学園スタメン***
1GK 長峰大樹[3] 鹿島アントラーズJY
2DF 阿渡真也[3] 横浜F・マリノスJY追浜
3DF 杉下智哉[3] ロクFC
4DF 安藝正俊[3] JACPA東京JY FC
14DF 金井洵樹[3] JACPA東京JY FC
6MF 増田匠海[3] ロクFC
7MF 小黒翔太[3] 鹿島アントラーズノルテJY
8MF 工藤由夢[3] SCH.FC →79分:18MF 佐藤勇治[3] FC.多摩JY
10MF 小谷駿介[3] 横浜F・マリノスJY追浜
11FW 三橋隼斗[3] 横浜F・マリノスJY
9FW 忍穂井大樹[3] FC.多摩JY →79分:17FW 青木翔太[3] フットワーククラブ
奈良代表の一条との開幕戦をPKに持ち込んで、勝ち上がってきた鹿島学園。Jクラブのジュニアユース出身者が名を連ねます。
*野洲スタメン***
1GK 横江 諒[3] セゾンFC
2DF 福本匠吾[3] YASU club U-15
3DF 西口 諒[3] AC SFIDA
4DF 端山亮平[3] YASU club U-15
7MF 藤野友貴[3] セゾンFC
8MF 潮入啓太[3] セゾンFC
9MF 上田大輔[3] セゾンFC →62分:15MF 卯田堅悟[2] セゾンFC
11MF 松永俊吾[3] 京都サンガF.C.U-15 →79分:21MF 梅村 徹[2] セゾンFC
18MF 林 晃佑[3] AC SFIDA →62分:23MF 松田康佑[2] 京都サンガF.C.U-15
10MF 坂本一輝[3] 石部中
14FW 梅村 崇[2] セゾンFC
試合前バックスタンドの「サッカー部員応援団」から「こーすけ!」と声援が飛んでいたので、1回戦スタメンだった2年生ボランチ・松田康佑のことだと思っていたら、なんとまたしてもメンバーを入れ替えてきた野洲、同じこーすけでも3年生の林晃佑が先発出場です。
幾度となく繰り返されてきた儀式。
また明日、繰り返されるだろうことを信じて。
誰よりも、それを信じ、望んでいるのは選手たち。
発熱!?の噂があった選手も元気に登場。ベンチには引率の水谷智宏教諭が監督代行として控え、岩谷篤人コーチの声量も絶好調な模様。選手たちから絶大な信頼を寄せられる岩谷さんの存在と含蓄ある一声で、山本監督不在の穴をなんとか塞いでもらえそうです。
そしてピッチに展開した野洲のフォーメーションは…なんと、高円宮グループリーグ第2戦でヴェルディユースを相手に初めて採用したという「勝つためになりふり構わない」4バック!
1.横江諒
2.福本匠吾 4.端山亮平 3.西口諒 18.林晃佑
11.松永俊吾
7.藤野友貴 8.潮入啓太 9.上田大輔
10.坂本一輝 14.梅村崇
高円宮の市立船橋戦@西が丘でも90分このシステムで戦い、フィールドプレイヤー10人ほぼ全員が攻撃に絡みまくった野洲。ところが鹿島学園の鈴木雅人監督に「まさか野洲が引いてくるとは思わなかった」と、試合後ふり返られてしまうくらい、ふわっと試合に入ってずるずると受け身にはまってしまいます。
全員が熱に浮かされたようにぼーっとしたまま4分が経過、鹿島学園の速い展開にどフリーで真ん中からシュートを打たれ…よこりょう@横江くんがなんとか足で防いでそのままCKに。でも、ほっとする間もなくそのコーナーキックを頭で押し込まれてしまいました。
開始5分にして、いきなりな失点…0-1。
そこからまた5分間くらい、先制点をあげて勢いづきさらに動きのよくなった鹿島学園に対して、野洲のふわふわ感は続きます。徐々にもやが晴れ始めたのは11分過ぎあたりから。まずは闘争心があったまってきたらしい潮入くんが初戦に続いて手袋を外し、端山くんをなかなか立ち上がれないほどに痛めた鹿島学園の選手がイエローを受け、そしてふたご@梅村崇が「きちんと揃えて」手袋をタッチラインの外に出し、その「珍しい!」と称された光景にびっくりしていたら、今度は顔をやられて出血!
…って、試合展開に関係ないじゃんと思われるでしょうが、何事も積み重ね。こんな小さな出来事が野洲のふわふわもやもやを振り払っていくのですから、サッカーはわかりません(嘘)
ひとつひとつをきっかけに意思がはっきりしてきた野洲、鹿島学園のプレスをかいくぐってのドリブルやパスに、希望がつながります。
そして23分、潮入くんがタメをつくる隙に上田さんが左サイドをオーバーラップしてえぐり、ペナルディボックス脇でパスを受けて、直接ゴールマウスを…?
ああ、上田さんが放ったクロス―シュートかも―はバーを叩き、弾かれたボールに猛然と突っ込んできていたのは坂本くんでした!ボレーシュート!ゴール!
1-1。失点から18分後、同点です。
その後、上田さんが倒されゲットしたFKを直接狙ったものの浮かしてしまった松永くんが、悔し紛れに芝生を蹴るシーンも。
この試合も頑張ってメモをとっていたKANKANによると、
『「野洲に○出てきた」と書いてあるが読めず。何が出てきたんだろう…余裕とか波とか?たぶん、いいもの。』
確かに(笑)
潮入啓太のひらめきに、周りが連動し始めています。彼からのパスを起点に先制点アシストを放った上田さん(左)、そして県予選からこれまで6試合連続得点中の坂本くん(右)、前半40分を終えて厳しいながらも「次へのアプローチ」を熟考してるような表情で引き上げてきます。
「監督がいないことで逆にチームは結束していた」
キャプテンにしぐー@西口くんが試合後語ったように、山本監督不在という状態に慣れてきた野洲っ子たちは「監督をまた選手権のベンチに連れ戻さなければ!」というプレッシャーを、プラスに転換させ始めていました。
みんな同じテンションです。全員が同じレベルでぐいぐいと試合を動かし出しています。
あとはいい意味で「試合をぶち破る」選手がドリブルを始めてくれれば…!
それにしても7番・藤野くんと引き上げてくる14番・ふたご@梅村崇、流血沙汰になった顔を気にしっぱなし(痛)
おなじみ「We will Rock You」「あのSexyをもう一度」の横断幕を背景に、スタメン入りを目指して3年間一緒に切磋琢磨してきた「仲間」が…「ライバル同士だった彼ら」が、そのプライドを賭けてチームのために、今日も波をおこしています。
1-1。この先40分間の展開を読むことはできません。
「勝ちたい」気持ちは両チームどちらも同じ。どれだけ自分たちがやりたいこと、やるべきことを成し遂げられるのか。
静かに散っていった野洲の選手たちがとったフォーメーションは、前半の4バックに変えていつもの3バックでした。
1.横江諒
2.福本匠吾 4.端山亮平 3.西口諒
18.林晃佑 11.松永俊吾
7.藤野友貴 8.潮入啓太 9.上田大輔
14.梅村崇
10.坂本一輝
なんだかいつも肘を張ってちょっこり蹴るポーズがかわいい(笑)潮入くんのプレースキックで、後半開始!
そして試合は野洲のペースで動き始めます。市船戦@高円宮のような華麗なるパスワークにはまだまだ及ばないけれど、「一番いい時の自分」をたぐり寄せようと、記憶の軌跡をトレースしている感じ。対する鹿島学園は開幕戦で序盤に見せた「一条とのつなぐサッカー合戦」とは全く違う「我慢して守り、カウンターを狙う」ような試合運びです。
パスがつながり相手を翻弄するといっても、真ん中から攻めては相手の一番手堅いところで引っかかる…のを繰り返していた野洲、11分、左から坂本くんが放ったサイドチェンジパスを受け、右ワイドに開いていた藤野くんが突如縦へのドリブルを始めます。
「鹿島学園の守備はどちらかのサイドに絞るので、空いた方を突きたい」と試合前に言っていた藤野くんが仕掛けた「試合の調和をいきなりかき乱す」この高速ドリブルは、相手の寄せをかいくぐりペナルディボックス脇まで到達、角度がなさすぎるかも…と思った途端、右足からとんでもないシュートが放たれていました。
ゴール左サイドネットに突き刺さるボール!
野洲逆転!2-1!
ぶわあっとわき上がる歓声。
これこれ!「あの野洲」として魅せつけてほしかったのは、美しくつながっていくパスワークの中で、いきなり挿入される「読めない旋律」。このプレーが野洲の真骨頂です。これが見たかったのーー!
歓喜の絶叫に塗れるメインスタンドの野洲高ベンチ裏、そして弾かれたように集まり来るピッチの仲間たち、これでさらに「自分たちのペースに流れを引き寄せられる」誰もがそう信じた瞬間でした。
ところが…
一瞬の後、野洲にとって、野洲ファンにとって、この明るい陽射しを受けるピッチが暗転してしまうことになります。
鹿島学園、11番・三橋隼斗があっという間に最終ラインの裏に抜け出ていました。よこりょう@横江くんと1対1になっちゃう…と思った瞬間、彼は追いすがった野洲の選手と共に、ペナルディボックスの中でもつれて倒れます。
PK。
よこりょう@横江くんの読みは合っていたけれど、手には届かず。後半13分、2-2。ゲームは振り出しに戻りました。
そう、振り出しに戻っただけのはずでした。
手を叩き、みんなを鼓舞するキャプテンにしぐー@西口くん。まだ同点。みんなもわかっているはずなのに、明らかに野洲は動揺しています。後半だけでも野洲の放ったシュートは7本、対する鹿島学園は4本、攻めてはいるのです。パスをつなぎドリブル突破を狙い「野洲らしい攻撃」は幾度となく相手を脅かしているのです。
でも、鹿島学園は守ります。しつこく、粘り強く、諦めることなく。
それに対して野洲は…同じリズムでピッチの中を躍動していました。
みんなが、チーム全員が、同じテンションで繰り返し繰り返し、突破口を探して。
高い技術、ほとばしるアイデア、連動していくパスワーク、そして観客を沸かせる華麗にしてトリッキーなチャレンジ…でも野洲はそれ「だけ」じゃないはずなのです。その一連の流れを裏切るさらに突出した「なにか」が必ずあるから、野洲は「面白い」はずなのです。
攻防戦としては面白かったのかもしれません。でも後半33分。その均衡が破れました。
野洲のペナルディボックス右からファーへ入ったクロスを、鹿島学園9番・忍穂井大樹がヘディングで真ん中へ折り返し…そこへ飛び込んできたのが11番・三橋隼斗。
…ふぅっと穴が空いたような瞬間…
よこりょう@横江くんの頭上では、ネットが揺れていました。
2-3。残り7分、野洲は1点のリードを許します。
鹿島学園の気力と集中力は、これでさらに高まったようです。
その気迫に対して焦る野洲が、それでも必死に自分たちのサッカーをやろうともがいている姿を見るのは、なにか残酷な光景でもあったのですが、終了間際とうとうチャンスをつかみました。
CK。
潮入くんのボールに坂本くんがジャンプ、そのヘディングを受けたボールはゴールマウスへと…吸い込まれる寸前、DF必死のクリアによってあえなく弾き出されてしまいます。
悲鳴に包まれるスタジアム、そしてその直後。ホイッスル。
息を飲むような一瞬の空白ののち、崩れ落ちる選手たち。
それは「優勝したチーム」に憧れ入学してきた3年生たちへ、野洲高校サッカー部員としての終わりを告げるホイッスルでもありました…
体液全部をピッチに流すつもりじゃないかと思うくらいに泣き崩れている仲間を、キャプテンにしぐー@西口くんが自分も涙を拭いながら、なんとか助け起こします。
バックスタンドの応援団からは「最後まできちんとやろうぜ!」と、声がかかりました。
最後まで。戦った相手にもきちんと礼を尽くすまで。
******
第87回全国高校サッカー選手権大会 2回戦
2009年1月2日12:05K.O.@三ツ沢球技場/5800人
40分ハーフ
鹿島学園(茨城) 3-2(1-1,2-1) 野洲(滋賀)
[得点]
8分:安藝正俊(鹿島学園)
23分:坂本一輝(野洲)
51分:藤野友貴(野洲)
53分:小谷駿介(鹿島学園)
73分:三橋隼斗(鹿島学園)
******
試合の入り方がよかった、開始直後に先手を取れたのが大きかった、とそれぞれ鹿島学園の「勝ち越し弾アシスト」忍穂井大樹と鈴木雅人監督がコメントするように、ふわっと試合に入ってしまった野洲。
…せっかくチームが一つになってきて、やりたい野洲のサッカーもできていたのに、それでも勝てなかったのは「運がなかったから」、岩谷コーチのこの言葉を裏付けるように、鹿島の鈴木監督は「劣勢だったけれど、たまたま勝つことができました」と謙遜しながらインタビューに答えています。
9月、西が丘のピッチで見た「笑っちゃうほど楽しそうで幸せなチーム」は蘇りませんでした。
確かにスタンドを沸かせる美しい展開も随所にちりばめられた試合。
でも、彼らはそれだけじゃなかったのに…
一つになり始めたチーム、調和に満たされたパスワーク、そこへさらに万華鏡をひっくり返すように現れる新たなひらめきと強引さ…それが他の高校には真似ができない絶対的な魅力だったはず。
一つになり始めたチーム。同じテンションで高みを目指して昇り続けてはいたけれど、そこからさらに飛び抜けるヤツが、いたはずなのに。できたはずなのに。
互いに支え合いながら、彼らはバックスタンドまでなんとかたどりつき、支え続けてくれた仲間たちに感謝を捧げます。
そこには応援団を引っ張った3年生・高階翔、そして1回戦で途中出場したFW12番・福原拓己の姿もありました。彼らの元には涙に暮れ、まともに顔も上げられずにいる3年生たちが、許しを請うように次々とやってきます。
雑誌の企画でそれぞれ色紙を書いたメンバーたち、その中で2番・福本くんは「忘れるな!Aだけが野洲じゃない…Bがいてこその野洲なんや Bの星 福本匠吾」と記していました。
「悔しいが、胸を張って滋賀に帰りたい」
キャプテンにしぐー@西口くんは、最後までキャプテンであらねばと、間欠泉のようにあちらこちらでわき上がる涙に立ち止まってしまう仲間を、無言で励ましながら歩いてきます。
さっきまでシャツをめくり涙を拭いていた藤野くんは、となりでまたしても激しく嗚咽を上げ始めた2年生を慰めるので、ちょっと気が紛れたようです。
勝利から得るものはある。でも敗北から得られるものはなにも、ない。
たぶん敗者は「なぜ得られなかったのか」を、自ら学び取らないと前へ進めないのでしょう。
それはとても辛い作業だけれど、逃げてしまったらそこで終わり。
「野洲のサッカー」で頂点を目指した彼らが、その失敗をかけがえのない財産に変えられるのだと信じ、次へのステップを踏み出せるよう、ファンとして祈りたいと思います。
君たちのサッカー、大好きだったよ!!!
バックスタンドでも、撤収が始まりました。第2試合、東北高校と情報科学の応援団と入れ替わらなくてはなりません。
そんな中、一人呆然とピッチを見つめる福原くんの姿がありました。
これまでの勝利も、ここでの敗北も終焉も、ピッチでプレーした選手だけじゃない、みんなのものです。
♪野洲高なら手を叩こう♪
ラン☆カンも目一杯叩いときました!
ありがとう。そして、がんばれ。
***
第87回高校選手権 1回戦*野洲対岐阜工レポ→★その1と★その2
開会式レポ→★
滋賀県予選3回戦レポ→★
***
この大会、「むぅみぃの日記」のむぅさんに本当にお世話になりました!ありがとうございます!
新キャプテンにはくるくる@卯田堅悟が選ばれたそうです。
歴代、野洲のキャプテンは苦労続き(苦笑)応援してます!
大会前、むぅさんから調子がイマイチって聞いていましたので・・・心配しながらのTV観戦でした。藤野くんのドリブルからのシュートが決まったときは「絶対勝てる」と思ったのもつかの間のPK!とても痛かったです(泣)
抽選が決まったときはBEST8確実と思ってたんですが・・・。残念です・・・。
今年も新生野洲を応援していきたいと思ってます。どんなチームになるのか楽しみです。
1回戦・岐阜工戦の最後の最後にチームとして復調の兆しがあったように思えたので、
返す返すも「ふわっと試合に入ってしまった」ように見える立ち上がりが悔やまれます…
あのPKのシーンでは、メインスタンド上方にある実況ブースから
「さあ鹿島学園チャンスを活かせるか!」みたいなアナウンサーの絶叫が聞こえてきて
たまらない気持ちになりました(泣)
本当に「神奈川ゾーン」を引き当てた時には、対戦相手のことはおいておいても
優勝した時と同じスタジアムでスタート!という幸運に
さすが、キャプテンにしぐーーー!!(踊)と思ったのですが…
でも、勝利という結果はでなかったけれど、最後の最後まで
「野洲スタイル」を貫いてくれたチームでしたよね。
この気持ちがまた新しいチームへ受け継がれていくといいな、と
願っています。