温泉の町…湧出量源泉数共に日本一。
絶え間なく立ち昇る煙に陽春の光が溶け込む。
京都・大原からやって来たベニシアさん。
初めて日本に来た時から温泉が大好きだった。
(ベニシア)何か不思議な風景。
山がすごい…煙がいっぱい出てて。
いろんな人が恵みもらって体治すっていう事がすごいな。
昔1回来たんだけど…25歳。
でもあんまり覚えてないの。
お風呂だけ覚えてるんだけど。
今日私足がちょっと悪いから。
調子よくない。
左足。
…で温泉入りたいと思って来たんです。
持病の足の血栓に悩まされていると言うベニシアさん。
湯治町として知られるここ鉄輪地区で温泉の効き目に期待する。
湯気がいっぱいある。
何かすごいな。
ここかな?あっこんにちは。
(てるみ)こんにちは。
ベニシアさんですか?今日よろしくお願いします。
こちらこそ。
今日宿泊する湯治宿の女将安波てるみさん。
さっき見てたの湯気がすごい。
ここの家の湯気?そうなんですよ。
自然に湧いてくる煙が50年続く宿を包む。
そこの何か湯気出てるけどあれは何ですか?裏の蒸気のタンクからずっと引っ張って料理をする調理器具になるんですよ。
ええっ?ここで?これでもう蒸し物。
蒸す事ができる。
そうです。
この地獄蒸し…魚介類がとっても合います。
絶え間なく湧き出る蒸気を利用した天然のかまど。
地元の人は地獄釜と呼んで昔から利用している。
この蒸気に温泉成分が含まれているんでホウレンソウとか青菜はすごいきれいな鮮やかな色に出来上がります。
蒸して食べるんですか?そうです。
珍しい。
結構熱い?熱いですよ。
あっ結構熱いわ。
100℃弱ですね。
ガスとか要らなくて自然にね。
ええ。
何か初めて知った。
ああそうですか。
鉄輪ならではの郷土料理地獄蒸しの材料を求めててるみさんと町の散策へ。
何かここ普通の家に見えるけど。
ここ温泉。
共同浴場なんですよ。
誰でも入れるの?ええ。
無料で入れます。
じゃあここに住んでる人はもう温泉は生活の中に…。
そうなんですよ。
だから自宅にお風呂なくてこういった共同浴場に毎日来るっていう。
じゃあ結構近所の人と温泉で会う。
いいですねそれ。
長年湯治で見えるお客さんはやっぱりご近所の方とお友達になっててお土産をそこに持ってったりとかしてるお客さん結構いますよ。
じゃあいい事ね。
そうですねえ。
この地面がとっても暖かいんで猫が冬でも暖かい上にずらっと並ぶぐらい。
来るんですか?ニャンコちゃんが野良ちゃんがもうず〜っと。
この辺で生活してる猫多いですよ。
じゃあ猫も温泉味わってる。
そうですね。
あそこ猫いる。
あそこいっぱいね。
ここで猫に生まれたら結構幸せ…。
幸せですよ。
ここ暖かい。
暖かいから猫がね。
暖かいですよずっと。
地熱があるんで。
そうか。
暖かい?温泉のおかげでぬくぬくな町。
人も動物もみんな仲良く暮らしているのだ。
別府の中でも最も多くの源泉が集まる鉄輪。
小さな町に7つの共同浴場が並ぶ。
地元の人も湯治客もその恵みに感謝し上手に生活の中に生かしている。
ふと気付けば湯けむりが立ち昇る。
歩いているだけで自然と体が癒やされる気がする。
てるみさんお薦めの魚屋さんに到着。
こんにちは。
はいいらっしゃい。
たくさん種類あるね。
今日は何するんでしょうか?地獄蒸しを作るの大体何入れるんですか?ここにあるのはもうほとんどお薦めばっかりですけど。
さて何にしましょうかね?
(魚が跳ねる音)おお〜!この人元気。
すごい元気。
すごい。
これ関アジです。
それは生にする方がいい?
(てるみ)そうですね。
サザエも入れてもいい?
(魚屋)いいですよ。
これは何ですか?
(魚屋)カキ。
カキも入れても大丈夫?大丈夫。
(てるみ)杵築のカキ。
もう地物ばっかりで。
これはね大分の国東って所で有名な車エビなんですよ。
何か大きさがすごいな。
これに入れてもらえます?入れましょうか?こう入れましょうか?ああ。
あとサザエも入れましょうか?そうですね。
ああいいですね。
カキはいいですか?カキはいいですか?じゃあカキも。
(てるみ)じゃあこれで地獄蒸し。
豊後水道で水揚げされたばかりの新鮮な魚介類もこの地を訪れる人の楽しみ。
じゃあ早速地獄釜にかけて。
時間がバラバラになるんで時間別に。
向こうから時間のかかる順に置きますんでね。
これが15分ほどかかります。
これ簡単にできるよね。
そうですね。
載せるだけで。
これを料理と言っていいんでしょうか。
…でカバーするの?木の蓋を先に。
周りから結構蒸気が漏れるんで。
…でカバーするの。
3分7分15分で待ちましょう。
昔はこれで大豆を一晩中かけてておみそ作ったりおしょうゆ作ったり。
日常の生活に。
みんな持ってた。
でもすごいエコですからね。
そうですね。
短時間でうまみ成分が逃げなくて食材そのものの味が凝縮されてとってもおいしく頂けるんで調味料とかあまりつけなくてそのまま味わう方がいいですね。
じゃあもうボチボチエビが出来上がる…。
あっもう出来てるわ。
きれいな色に。
わあすごい。
完璧。
ホントですね。
おいしそう。
お昼どきみんな地獄釜に集まってくる。
こんにちは。
お泊まりのお客様。
そうですか。
じゃあどの人来てもこうするのね。
そうですね。
地獄蒸しは鉄輪へ湯治に来る目的の一つ。
ニンジンは何分かかる?15〜20分ぐらいかかりますね。
野菜も魚介も置くだけ。
温泉の力が最高の料理を作ってくれる。
すごいきれいに。
(てるみ)グリーンがすごいきれいでしょ?広島から来た皆さんと一緒に…。
じゃあ頂きます。
すごいおいしい。
(てるみ)おいしいでしょう?おいしい。
初めて会った者同士地獄釜の周りで語り合う。
これも昔から変わらない鉄輪の光景。
(てるみ)これ何もつけないでそのまま召し上がってみて下さい。
まあおいしそうよ。
おいしい。
蒸すのが一番いいんじゃない?自分の野菜だったら何も農薬使ってないんだったらそれまま食べられるでしょ?この竹籠で蒸したんがいいんですね。
結局は。
もう何年ぐらい来てるんですか?5〜6年かね。
毎年2〜3回は来ます。
町の雰囲気いうんですか?湯けむりがいっぱい上がっていかにも温泉らしいじゃないですか。
町全体が。
何か体が軽くなったような感じがするのね。
ここへ入ったら。
そうか。
じゃあいつも朝早く入るの?それとも夕方?今までは朝5時に目が覚めたらいっぺん入ってそれから10時ごろ入ってまた外歩いて風呂入るでしょ?それからまた寝る前に入って4回から5回入るよってです。
一日でうん。
ここへずっと入りよってた方は住んでおられた方は皮膚がものすごいいいですよね。
地元の人は皮膚きめ細かいしすごく肌艶がいい。
それはもう皆さん言われますよ。
じゃここの女の人みんな美人かな?
(てるみ)いや美人じゃなくて肌美人。
うち80。
80歳?80歳すごいな。
(てるみ)見えない。
湯治に来て肌美人になる。
いい事を聞いた。
鉄輪に暮らす人たちにとって温泉はいつも身近な存在。
その昔ここは100℃近い源泉が湧き上がるまさに地獄。
人が近寄れない場所だった。
鎌倉時代布教の旅で通りかかった僧侶一遍上人が念仏を唱え荒れ狂う大地を鎮めたといわれている。
やがて地獄という呼び方だけが残る憩いの地へ変わった。
鉄輪には親から子へ受け継がれるおやつがある。
ここで暮らす子どもたちの楽しみ…。
湧き上がる湯気と共に香ばしい匂いが立ちこめる。
サツマイモを使ったおやつ石垣もち。
小麦粉とサツマイモを混ぜただけ。
あとは地獄がおいしくしてくれる。
ここは地獄と呼ばれる笑顔あふれる町。
そろそろ宿の部屋で休みたい。
はいどうぞ。
こちらになります。
お入り下さい。
面白い部屋。
はい。
いいですね。
これが温泉暖房になるんです。
これ?へえ〜ホント暖か〜い。
冬はもう暖房器具はこれ1本だけなんです。
電気代がそんなにかからなくて。
いいですね。
これはもう昔から。
この家が出来た時に入れたの?はい。
50年前から変わらない清潔で質素なたたずまい。
最大の魅力はこの源泉掛け流しのお風呂。
鉄輪で生まれ育ったご主人の秀男さん。
時代は変わってもここには日本の古きよき人情が残っていると言う。
(秀男)湯治宿なんですよ。
もともとが農家。
農家の2階を湯治のお客様にお貸しして。
じゃあお客さんも結構農業やってる人が多いの?農業漁業ね。
そういう農繁期に体を使ったからそれをいたわり治す。
私みたい。
私も疲れがたまってるから泊まりにきた。
湯治にお見えになって下さい。
自分で自炊して下さい。
地獄釜を利用する人は楽です。
ですから極楽です。
昔は煮炊きするのに火をおこさないといけませんよね。
そういう行為をこの地獄の釜が代わりにしてくれた訳です。
結構楽だったよね。
だから極楽。
ああ〜!地獄釜とか言いますけどね。
私どもは子どもの頃からHellじゃない地獄釜はあったんですがない所が近所に随分ありますね。
そういう方たちが釜を使わせてと。
…でどうぞって?
(秀男)タケノコの皮のままを地獄の釜にかける訳です。
夕方戻ってきたらねタケノコを置いとく訳です。
置いてるんですよ釜のそばに。
誰かが使い賃…お駄賃みたいな使用料みたいな感じで。
「タケノコありがとう」。
それでもうご挨拶。
もうお互いさまでね。
すごく自然な感じ。
隣近所ほとんどそうです。
自然の恵みはみんなのもの。
譲り合う精神が息づく町。
健やかな人の心が美しい。
翌日また一人地獄釜を借りにやって来た。
(大橋)こんにちは。
(てるみ)こんにちは。
お久しぶりです。
今日もお借りします。
どうぞどうぞ。
また今度違う作品作られるんですか?はい。
何でここ来るんですか?温泉の蒸気で竹を曲げるのをここで。
そんな事するんですか?はい。
せっかく熱がたくさん出てるから。
自分で考えて?蒸気を使って曲げる。
何か不思議やね。
湯気がいろんな事ができるって。
ああそういうふうに。
地獄釜を使って竹を曲げるという…
(大橋)これで5分ほどこのまま。
置いとくの。
(大橋)お湯よりも温度が高くなるので短時間であっという間に出来ます。
温泉の熱を利用して作る竹細工。
一体どんなものが出来上がるのか。
あっ曲がった。
(大橋)曲がりました。
すごいね!
(てるみ)ホントですね。
マジックみたいな感じ。
地獄もなかなかやりますね。
(大橋)この真ん中にローソクを置いてキャンドルスタンド。
竹と蒸気が出会ってキャンドルスタンドが生まれた。
鉄輪の町を歩いているといろんな所で竹を目にする。
実は大分県は日本一の竹の産地である。
源泉を冷やすこの装置にも竹が使われている。
そして湯治の町に竹籠は欠かせない。
ベニシアさん大橋さんの竹細工作りを見てみたいと工房を訪ねた。
ごめんください。
(大橋)こんにちは。
ベニシアです。
中へどうぞ。
こういう竹を編んでるのね。
でもちょっと面白い感じね。
京都とちょっと違うんだよね。
これは墨で?どうしてこの色に?この色は竹を黒い漆で塗った…。
変わってるね。
これは花籠。
ホントはここに竹の落としという筒を受けて花を生ける…。
これは何?ランプ?ランプです。
電気つけましょうか。
ああすてき。
影をつくるランプ。
きれいね。
職人になって15年。
日用品から照明まで独自のデザインでさまざまな作品を生み出している。
昨日来たらやっぱり竹が多いなと思ったのね。
何でそんなにたくさん竹あるの?マダケってモウソウよりちょっと小さい竹なんですけど何でですかね。
僕も生まれた時からいっぱいあったから。
じゃあ竹でいろんな事やってるのは大分では多い…?多いです。
私も籠を集めるのが好きなんです。
やっぱり庭仕事したらいろんな籠を背負うから。
昔はこればっかりだったんでしょ?誰でも農家の人は編めたと思うんですけど。
そういう時代に戻りたいなといつも思うのね。
幼い頃からインテリアに興味を持ち大学で家具や照明のデザインを学んだ大橋さん。
卒業後材料作りから仕上げまで1人の技で作る竹細工の美しさに憧れ職人の道へ。
5年間弟子についたあと独立。
以来竹の持つ可能性を追求している。
大学でデザインを勉強していて最初はかけ離れていると思ってたんですけど伝統工芸の中にもやはり…物を作るというのはやっぱりデザインをされてデザインを通して作られると思うんですけどそれがその時代に合わせてどのように技術が使われたり新しく技術ができてくるかだと思うんだけど。
竹を通して何か今の時代に合うものという事が自分にとってのデザインかなと思ってます。
デザインとは時代に寄り添ったもの。
そのために技術を磨き続ける。
大橋さんは次第に注目を集めるようになり軽くて丈夫どんな形にも曲げられる竹の特性を生かし巨大なオブジェも制作。
竹の美しさを世界に発信してきた。
その思いをみんなに広げたい。
伝統を受け継いでいこうと6年前同世代の仲間と職人集団を結成。
竹で食べていくためのいろんなステップをいきなり全部はできないし分からないと思うのでそれを少しずつ…まずは作るための技術を覚える。
例えばTentaというおもちゃがあるんですけどあれは若い人が作って学校を出た覚えたての人が自分のやりたい道を見つけるまでのそのステップを見つけたいと思って始めました。
600年の歴史を持つ別府竹細工。
今も愛用されるのは機能美を追求し続ける職人がいたから。
その思いを継承していきたいと言う。
大橋さんが竹細工作りの原点だという籠を作ってくれた。
やっぱりこの工程が楽しい。
こういう事やるのが?分担になってないっていうか1人で全部やるからそこがまた面白い。
機械の音も聞かなくていいし。
静かにできるね。
そう静かに。
竹を割いて材料を作っていると竹細工を始めた頃の気持ちに戻れると言う。
最初は失敗ばっかり。
ちょっとやってみます?半分に。
手でもできるんで。
これを?そうです。
おお上手。
すごい。
うまいですね。
大体みんな失敗するんだけど。
そうなの?偶然。
ビギナーズラック。
おっ?ああ…。
それアカンでしょ?それ駄目なんですよ。
難しい。
ああアカン。
何でだろ。
やっぱり最初はビギナーズラックだよね。
これ四つ目編みって一番簡単な…上下上下の上下上下にするだけで簡単なんですけど。
シンプルなデザイン。
単純な編み方。
でも今もこの形が一番美しいと感じる。
よしじゃあちょっといってみましょう。
それが難しい。
長年使われ続ける日用品。
いつの時代の職人も同じように作ってきた。
あとはこの上に飛び出たやつをまとめいくとこういう形に。
編むみたいに?編むみたいにします。
最後はちょっと残してる?ベニシアさん伝統の技を少しだけ体験してみる。
こう入れるの?そうです。
こんな感じ?ここ出てくるからこれを出てこないように。
出てこないように?下に入れるんですよ。
そうです。
じゃあこうしてこうして…。
こっちに入れて。
そうです。
まっすぐ。
OK。
はい。
出来ました。
ちょっと最後仕上げましょうか。
でも籠大切なものよね。
籠なかったらどうやって生活するのよね。
ホンマに。
そう思ってもらえると。
完成ですね。
すごい。
ありがとう。
教えてくれて。
伝統をただ継承するのではなく仲間と共に竹細工を作り続ける。
旅の最後にもう一度足湯へつかったベニシアさん。
ここの左の足がホントによく頑張ってるなといつも思うのね。
足も体もリラックスしてそれがまた不思議な事で別府温泉はもともとあるものね。
ホントに恵みと思うのね。
心も体も癒やされてこの町はとても温かい。
2015/04/29(水) 12:25〜12:55
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「湯けむりの町〜大分・別府〜」[字][再]
温泉好きのベニシアさん、湯けむりに包まれる温泉町、別府・鉄輪を湯治のため訪れる。温泉の蒸気を利用した地獄蒸し料理を味わい、別府に伝わる伝統的な竹細工を体験する。
詳細情報
番組内容
温泉好きのベニシアさん、湯けむりに包まれる温泉町、別府・鉄輪を湯治のために訪れる。宿の女主人に、温泉の蒸気を利用した地獄釜のことを教えてもらい、早速、食材を求めて一緒に近くの魚屋さんへ。新鮮な魚介類や野菜を使い、地嶽釜で地獄蒸し料理を作って宿の湯治客とともに味わう。地獄釜の利用者には竹細工職人もいる。ベニシアさん、工房を訪ね、別府に伝わる伝統的な竹細工・別府竹細工を見学、少しだけ竹細工を体験する。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:23545(0x5BF9)