鶏肉の濃厚なうまみ是非味わってみて下さい。
重厚で厳かなたたずまい。
日本美術の粋を集めた宝。
その名は…そんな国宝を軽やかな視点で身近にしてくれる人がいます。
今注目のライター橋本麻里。
国宝ブーム立て役者の一人です。
あの徳川家ゆかりの国宝建築は「デコ」?古都の寺院は平安貴族の「テーマパーク」?黄金に輝く屏風絵で桃山時代にタイムスリップ。
橋本流の切り口で国宝を体感してみましょう。
きっと日本美術が好きになるはず。
第4回は日本史上最強絵師集団「狩野派」の戦略とその画風に迫ります。
旅の舞台は春らんまんの京都。
今回も日本美術に詳しいライターの橋本麻里さんと作家・演出家の大宮エリーさんが訪ねます。
大宮さんは絵画制作も手がけるアーティストとしての一面も。
(橋本)今日は京都国立博物館へやって来ました。
(大宮)すごいかっこいい建物ですね。
初めてですか?通るんだけど中に入った事はなかったんですよね。
タイミングなくて。
楽しみ。
で今日はですね狩野派の作品を見て頂くんですがエリーさん狩野派って知ってます?名前は聞いた事あるんですけど…いろんな人いますよね。
室町時代の室町幕府の将軍の御用を勤め始めてから江戸時代の江戸幕府の将軍までずっと400年間にわたって…狩野派は初代正信を筆頭に常に最高権力者の庇護の下君臨し続けた御用絵師の家系。
中でもカリスマ的な力を発揮したのが桃山時代に活躍した狩野永徳です。
こちらは永徳の代表作の一つ…巨木が屏風からはみ出さんばかり。
その圧倒的な力強さは「怪怪奇奇」と評され信長秀吉ら天下人の心を捉えました。
そのカリスマ性で一族を率いた永徳ですが道半ばで急逝。
狩野派にとって最大の危機が訪れます。
京都国立博物館で開催中の狩野派の展覧会では永徳の死後一族の存亡を懸けた壮大なドラマを感じる事ができます。
こちらが展示室です。
おお〜豪華だな。
金ピカじゃないですか。
第一印象からして豪華。
金箔を背景にした金碧障壁画。
永徳の死後は権力者の威厳を示す一方多様な画風が求められました。
この華麗な狩野派なんですけれどもいろんな説明のしかたがあると思うんですがエリーさんにどういうふうに見てもらおうかと思って考えたんですけれどもひと言で言うと「ゼネコン」。
ええ〜?ゼネコン。
時の権力者に認められ城郭や大寺院の装飾を手がけた狩野派。
城内の何千何百とある障壁画を一手に引き受ける職業絵師集団として成長します。
ビッグビジネスですね。
金のにおいがしてきたでしょ。
いやいや…すごい顔になりました今。
ええ〜そうなんだ。
そっか。
そうするとそういう絵を…しかも質をそろえて雰囲気も統一して描くためには技量のそろってて様式をきちんと学んでいる絵師たちを弟子を大量に育てなきゃいけない。
スタッフがいるわけですよ。
これが狩野派の強みだったんです。
確かにゼネコンですね聞いてたら。
聞けば聞くほどゼネコンでしょ。
屏風なだけでねやってる事が。
ゼネコンさながらの手法でしっかりとした基盤を築こうとした狩野派。
永徳の跡を継いだのは息子の光信。
いわば社長就任です。
社長なのに作家っていうね。
すごいですよね。
そうですね社長なのにアーティスト。
なかなかいない…これですか。
光信という人はまあ見れば分かるとおりとても…五代目棟梁狩野光信の代表作。
父永徳の荒々しい絵とは対照的でやわらかい曲線で木々や花が描かれています。
面白いですね。
こっちが割とこう何ですかねデザイン性があるっていうかなんか油絵みたいな感じがするのにこっちはすごく浮世絵チックっていうかはっきりしてるじゃないですか線が。
そのコラボレーションが面白いなと。
でも近づくとこの花の繊細さなんかも見えてきますよね。
桜が咲いてる。
まさにこの季節ですけれど。
しかし光信には永徳ほどの力はありませんでした。
棟梁になった途端ライバルに秀吉からの発注を取られる始末。
しかも時は先行き不安な戦国の世。
窮地に立たされた一族はこんな作戦に打って出ます。
桃山時代の後半って「豊臣」「徳川」「宮廷」という3つの勢力が言ってみればあるわけですけれども…豊臣だけやってたらもし徳川がすごい強くなったらどうすんのみたいな事ですよね。
徳川強くなったら「お前ら豊臣だろ」みたいな感じで潰されちゃうかもしれない…。
すごい作戦ですよね。
その名も…狩野派は3つの勢力にそれぞれ担当をつけ時代がどう転んでも一派が滅びぬよう画策したのです。
キーパーソンは棟梁の光信豊臣づきの山楽朝廷づきの孝信徳川づきの長信です。
まずは山楽の絵を見てみましょう。
画風は師匠永徳の豪壮な力強さを受け継いだもの。
もともと武士として豊臣家に仕えていた山楽は秀吉に絵の才能を見込まれ狩野派に弟子入りしました。
うわ〜ど迫力ですね。
私こういう絵好き。
勢いがあるね。
獅子がこっちに向かって走ってくるような…。
そうそう。
すごいスピード感あるじゃないですか。
色もいいしシンプルですねすっごく。
珍しい感じですよね。
これはある意味すごく狩野永徳っぽいっていうか永徳の直系のイメージの絵なんです。
あっそうなんだ。
へえ〜。
山楽という人は永徳からの信頼を得ていたというので番頭さんというか会社でいうと常務みたいな役割なんですよね。
同時に狩野派全体の調整役みたいな事もしていた。
そういう立場の人だったんです。
いろいろバランスとれた人だったんですね。
そういう事もしつつこういうダイナミックな絵を描く。
絵師たちは自らの命を懸けて三面作戦を遂行していました。
主君に何かあれば自分の命も狙われる。
その覚悟でそれぞれの権力者に仕えたのです。
豊臣家に政治的な意味でも通じていたと思われて追っ手をかけられてまさに命を狙われるんですよ。
たまたまいろいろな偶然とか山楽を知る人の手助けで命は救われるんですけれどもほんとに絵を描いて命を落としそうになるというか。
すごいですね。
そんな画家あんまりいないですよね今は。
絵描いて殺されるなんてなかなかないじゃないですか。
でも権力者のために絵を描くって事はその時代が変わって違う権力者になったら自分は滅ぼされるかもしれないという事ですもんね。
命懸けで描いてたって事でしょこれ。
…という感じもありますよね。
この迫力はね。
滋賀県大津市に山楽の作品が残るお寺があります。
三井寺は豊臣家ゆかりの寺。
絵は当時描かれた場所にそのままの形で保存されています。
案内して下さるのは…国宝「光浄院客殿」。
1601年秀吉に仕えた武将によって建てられた桃山期書院造りの名建築です。
名だたる大名を迎える寺の迎賓館として使われていました。
この中に山楽の障壁画が。
広い。
絵が…。
うわ〜すごい。
400年前の姿を残す山楽の作品が目の前に。
(小林)その当時は非常に部屋ん中が暗かったんやな。
だからその中で自然の光でこういう金箔の絵が浮かび上がるというのは非常にありがたいしここ座る方の威厳が際立ったんじゃないかと…。
月明かりとかでこれ見てみたいですね。
ポワーッとね。
絵の構図的には絵の中の滝から水が流れて松の下のお池にたまります。
隣の障壁画の池にたまってそれが外の池へつながってる…という構図になってます。
ですので絵の中の水が外へ流れていってるように見えると思います。
庭と一体化してるっていうつながってる絵って珍しくないですか?構図的には非常に面白いと思いますね。
高貴な人物の威厳を引き立てるために描かれた障壁画。
枝を広げた松を中心に滝の流れが庭までつながるよう空間ごと計算された作品です。
面白いなと思ったのは雲があって雲の合間から山が見えていて手前に松の木があるんだけどあそこから滝が下りてきちゃってるしっていう。
いろんな視点の…角度が一枚になってる。
きっと武士同士でお話しをする時にもいろんな角度から戦地の状況を見たりとかするように。
そういう地形がきちんといろんなとこに描かれててここに集う人が喜びそうなすごくこう話を盛り上げそうなというか自分たちの意識を高めそうな絵だなというふうに思いました。
この絵が描かれたのは秀吉が亡くなった3年後の事。
山楽はその後も豊臣家の御用絵師として関係を深めていくのです。
さて続いては朝廷の担当となった孝信の作品です。
宮中の中で最も格式の高い部屋に描かれたもの。
人物の彫りを深くし威厳のあるさまが表現されています。
孝信はその腕が認められ朝廷の絵師として最高の位にまで上り詰めます。
クライアントによって画風を変える事のできた孝信。
こんな絵も残しています。
これなんですが。
細かいですね〜。
しかも結構あのちっちゃい人に至るまですごく丁寧に描き込まれてますね。
2014年に発見された初公開の作品です。
孝信の新たな一面を知る事のできる貴重な絵画。
繊細なタッチで人物が描かれています。
当時の宴の様子が描かれた風俗画。
狩野派の作品には珍しい男女の艶っぽいシーンもあります。
この絵について展覧会を企画した山本英男さんに聞きました。
(山本)それをすぐに絵にするのが彼らの仕事だったわけですね。
じゃあいっつもこんな宴開いてたんですか?え〜…好きだったとは思います。
(笑い声)何かあったんですかね。
特別な事が。
お祭りとか?これについてはまだはっきり分かってないんですが何か制作させる意図というかそういうものが何かあったんだろうなという…。
発注する側の…クライアントの意図が。
そうですね。
ですから「ここに描かれているこの人は誰だ」とかそういう特定の人物が今後特定されてくるのかもしれないですね。
そういう人がいたりするんですか?特定の人物が。
例えばこちらの方でもみあげのすごい濃い人物がいたり…。
水玉の着物着てる方ですね。
これが主人だと思うんですけどそういう人がもしかしたら実在してその酒宴の場面をそのまま絵にしてる可能性はあると思います。
誕生日会かもしれないですもんね。
そうですね。
この人がこんな絵描かせちゃったかもしれないんだ。
ここから一人ずつ抜き出せばまさに…その元っていうのは狩野派が準備してたんだなというのがやはり分かりますね。
そういう意味でもこの作品重要だと思います。
桃山時代の狩野派が得意とした題材の一つが風俗画でした。
権力者が自らが治める世の中を箱庭のように眺めるために描かれそこから数々の名作が生まれていったのです。
三面作戦残る1人は徳川家についた狩野派の長老長信です。
ご覧下さい。
今まさに狩野長信の「花下遊楽図屏風」ですね。
ああ〜なるほど。
満開の花の下で貴婦人たちが繰り広げる踊りや酒宴が描かれ時代のおおらかな空気が感じられます。
関東大震災で一部を焼失し空白があるものの桃山時代後期を代表する風俗画の名作です。
なんかいろんな職種の人がいるのかな。
あそこで居眠りしてる人がいますけど。
車の運転手さんみたいなもんですきっとね。
あそこに駕籠があるじゃないですか。
偉い人たちを乗せてきたタクシー待ちみたいな…。
この上にいる方たちはどういった方たちなんですか?多分身分の高い方が上から景色をご覧になっていてその人たちを乗せてきた駕籠があそこで彼らを待っていて。
描かれた一人一人を細かくたどると面白い発見が。
刀を差して踊っているのはなんと男装をした女性。
歌舞伎の原点となったセンセーショナルな踊りです。
こちらの女性が奏でる三味線はこのころ日本にやって来たとか。
風俗画には当時の人々の生活文化が克明に記録されています。
狩野派の中で家康に気に入られた最初の人っていうのがこの方だったんですよね。
すごいですよね。
「家康いったか」って感じですよね狩野派的には。
「よっしゃ〜」ですよね。
「すごいじゃん」みたいな。
仕事取ってきたという事ですもんね。
新規。
ご新規を開拓してきた営業部隊ですね。
なるほど。
でもなんか…家康がすごく「平和にしたい」「安泰にしたい」「安泰イコール平和だから」というふうにおっしゃってた…って会ったわけじゃないですけどユーモラスなところっていうか人間らしい優しいところというのがもしかしたら家康に気に入られたところかもしれないですよね。
すごく生き生きとしてますよね。
金ピカで派手っていうのとは違いますけれども当時の人たちの着物なんかもすごく丁寧に描いてありますしやっぱり長信の風俗画ナンバーワンというとこれなんですよね。
そして時代は徳川の天下へと移ります。
江戸幕府の京都における居城として建てられました。
城内の壁や襖などの装飾は狩野派が手がけたもの。
市井の人々を描いた風俗画ではなく勇壮な松が描かれました。
穏やかで気品に満ちた画風。
そこには新しい時代の空気が描き出されたのです。
中心となったのは次世代の狩野派を担う永徳の孫探幽でした。
二条城にある探幽の作品もこの展覧会で見る事ができます。
ど迫力ですね。
すごい力強いっていうか。
でとても余白が多くて枠の中にきっちり収まっているこの描き方がこの後250年間続く…そういう絵でもあるんですよね。
確かになんか見てると迫力はあるんですけど何ていうのかな…心が乱れないというかすごく穏やかな気持ちになる。
でなんかこうすごく余裕があるという感じがしますね。
将軍の余裕が感じられるかもしれないですね。
探幽が徳川家に気に入られ三面作戦は無事成功を収めます。
そして狩野派の新たな歴史が始まるのです。
ゼネコン的なやり方で時代を切り開いて生き残っていくというのが今回のテーマだったんですけれども。
その時代のはじけるような生命感とかあるいはそれがだんだん落ち着いて安定した時代になっていくとかそういった個人を超えて時代を読み取るっていうのがゼネコン狩野派の一番面白いところかと。
「これがいくらで売れる」とか「これで次の世代も安泰」とかそういう気持ちで美しいものを描かなくちゃいけないっていうまさに戦い…命を懸けた戦いだったんだなって。
もしかしたら武士でもあったのかもしれないですよね。
絵師といえども刀が筆に換わっただけで。
…という気がしましたね。
これまで4回にわたり各地の国宝に出会ってきた大宮エリーさん。
エリーさんの旅はここでおしまい。
今回の旅いかがでしたか?やっぱりみんなが幸せだったらいいなとか大切な人が健康で健やかであったらいいなとかそういう願いに満ちたものが日本各地にいろんな所にあるんだなって。
そういうのが美しさに込められてるんだなと思って改めてそういう気持ちでまたいろんなものを見たいなって思いましたね。
ありがたいです。
じゃあこれからも是非国宝に限らずですね見てほしいと思います。
(2人)ありがとうございました。
(テーマ音楽)2015/04/28(火) 11:30〜11:55
NHKEテレ1大阪
趣味どきっ! 国宝に会いに行く 第4回「三井寺光浄院と狩野派・風俗画」[解][字]
エッジのきいたキーワードを切り口に国宝の魅力をわかりやすく伝える「橋本麻里と旅する日本美術ガイド」。今注目のライター橋本麻里があなたを国宝ワールドへナビゲート!
詳細情報
番組内容
日本美術史上最強の絵師集団「狩野派」。室町から江戸までの400年、時の権力者のかたわらで、幾多の障壁画やびょうぶ絵を作り続けた一族。カリスマ絵師・永徳を筆頭に、城郭や大寺院の装飾を一手に受注する仕事ぶりはまさに“ゼネコン”。豊臣・徳川・朝廷それぞれに担当絵師を配した「三面作戦」の実態とは?また風俗画の名作「花下遊楽図」や三井寺の国宝建築と客殿の「松に滝図」も堪能。さあ、桃山時代へタイムスリップだ!
出演者
【案内人】ライター、編集者、明治学院大学・立教大学非常勤講師…橋本麻里,【旅人】大宮エリー,【出演】京都国立博物館上席研究員…山本英男,【語り】中谷文彦
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ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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